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153話 アルブラ動乱14


「さて、残りはこの部屋だけだ」

「そうだねー……」

 神殿内を一通り調べ、残るは神殿の地下のみに。


 グーデルさんに至っては、いよいよもって勝ち誇った顔をしながらも、気持ちが詰まるほどの嫌らしいオーラを辺りに出しまくってるし。

 もっとも、当のリュウはそんなグーデルさんを前にも余裕な感じは全く変わらず、今にでも鼻歌を歌いそうなレベルでここまで歩いてきた。



『ここって祭壇の間なんでしょ? そんな祭壇の間なんかに怪しい人やモノなんか入れないというか、入れることなんて無いって』

『はっはっはっ……

 まぁ、普通ならそんな場所に隠すなんておかしい……そう思うよね、バチが当たるというか【神様に対してダメじゃない?】的な』

『うんうん……って違うの? いや、だって神様だって嫌がるというか絶対怒るよね?』

 同じようなことをディメール神殿でやろうものなら、きっとディメール様にキュキュっと締め上げられるような気がするし。



『まぁ、犯人とか怪しいモノとかは別としてさ』

『うん』

『ここの神殿。引いてはここで祭る神様にとって、祭壇の間(こういった場所)に隠しておきたい人やモノが()()()()()場合であれば、ちょっと話は変わってくる。

 ま、こっちの世界じゃそういうのは普通にあるんだよ、残念ながらね。

 もっとも神様なんていう存在は俺達の世界にはいないから、よくわからないというのが正解なんだけどね』


『……?』

 なんだろう、リュウの言いたいことがわかるようなわからないような……



 ガコン



「さて、ここがこの神殿における祭壇の間であり、最後の部屋となるわけだが……どこをどう見ても人が隠れられるスペースも、事件に関連するようなモノなど存在しないのは一目瞭然だな!」


 グーデルさんは祭壇の間の扉を開けると、私たちを中へ誘導しながら勝利宣言をする。


 開かれた扉の先、祭壇の間の室内はディメール神殿と比べても大差なく、建物自体と比較してもそれほど大きなものでは無かった。

 ただ、ディメール神殿と異なるのは部屋の奥に存在する止まったままの歯車達。大小複数存在するも全てが止まった状態であり、埃などは被っていないものの古めかしさというか古びた感じは否めない。


 実際、この歯車達からは物凄い力を感じるとか、不思議な波動を感じるなどという特別なモノもこれといって感じない。わたしたちの世界でもよくある、老朽化した工場に残された遺物という風にしか見えないわけで。


『これがこの神殿における依り代になるのかな?』

 ディメール様の所にあったのは鈍く光る水晶だったし、どうしても時代を感じるというか、ある種年代が経ったものが依り代になるのかな?



「いやぁ、確かにここに至るまで怪しい人はいなかったねぇ、あと別段資料というか事件に繋がるモノも無かったし」

「当たり前だ!」

 リュウの独り言のような喋りに対し、グーデルさんは噛みつくように答える。


「でもねぇ……リア?」

「あ、はいっ!?」

 リュウからいきなり話しかけられ、驚きながらも返事をする。


「グーデル神官長は『神官含め関係する者達は全員神殿内にいるし、何も建物の外に運び出していない』って言っていたけどさ、ここまで来る迄にリアにとってこの中で()()()()()()()()()に会っていない、なんてことは無かったかい?」


「本来なら会うべき人って……あっ!」


 リュウに言われた瞬間は何のことかわからなかったけど、よくよく考えてみるとわたしにとって大事な人に会えていない!

 いろいろとバタバタしたとはいえ、忘れていた事に対し自分で自分が悲しくなる。



「というわけで、残念ながらこの建物にはまだ俺達が見ていない、知らない場所があるわけなんだが……きっとそこへは案内してもらえない」

「どうしてだ」

 まだ話が掴みきれていないファナさんが、リュウを訝しげに見ながら問いかける。


「見せたくない、見られたくない秘密が存在する……ってとこなんだけど、どうですか?」

 リュウはそう言ってグーデルさんに尋ねるものの、グーデルさんは顔色一つ変えずに


「そんなものは知らない」

 と言うのみ。


「でもリュウが言う通り、わたしはこの建物内でマチュアさんとロイズさんに会っていません」

「大方見過ごしたのだろう」

「わたしにとってこの世界で家族も同様として接してくれた方々です! そんな大事な二人を見過ごすなんてあり得ません!」

 そうわたしが断言してもグーデルさんは知らぬ存ぜぬで通してくる。



「ま、そんなわけで」

「リュウ?」

「……何をする気かね」


 わたしとグーデルさんがやりあっている間に、気がつくとリュウはあの歯車の所へ。それを見てグーデルさんの雰囲気もどことなく変わる。


「神殿、その中にある祭壇。基本的にその構造と性質というのは、この世界に存在する全ての神殿においてそれほど変わるというものではないんだ。

 神殿にある祭壇の間、祭ってある依り代。この神殿の場合にはこの歯車が依り代ということになっているわけだが……」

 リュウはそう言って歯車の横に立つと、自分の懐から金色に光る何かを取り出す。

『あれは……小さな歯車のようだけど』


「貴様! 何故貴様がそれを持っている!」

 リュウが出したものを見た瞬間、さき程までとは打って変わってグーデルさんが驚きとも怒りともとれる声で問い詰める!


「いやぁ、苦労したよコレを手に入れるのにさ。爺さんのところに足しげく通って、ようやく見つけた時はタイムリミットギリギリだったからね。

 ま、いきなり予定外の定住者が現れた時には正直ダメかと思ったけど、いや~なんとか間に合ったよ」

 そう言うとリュウはこちらを見る。




「爺さん? 定住者……って」

 まさか!?



次回、予定通り11/12(月)にアップできそうです。

いつも読んでいただきありがとうございます。


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