151話 アルブラ動乱12
「というわけで」
「何が『というわけで』よ! ど・う・し・て、わたしまで巻き込むの!」
「あはは~って、いたひからほっへたふへふなよ~」
リュウは笑ってごまかしているけど、どうにも納得がいかないというか何というか。
いま、リュウとファナさん、グーデル神官長がメテオス神殿の内部にいます。そして何故かわたしも同行しています……
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「とりあえず数名であれば、と制限は付けさせていただきますが」
渋々ながらという感じでグーデルさんは神殿への入場を許可する。
『……さっき見えた感じだと、この渋々っていうのもなんか怪しいけどね』
もっとも、あくまでこれはわたしの私見でしかないので確定的なものではない。
「ポーさんもそれで良いですよね?」
「ああ、構わんよ。ただ悪いが神殿内に何があるか不明であること、そして代表もあんな状態だから自分は動けない。すまないが、リュウに代理で見てきてもらって良いか?」
「オッケー」
リュウとポーさんの【革新派】は問題ないみたい。
「私もさすがに動けないですから~代わりにファナへ行ってもらいますね」
「はい、わかりました」
ティグさんとファナさんの【融和派】も大丈夫なようで。
「ではこの二名と自分の計三名いうことになるが」
さっさとこの件を確定させたいグーデルさんは話を締めにかかる。
「いや、もう一人いるかな」
「そうですね~【革新派】【拒絶派】【融和派】と三派で確認はできますけど~どこにも属していない、公平に物事を見て確認出来る人がいるとなお良しですね~」
リュウとティグさんはそう言うと何故かわたしの方を見る。そしてそれに合わせて室内にいる人達もこちらを……
「えーっと、何故にこちらを見るのでしょうか??」
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「うん、話の流れで数名しか入れないのはわかっていたことだけどさぁ……でも、わたしって部外者だよね?」
リュウはポーさんの代理として、ファナさんはティグ様の代理としてというのはわかるけど、わたしは誰かの代理とか全く無いわけで。
「えっ? リアはトムさんの代理だから」
「いやいやいや、トム店長関係ないし!」
なんだか、わけのわからない理論で無理やり連れて来られているような気がするんだけど!
それにさ……
『はぁ……気が重い』
この同行はとてつもなく気が重くて疲れます。ま、その理由は簡単なわけで。
「つべこべ言わずにさっさと回って何も無いことを証明してもらおうか」
「私もこんな事ササッと終わらせ、早く反攻の準備に取り掛かりたい」
……うん、おもいっきりプレッシャーをかけてくるグーデルさんと、何かとフリーで進めてしまおうとするファナさんとで、全体的にフリーダムというか身勝手に近い発言が飛び交う状態に頭が痛くなってます。
「ま、乗りかかった船ということで」
「乗った記憶が無いんですけど……無いんですけど!」
おっかしいなぁ……
『何ていうか、自分の意図していない見えない流れによって勝手に進路が決められているような……んー、変な感じ』
「で、わたしも神殿に来て何するんだっけ?」
「えっ、そこから説明!?」
「いや、だって元々来る予定なんて無かったから聞いてなかったし」
「うわぁ……」
ぷちっ
「ちょっ、拳を上げるな拳を! 本職に殴られたらメチャクチャ痛いだろうが!」
「……チッ、一発ぐらい黙って殴られなさいよ、黙って。
というかさ、どうしてわたしだけ着替えて来なくちゃいけなかったのよ! 別に作業着でも問題無かったでしょ?」
わたしはワザワザ着替えさせられた、自分の神官服の襟元を摘んで抗議する。
「いやぁ、どうせならリアの正装見たいじゃん?」
「……ははは、神官服が正装って、よく御存じなことで」
リュウにわたしの職業を話したかどうかイマイチ定かじゃないけどなぁ。まぁ、知られてても別に問題ないけどさ。
「でもこうやって見てみると作業着よりか神官服の方が似合っているね、うん」
「えっ、あ、ありがと」
きゅ、急に褒められるとちょっとビックリしちゃうじゃないの!
「じゃあ話を戻すと」
「あ、はい」
「神殿にダラスさんを襲った襲撃犯が逃げ込んだんじゃないかという話が上がっているから、とにかく神殿内を調べてみて、そんな襲撃犯がここにいるのかいないのか、もしくは襲撃犯に繋がる資料があるのか無いのかハッキリさせる。
もし、そんな何があればどんな手を使ってでも後ろで糸引く奴をハッキリさせるし、無ければ無いで【革新派】は【拒絶派】にかけた疑惑など全てを謝罪し、【拒絶派】との関係修復を無条件で行う……そんな感じだな」
ま、とにかく白黒ハッキリさせるってことよね。
「うん、とりあえずわかったけど……本当にそんな襲撃犯がここにいるの?」
「さぁ?」
「『さぁ?』って……」
「いやぁ、俺としても頼まれただけだしなぁ……ま、それでポーさん始め商人系、所謂【革新派】が納得するなら良いんじゃない?
とりあえずアルブラがそれで纏まるならば、どんなことでも手間としてカウントしちゃダメだろ?」
「それは……そうだけどさ」
どう聞いても尤もな話。だけど何かが微妙に引っかかるのは……なんでだろ。
「さっさと確認しろ! どう調べようが問題など存在しないから神官含め関係する者達は全員神殿内にいるし、何も建物の外に運び出していないからな!」
「はいはーい」
相変わらずイライラなグーデルさんの詰問に対し、リュウはその態度を変えるわけでもなく飄々とした状態で受け流しているものだから、グーデルさんのイライラは更に増していく。
『……リュウ、本当に大丈夫なの?』
『大丈夫、大丈夫~これでも探索とかの専門スキルを持ってるからな!
俺から見て、怪しげなモノがあればピピッと感知するから任せてくれよ』
『それは職業スキル?』
スキルとかキチンと覚えていないと言うか、自分に関連しないスキルとかって覚えようとしてこなかったから、正直どういうのが役立つのかサッパリわかっていなかったり。
『ふっふっふっ、そういう無駄そうなスキルは色々持ってるぜ』
リュウは何やら自慢げにしているけど……あれっ、そういやリュウの職業ってなんだっけ?
二週間ぶりとなりましてスミマセン。
とりあえずお仕事も一旦片付いた……と思うので再び週刊で更新できればと。
次回は10月29日の予定です、よろしければ引き続きお願い致します。




