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145話 アルブラ動乱9



「グーデル神官長、今問題としているのは異邦人の事ではない。

 とにかく今は所属不明の部隊の対処と、それと同じく発生したPAPの暴走。そしてダラス代表を襲撃した犯人を見つけることだ!

 ……いい加減、隠していることを話してもらえないか」

「だからそんな奴は知らないと説明しているではないか!」


 さっきグーデル神官長が横から口を挟んできたのと同じように、こちらをジロっと一瞥したあの恰幅の良い男性がグーデル神官長へ問いかけるものの、グーデル神官長はそれを払いのけるように拒絶する。


『あの人は』

『ああ、あの人はポーゼフ代表代行だ。レイジー商会のナンバー2であり、今回ダレス代表の代わりとして【革新派】のまとめをお願いしている。

 グーデル神官長とは旧知の仲ではあるものの、水と油と言うか……何をするにも話が合わない事でも有名だよ。こんな事態じゃなければ同席はさせたくない間柄ではあるがな……』


 ファナさんはため息をつきながら説明をし、わたしは言い合う二人を遠巻きで見るのみ。

『下手に関わると火の粉がこっちに来そうだし、様子見様子見っと』



「ま、ダレスさんに比べたら格は落ちるが、ポーさんはアレで何でも無難にこなす大した人だよ」

「ふーん、そうなんだ……って、リュウ!?」

「やぁ」


 この場にリュウがいるなんて思っておらず思わず驚く。


「知り合いか?」

「えっ、はい。わたしがトム店長の所で働いている時に何度かお店に来ていたので。

 っていうか、どうしてリュウがココに?」

 こちらを見てヘラりと笑うリュウに、内心ムカッとしながら問いかける。


「いやぁ、ダレスさんにはちょいちょい世話になってるからさ。色々と物騒になってるみたいだし、とりあえず、護衛がてらって感じでポーさんについてきた」

「ポーさん??」

「あ、ポーゼフさんだからポーさんな」

「はぁ」

 なんか気が抜ける呼び名だけど、他人の呼称にダメ出ししてもヘンだし。


「私もいるよ」

「あ、ロキシー久しぶり!」

 思わず近づいて互いに手を握り合う。


「大変な事になってるね」

「うん……ていうか、ロキシーはどうして?」

「あの感じ悪い神官長の後ろ……あそこにちょっと顔色の悪い人が見える? 前に話したアルブラでの働き先の貴族の人があの人」

「あー……なるほど。っていうことはリュウみたいに護衛で?」

「さすがに護衛とまではいかないからここでのお世話係って感じ。一応、何かあった時にはって大奥様から言われてるけど」

 なるほど、ロキシーも色々と大変みたい。



『ねぇ、リア』

『ん、なに?』

 さらに傍まで寄って来たロキシーが小声で話しかけてきた。


『あのリュウって男性、何者?』

『何者って言われても……わたしが働いているお店の常連さんみたいなものかな。

 何か気になるような事でもあった?』

 見ず知らずの他人とはいえ、どちらかと言うと他者に対し感情を持たないというか気に留めないタイプのロキシーがそんなことを聞いてくるのはちょっと驚きかも。


『なんていうのかな……

 現実リアルでは偶にだけど、感情や思惑、そういった人として当たり前のものを見せなくする技術っていうのかな? そんな人となりを見づらくさせる、そんな不可視のベールを付けている人がいるの』

『リュウにもそれがあるってこと?』

『うん、あの人の表面からは一切何も見えないし感じ取ることができない。下手したら存在すらも阻害させるほどかな。

 さっき言ったそれを更に強化されたものって言う感じで、正直怖いほどよ』


 そう言うロキシーの表情は、確かにいつもよりも強張って見えなくも無い。



『ロキシーにそこまで言わせるって……わたしには何も感じ取れないけど、逆に感じ取れないことが普通であって、ロキシーみたいに感じ取れた方が特殊だっていうこと?』

『どうなのかな。私が彼を見た際にあまりに何も感じ取れなかったことが逆に違和感に感じたってだけで、僅かでも感じ取れていたら気にしなかったとは思うけどね』


 うーん、色々と深いというか……


「なになに、何かオレの話で盛り上がってる??」

「ううん、リュウって薄っぺらいよね~ってだけ」

「うわっ、それってヒデェェ」


 うん、ダメだわたしには違和感とか全然わかんないし。



「なぁ、リアはこの状況どう思う?」

「この状況って、今の状況アルブラのこと?」

 わたしの問いかけにリュウは『そそ』と答える。


「うーん、なんだか大変だな~っていうか、こんな状態で大丈夫かな~って」

「そうだねぇ、迫っている危機感に対して鈍いっていう感じがするよね」

「うんうん」


 実際、正体不明なんていう変な集団がいたらそれどころじゃないと思うのに、そういうことよりも別に何か違う方向を向いているっていうかなんて言うか……



「こういう時ってさ、迅速な分析・判断・行動が必要だと思うんだけど、そういうのが出来ていないってマズイよねぇ」


 そう言うと、リュウの口から聞こえるか聞こえないかわからない程の小さな声で独り言が聞こえた。



「……温い」



 ゾクッ



「リュウ?」

「ん? どうかした?」

「う、ううん何でも」


 独り言と一緒に感じたそれは気のせいか、それとも……



「そういや、リアはどうしてここへ?」

「あ」

 色々とあって完全に忘れていた。というか、このままフェードアウトしてもバレないような……


「そうだった! ありがとう、リュウとやら」

「いえいえ」

 くっ、リュウの奴!



「ティグ様、冒険者リアからご報告したい旨があるとの事でお連れしました」


「あら、リアさんから何かあったの?」

「ええ、まぁ……」


 しょうがない、とりあえず色々と話しておこう。



「実は……」

 わたしはログインしてからのことやPAPと戦ったことについてこの場にいる人達に話す。

そして、その場で遭遇した黒いPAについても。



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