表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/288

160話 アルブラ動乱21


 ヴン!



『動いた……動いたけど……えぇい、ままよ!』

 もはや本能に近いレベルで腕を伸ばす!



 ブシュッ!



「痛っいぃぃ!!」

「なっ!?」


 とにかくリュウの攻撃に対し動く必要があったわたしは、リュウが放った手刀対し自分の掌を正面から押し当てる。それは掌底のように繰り出した攻撃などではなく、単純に掌をリュウの攻撃に合わせて出しただけ。

 でも、それによってリュウが出した攻撃……ううん、手刀よりも先にわたしに届く【もう一つの攻撃(トリック)】のみが、わたしの掌を貫通していた。


 もっとも、これはあくまでリュウが出した【もう一つの攻撃(トリック)】だけを完全に受きる為の手段。正直物凄く痛かったけど、こちらの狙い通りに【もう一つの攻撃(トリック)】のみが掌を貫いたことで、わたしは()()を完全に認識できている! あとは……


「うぅぅぅぅ……」



 ギュ!



「ふふふっ……、つ・か・ま・え・た」


「バカな!?」

 さすがにリュウも貫いている()()を掴まれるとは思っていなかったのか、動きが一瞬止まる。



 グッ……



『痛い痛い痛い痛い!』

 わたしが捕まえた……というかわたしの掌を貫いたそれの正体、その攻撃方法(トリック)はリュウが出した手刀の下、端的に言えば手刀の影に隠れていた黒くて細い棒状のモノ。


 どうしても手刀を意識しがちになってしまう状態が、その下に隠れていた攻撃を自分自身で見えづらくさせていた。しかも、隠れていた()()自身も黒に染まっていたことで、更に視認がしずらい状態に。


 結局、手刀の影に隠れて伸びていた黒い()()を認識出来ない状況こそが、わたしやロイズさんがリュウの攻撃を避けたり防御しきれなかった理由。でも、それさえわかれば……



 グッ……グググッ!



「うぅぅ……」

 泣きたくなるような物凄い痛みを耐え……れていないけど、掌を貫く黒い()()を掴むと、思いっきり自分の手元へと引き寄せる!


「んなっ!?」

「いらっしゃ……いっ!」


 黒い()()を全力で引き寄せられたことでバランスを崩したリュウは、態勢を崩した状態でこちらに近づいてくる。あとはそのリュウの顔面目掛けて、



 ガッ!



 渾身の力を込めて頭突きを食らわせる!



「ぐあっ!」

「痛っい!」


 その攻撃はリュウが攻撃を受ける態勢の悪さも相まったことからクリティカル状態でヒット! あたり一面に響き渡るほどの大きな衝撃音を上げる。あと、二人の声も。



 グンッ



『あっ』


 そして激しくぶつかった頭突きの衝撃によって、吹っ飛んでいくリュウと一緒に黒い()()もわたしの手から離れようとする。でも『とにかく離すまい』と目いっぱいの力で握りしめ続けていたことによって、耐え切れなくなった()()はブチっと切れる音と共にわたしの手の中に残る。



 ぷらーん……



「うっ」

 正確には掌から黒いものが生えているという直視したくなくなるような状態なんですけどね。


 ……うん、正直かなりシュールな映像です、コレ。というか、



「これって……紐?」

 今までリュウの手刀の影に隠れて見えなかった黒い()()はリュウの手元から離れたことが原因なのか、硬質だった状態が解けると、貫通しているわたしの掌からダラっと垂れている。


『これが手刀の間合いとは異なる距離・タイミングで攻撃していたことで、こっちの認識をズラしていたんだ』

 ここまでしないと気が付かないというのはわたしのレベルが低いからなのか、それともリュウのレベルが高いことで認識させていなかったのか……今のわたしにはそこまでわからない。



「こんな紐が見えない攻撃のタネだったなんて……」

 実際、さっきわたしの掌を貫いたのは(これ)だし、最初に肩を突き刺したのも、その後斬撃を与えていたのも(これ)。どういう仕掛けかまではわからないけど、この紐が硬質化することで鋭利な刃物のようになっていたんだと思う。


「……こんな紐とは酷い言われようだな。って痛ってぇ、鼻が曲がったじゃねーか」

 わたしの頭突きを顔面に喰らったリュウはその場にしゃがみ込んでおり、俯きながらながら顔を手で触ってぼやく。

 っていうか、


「さっきの頭突き一発でダウンだなんて、正直予想外なんだけど」

「男は女と違って痛みに弱い生き物なんでね」

「何それ……セクハラ?」

 一向に立ち上がろうとしないリュウへの警戒を解かないまま、自分の傷をヒールで治す。


 正直、さっきの攻撃はクリティカルでヒットしていたとはいえ、その一撃だけでリュウがダウンするとは思っていなかったことから、どちらかというと拍子抜けに近い感覚に。

『……もっとも、これすらリュウがわたしを油断させる為の演技かもしれないから気は抜けないけどね』



「いやぁ、さっきのは驚いたよ。俺の【蛇縄】を見切るだけでも驚きだけど、それを自分の掌に刺して引っ張るなんて初めてだったからな」

「しょ、しょうがないじゃない! それしか浮かばなかったんだもの」

 別の対処法があればやってます!


