161話 アルブラ動乱22(主人公視点ではありません)
「……ふぅ、危機一髪というところかしら」
まさか【自爆】のスキル持ちだったとはね。アレもかなりスキルを取るという意味においてはレア度のものだったはずだから、それそうなりの苦労と苦痛をしているとは思うけど。
それにしても、
「うーん、一応直撃はしないように天井を剥がして臨時の盾にしていたとはいえ、音や光といった間接的なものから受けるダメージには耐えられなかったみたいね。こういう所はこの世界の冒険者であっても、異邦人であっても変わらないということになるのかしら。
今後はこういう面でも鍛えていく必要はあると思うのだけど……どうなのかしら? ねぇ、機械神メテオス?」
私は足元で気を失ったリアを見てから自らの背後、壁しかない部分に対し視線を送る。
ガチャ……
広間の隅。異質な音がした後、なんの変哲も無かった壁にゆっくりと切れ目が入り扉のように開くと、そこから一人の老人が出てくる。
もっとも姿形は老人だけれど、その本質は私と同じ神の位に座する者。
「はっ! まったく、人の庭で好き勝手しやがって。さっきのガキもそうだが、お前もお前だぞ……戦女よ。
確かにここを形成している素材であれば、あれぐらいの爆発も凌げるだろうがよ。まさか無理矢理剥がして盾にするか?」
「仕方なかったのよ、とにかくすぐに凌ぐ為にはコレしか思い浮かばなかったの」
「まさに人ならざる者の力よな」
「そういう貴方だってあれだけの爆発を、ほぼこの部屋だけで押さえているじゃないの?」
「当たり前だ、ここはワシの庭よ!」
庭……そうね、貴方のような領域保有者にとってはそういうモノに近いわよね。
「ハァ、それにしても派手にやらかしやがったな。ワシの力が及ぶ範囲だったから幾分被害は抑えられたが、さすがにあっちはマズそうだな……ま、ワシには関係ないが」
「そうね、アレを見る限りはかなりの威力だったようね」
私達が見る先には、爆発によって装甲が焦げ、所々剥がれたPAとその横で倒れるPA召喚者。そしてそのPAが守るように並ぶ複数の機械群……
『咄嗟にPAを呼び出し盾にしたことで、向こうの機械群は大きな被害は免れたようね。ただ、その分あのPAを呼び出したパイロットは避ける間を得られなかったようだけれど』
「ま、PAの使い方としては間違っちゃいるが、大目に見てやるわ。それよりも……」
そう言うとメテオスは改めて気絶しているリアを見る。
「随分と入れ込んでいるようだな、リアのこと」
「入れ込んではいないわ、色々と見させてもらっているだけよ?」
「そう言うわりにはリアに物騒なモノを与えているじゃないか」
「あら、気が付いたの?」
「一度だけだが変な動きを見せたことがあったぞ? 何かと思ったが、改めて視てみると愉しいモノが植えつけられているようだな。
だが、それはリアに扱いきれるモノなのか?」
「さぁ、私にもわからないわ」
「……怖えぇな、戦女は。蛇女や火女とは怖さのベクトルが違うな」
そんなに怖がられても何も出ないわよ?
「まぁ、結局のところワシには関係ない話よ。
……だが、死に至るレベルだったであろうものから救うというのは、例えそれが【加護】の範疇であったとしても、正直どうかと思うレベルだぞ?
異邦人であれば死に戻りするからいらんだろうが、リアにはその呪縛が見えない。
……呪縛と命の天秤、それが不釣り合いとまでは言わないが、やや甘いと見られても仕方なかろうて」
「そうね……でも、今回は私があげたモノを使えたことに対するご褒美みたいなものだから」
ご褒美としても本当であればこれぐらいでは足りないと思うのだけどね。かと言ってこれ以上はさすがに他の者達と比較すると間違いなく問題が出るでしょうし。
「ご褒美ねぇ……ま、そういうことならどうでも良いか」
メテオスはそう言いながら壊れかけた機械達に近づくと、その内の一つに向かっておもむろに手を入れる。そして抜いた手の先には、鈍く光る小さなパーツが。
「ふむ、コイツが奴らの結果か。どれどれ……」
手にしたものは小さなパーツ。
メテオスはそれをやや珍しげな感じで見ると、そのパーツを口の中へと放り込み、
ゴリッ
躊躇いもなく咀嚼する。
「……ほぅ、なるほど、こういうモノか。本当に異邦人という奴らは我々の世界には無い知識と思考、そして技術を持っているものだな」
「あら、異邦人と係わることで生まれる技術なんて認めないと言ってなかったかしら?」
「いや、『いらねぇ技術と知恵を出しやがる異邦人達』は気に入らねぇと言ったが、出した結果を認ないとは言っとらんぞ。
第一アレもPAPに魔物を混ぜるなんていう気持ち悪い事をしやがったのが発端だからな」
「へぇ、そうなの」
ま、あまりイラつかせても意味ないし、彼の考えに否定的な意見はやめておこうかしら。
「ま、こんな面白そうなものを手に入れた以上、やっぱり試してみねぇとな」
メテオスはそう言いながら倒れたままのリアに近づくとその胸元へと手を入れ、紫色に光る宝珠を取り出す。そして、空いた左手を宝珠にかざすと、宝珠は強く光り出す。
その光り方は共鳴的なものではなく、どちらかといえば拒否反応的な光り方。
「ふむ、持ち主に似て素直に言うことを聞かない暴れ馬め! だが、これぐらいならば……フン!」
メテオスはかざしていた手を宝珠に密着させると両手で強く挟み込む。
宝珠も最初はそれに反発するかのように強く光っていたものの、次第にその光を弱めていくと、最終的には元のレベルで発光する宝珠に戻っていた。
「フン、それでええ」
……メテオス、強引なのは嫌われるわよ?
「それで、それはどんな効果なのかしら?」
「いくら戦女でもコレばっかりは言うわけにはイカンな。この仕組みがどう反応するか、どんな結果を残すのか、それとも何も残さないのか……
それらすべてがワシにとっての最大の楽しみよ」
そう言うメテオスの顔は歪な笑みを含んだ、人とも神とも異なる表情だった。
今日で今年も最後!
そして第一話アップ日からも一年が過ぎました! けっこう頑張れたかな~と。
というわけで、自分で自分を記念する寂しい人でアレですが、
記念に明日もう一話アップさせていただきます!
年末年始だから人は少なそうですが、こういうのも良いかな~ということで。
……自己満足とも言いますけどね(^○^)
本年もお世話になりました、来年もよろしくお願い致しますm(_ _)m




