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159話 アルブラ動乱20



『無茶……を……しない……で』

『マチュアさん!』


『私……のことは……別に構わない……あなたはあなたの……命を大事……に』

『嫌です! そんなの絶対に嫌です!』

 例えそれがマチュアさんの願いであったとしても、それを即答するようならわたしはここに立っていない!


『……私が……出られる……までは……まだ時間……がかかる……から……』

『だったらそれまで耐えてみせます!

 痛いのだって苦しいのだって耐えきります!

 命も無駄にしようと思っていません!

 だから……だから、そんな悲しくなるようなことを言わないで下さい!』


 ここでわたしが挫けたら、その先には悲しい未来しか見えない! だったら……



「そんな未来を拒絶してやる!」

 血が出るほど両手を握りしめ、こちらを見下ろすようなリュウに強い視線を送る!


「拒絶ねぇ……でも彼我の差は歴然だと」

「それが何よ! わたしだってこの世界に来て色々なことをイッパイしたんだから!」

 わたしより強い人だっていっぱいいるし、もっと凄い人も沢山いることだってわかっている。

 でも、



「わたしはわたしの存在意義(ここにいる理由)を、わたしの意思(想い)を誰にも消されたくない! 誰にも邪魔なんかさせない!」




 ピィン!




【プレイヤーがトリガーをくことに成功しました】



 え?



【クロススキルの使用を許可します】



 許可? はいっ? クロススキル??

 ちょ、ちょっといきなり何が始まったのよ!? 


 というかクロススキルって最初にこの世界にログインし、この世界(PAW)のでわたしを造った際にフレリア様から戴いた……というか、決められたスキルの産物的に入手したアレだよね。

【独走する世界】とか名前が変わってからもイマイチ中身というか、効果がわからないから放置していたけど……この場面で発動するの!? というか


『えっ、なに? なにをどうしたら良いの!?』

 想定外の状況に頭が軽く混乱しかける。そんな時、



『……ノゾメ』



『誰?』

 どこからともなく声が。



『ノゾメ』


 頭の中に直接話しかけてくるその声は、どこか機械的でありながらも、不思議と自分自身の中に深く染み込む、どことなく懐かしい声のような。



『ノゾメ! セカイノコトワリヲカキカエルコトヲ!』


『えっ、えっ?』

 その声に思わずボーっとしかけたわたしを揺さぶるように、いきなり口調が激しいものへと変わる。



『スベテヲコエロ』

『す、すべてをって……』


 いや、確かに『不思議な声だな~』なんて考えている暇は無いけど、一方的に話し続けてくる声の中には、急かしてくるような感覚も入り混じってきて……とにかく、ここは素直に切り替えよう!

 今わたしにできるのは、この声に対して適切な行動を取るだけ!



『ノゾメ……、望むもの……』

 今のわたしが望むこと。それはもの凄い力でも無ければ、ピンチを救ってくれるヒーローでもない。ただ、この場面を自分の力で乗り切れる……リュウの出す見えない攻撃、その理屈というか正体が少しでもわかることができ、対応できること。


『そんな力が……』

 それが望める力であるならば、絶望的に追い込まれているこの状態を打破する力。都合が良いことは百も承知だけど、そんな力をわたしはそれを望みたい!



(コトワリ)への渇望を受理しました。『望み』を力に変換します】


 【望み】を【力】に変換?



 キィン!



『くっ』

 耳を劈くような高音が辺りに響く。

 ……いや、響いているのはわたしの中だけ!?



《クロススキル:【独走する世界】が発動、タイプは【界】です。

 発動時間は残り10秒、9、8……》



「ちょ、ちょっと!?」

 クロススキルが発動って……というか、残り時間がカウントダウンされてるし!?

 しかも残り8秒とかって、どういう効果か何もわからないのに発動してもどうしたら良いのか全然わかんないしっ!

 


「威勢が良いのと強さは結びつかない、というか隙だらけだ!」

 こちらの状態なんて分かるはずもないリュウにとって、パニック状態で隙だらけのわたしは攻撃し放題の的みたいなものでしか無いわけで。だけど、


「しまった……って、アレっ?」

 わたしの視界全てがほんのりと赤く色づいた薄いベールのような何かがかかった状態に少しだけ驚きかける。そしてリュウの繰り出す手刀の突き。

 それが今までのそれとは異なり、まるでテレビで見るスローモーションのような動きでゆっくりとこちらに向かって来る。


『えっ……なにっ? これって、どういうこと!?』

 状況と状態、そして起きている事象に対して頭が回らない。理解が出来ない! ……でも、


『でも、今なら見える! リュウの攻撃が。さっきまで避けられなかった理由(トリック)が! |トリック(アレ)を何とかすることが出来たら……』



 ただ、()()が見えているからと言って、わたしが反応……動くことが出来なければ意味がない。

 今のわたしはあくまで視界の中でスローな動きになっているリュウを捕らえる事が出来ているだけ。それに対し頭の中で動こうという意思があるのにもかかわらず、まるで『このスローになっている世界の中で動くことを許されていない』という感じを思われるような束縛された感覚によって、腕や足は自分の意思通りに動こうとはしてくれない。



『うご、いて……』

 腕に、手に、指に、”とにかく動け!”と指令を出す。だけど、意思とは別に指一本すら自分の思い通りに動こうとしない。


『動いて! いま動かなければわたしはリュウに倒される。そうしたら次はロイズさんとマチュアさんが……殺される。そんなのは絶対にイヤ! イヤなの!!

 だからお願い、動いて!』



『ノゾメ』

 どこから聞こえた声かはわからないけど、確かにわたしにそう言った。


『スベテヲコエロ』

 超える……そうよ、絶対に出来ないことなんてない!

 自分を、自分自身が出来ると信じて希望を、想いを全身に走らせる!



「思いを力に」



 ギ……



「確定した未来なんて」



 ギギ……



「絶対に、認めない!」



 ギギギギ……



『動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け……』



「動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



 ヴン!



寒くなってきましたが、次回も予定通り12/24(月・祝)にアップできるように頑張ります!

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