『そもそも、いきなりクロススキルが発動するから、色々とテンパってた訳だし』

 そういえばクロススキルは……あ、もうとっくに10秒なんて過ぎているから効果切れてる。もしかしたら以前とは違ってクロススキルの内容がわかるかも。また時間があるときに確認してみよう。



「しかもなんださっきのアレは? 『動けぇぇぇ!』って叫んだかと思ったら、そこにいたはずのリアの位置が一瞬で変わったというか、残像みたいなものを出して動いていたし。

 もう何だかわけわかんねーぞ、さっきのアレ」

 残像……うーん、自分で自分を見られないからよくわからないけど、


「錯覚でしょ、それかあなたの慢心」

「ちげーよ。まだあんな隠し(スキル)があったとはな。はぁ……もっと早く、さっさと終わらせるべきだった……ん、これって慢心か。」


「お好きにどーぞ」

 自分自身よくわかってないから答えられないし、そもそもリュウに全て手の内を曝そうなんて思うはずもない。だって、


『彼は間違いなくわたしの敵なのだから』



さて、


「わたしとしてはこのままリュウを捕まえてティグさんに渡したいんだけど?

 グーデルさんの件についても聞きたいし、そもそも色々なことを知っているみたいだから全部吐いて欲しいかな~って。

 もちろん今の一撃でリュウが終わるなんて考えられないし、続きをするなら受けて立つわ」


「続きねぇ……」

 リュウが答えたその時、


「リア、どこだ!」

 遠くからファナさんの声、そして微かにだけど複数の足音が聞こえる。

 こんな事態になっていること関係上、一人でも多くの人が援軍として来てくれるのは素直に嬉しいというか、正直ホッとする。



「ファナさん!」

 思わず呼ばれた声に反応するけど特殊な建物の構造もあってか、ファナさん達が今どれぐらいの場所までこちらに近づいているのかまでは正確には判断できない。

 たぶん、50mぐらいしか離れていないとは思うけど……


『一対一なら厳しい戦いもファナさんや他の人達の応援があれば』

 ただ、リュウにまだ奥の手が残っている可能性もあるから注意は必要だと思うけど、さっきまでの戦いに比べれば優位な状態になれるのは間違いはないはず。



「ま、どうやら時間切れのようだしな」

「ええ、さすがにリュウも観念し……」

 話しかけて言葉が止まる。


「ん? おっと、これはマズいもの見しちまったな」

「顔が……割れて……」


 リュウがしゃがんだ状態なのは変わらない。でも、その状態からこちらを見るリュウの顔には大きな亀裂が走っており、その亀裂の奥には今まで見ていたリュウとは異なる顔が少しだけ見えている。



「あなた、誰?」

「リュウだよ、間違いなくね」

 確かに声はリュウのまま、でも亀裂の奥からこちらを見る瞳はわたしを射殺すほどの鋭い眼光を放ち、最初に感じた粟立つような嫌な感覚が更に強まって……この感じどこかで。


「……あっ」

 そうだ、この感じ。あの時感じたモノを思い出した!



「……リュウ、アレはあなただったのね?」

「ん? 何の話かな?」


「とぼけないで! あなたがあの黒いPAのパイロット、帝国の人間だったんでしょ!」

「へぇ、それはまた突拍子も無い話だけど。一体何のことだか」


「わたしには分かるわ。あの時にも感じた、こんな嫌な感覚を持つような人間がそうそういるとは思えないもの。あなたを調べれば色々とハッキリするはず、悪いけど一緒に来て貰うわよ!」

「嫌な感覚ねぇ……」


 普通に考えれば嫌な感覚というものだけでリュウと黒いPAのパイロットを紐づけるのはやりすぎかもしれない。でも、リュウが黒いPAのパイロット……帝国の人間だったとすれば、さっき話していた機械の詳しい話を知っていたのも納得がいく。



「ふむ……あんまりそういうのは好きじゃないし、それに色々とリミットっぽいからなぁ」

「逃がさないわよ、色々と教えてくれるまで!」

「ハハッ、逃げないさ……でも、ここからは退場させてもらうよ」



 ドグン!



『な、に、今の……』

 さっきまで感じたことが無かった、吐き気を覚えるほどの圧迫感をリュウから感じる。



「いや、なかなか楽しい戦いだったよ、次は……できれば無い方が良いかな? お互いの為にもね」

「な、なにを言っているの」

 そう言いながらわたしは自分から大量に出ている冷や汗に驚く。


「ま、百点満点とはいえないけど及第点は取れるからこれぐらいにしておくよ。

 できれば資料(チップ)は回収しておきたかったが……ま、それは今後の課題にしておくさ」


「に、逃がさないって言っている、でしょ」

 言葉とは裏腹にどんどん大きくなっていく圧迫感……いや、恐怖感に足がすくむ。



「んー、強がりはしないほうが良いよ?」

「ま、待って!」

 しかしリュウは呼び止めるわたしの方を見ながら軽く手を振るのみ。そして、



「ああ、悪いがタイムオーバーだな。うん、わりと楽しかったよ……さようならリア」



 カッ!



 リュウが言い終わるより早くその体から眩い閃光が迸ると、わたしの視界全てを真っ白に染め上げていった。


「あっ……」

 そして、わたしの意識も……


 ・

 ・

 ・



 ガシャン!



今回は1話あたりが長くなってしまいまして……


それはさておき、



とりあえず、次回で掲載はじめて一年が過ぎます!


うん、最初はある程度タメがあったから毎日更新なんていう楽しいことをやっていましたが

気が付けば繁忙による繁忙で100話過ぎから週1話になってしまいした……


その後もなんとか掲載を続けることができたこともあり、多くの方にブックマークをいただき

見て頂けることを励みになんとかここまで来れました、ありがとうございます。


書き始めてまだまだ200話にも満たない若輩者ですが、これからも余裕がある限り書き続けて

いければと考えておりますので、今後ともよろしくお願い致します。


というわけで、次回と次々回は開始1年を自分で祝う自虐的な企画とさせていただき

12/31・1/1と2日連続でアップしようと考えていますので、年末年始のお暇な時がございましたら

是非、よろしくお願い致します。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