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143話 アルブラ動乱7


「いま、アルブラの情勢はどうなっているんですか」

 この世界に戻ってきて一番気になったのはそのことだった。


「西部地区は【革新派】が主体となって死守していたのだが、主に異邦人の冒険者が襲われることもあってか、最終的に主力どころが北部地区へ撤退。若干残った冒険者達がゲリラ戦をしている状況だ。

 南部地区については元々防衛の為の部隊も殆どおらず、既に我々(領主側)の管理地からは外れてしまっている。

 ただし、現時点でこの二つの地区は【我々】にも【向こう】にも属していない」


「……どういう事です?」

「そのままの意味だよ。これが【国家間戦争】ということであれば相手が地区を占領していくことで我々の統治率を下げていき、最終的にその都市における占有権が高い方が都市統治の権利を掌握するのだが、今ここで行われているのは一方的に始められた【戦闘行為】にすぎない。

 これによって都市内の占有率低下は起きても、占有権の掌握はできない仕組みなんだ」



『仕組みって……あ、この世界はゲームだからそういうルールみたいなものがあるってことなのかな』

 おかしなものだけど、わたしにとって”この世界がゲームだ”っていう感覚が相変わらず抜けちゃう事が多いので、偶に世界観というか自分の感覚とのズレみたいなもを感じてしまう。


 ……ちょっと順応し過ぎかも。



「ちなみに戦闘の方は」

「さすがに街の中ということもあってか向こうもPAは出さず、基本的にはお互い人と人との闘いなのだが……参戦している兵は断然こちらの方が多いはずなのにかなり押されている。

 単純に向こうの戦力としてPAPが付いているということもあるが、相手の兵も手練というかかなり手強い。純粋な戦闘能力としても、我々アルブラの兵とは個々の差がかなり出ている。

 正直なところ、一対一では相手にならないのが現状だ」


「そこまでの差が……」

 帝国と近い地理上、それなりに精鋭が多いであろうアルブラの兵が苦戦するなんて、ファナさんとしても想定外な感じみたい。

 それに、


「ただ単純な兵の質というのもおかしな言い方ですが、純粋な戦力差にプラスしてPAPの分がその差を更に広げる要因になっていると?」

「そうだな、PAPにしても相手の兵にしても一対一で勝てないのが状態を厳しくしていると言っても過言では無い。

 それこそ、PAPを素手で倒せるような化け物がいれば、戦局も少しはまともになるのかもしれないが……」


 ……すみません、一機だけですけど倒しています、その素手で。


「とりあえずは数人がパーティーを組んで戦っている。

 本当はPAPに対し、リアのようにPAで戦うのが望ましいが、相手もこちらのPAが出て来たのを確認すると、住民の居住地を盾にする形での防衛戦に移行していく。

 そうなることがわかっている以上、住民の安全などを考えると、PAPに対してPAが使えないというのが実状だ」


「状況はあまり良くないみたいですね」

「ああ……」

 ファナさんの声は沈んだまま、ため息までもただただ重い。



『まさかあれからそんなことがあったなんて……』

 結局、PAPの暴走自体が誰かの思惑によって行われたということは間違いないみたいだけど。


『そもそも犯人らしき人物はPAPを暴走させる(そんなこと)が出来る知識や技術とか、どうやって知ることが出来たのかな』

 PAPがメカの要素だけなら暴走させる事は難しいと思うけど、愚者人形(トゥルーマリオネット)の脳が使われたことで可能になったような気がする。

 ……まぁ『魔物の一部があるから魔法が効くようになったのかな〜』という推測でしかないけど。


 ただ、その場合PAPに魔物の脳が使われている事自体が一般的な知識とは思えない、どちらかと言えばトップシークレットみたいなものな気がするわけで。


『なのにそんな知識や情報を知り得た人がいて、実際に事を起こしたのであれば……』

 単純な戦闘行為とだけで割り切ってしまうのは危険な気がする。

 ファナさんに話しても一笑に付されかねないけど黒いPAの件といい、どうしても何か見えない力のような存在がある気がしてならない。



 あと、この世界の人達はわたし達とは根本や基礎の部分が異なることから、同じレベルであっても強さは段違いだと聞いているし、実際に目にしている。


『それだけに、この世界の住人であるアルブラの兵が戦闘面で負けるような正体不明の集団って……いったいどこから出てくるのよ』

まぁ、わたしが知らないだけでいるところにはいるんだろうけど、できればお会いしたくないな~と思ってみたり。 

 でも、きっと今までの経緯から考えると否が応でも会う羽目になるんだろうなぁ……



 というか、



『さっき聞いた話から考えると、街の中でPAとPAの戦いをしたのがココにいるんでけど……把握されていないのか、それとも?』



「あ、あの……ファナさん」

「ん?」

「街の中でPAとPAとが戦った……という話は聞いていませんか?」

「いや、報告書には上がってきていないが」


 あはは……


「大変お見せにくいのですが……ちょっとこれを見てもらえませんか?」

 鞄から数枚の写真(スクショ)を取り出すとファナさんに見せる。


「ん? これは……」

「わたしがPAPと戦った後、襲ってきたPAを撮影したものです。ただし、見ての通りボヤけてしまっているのでキチンと識別出来ないかもしれませんが……」

 わたしが出した写真(スクショ)を見てファナさんが怪訝な表情をする。


「……街の中でPA同士の戦闘があったとは聞いていないが、まさか」

「はい、わたしがPAでPAPと戦った後に出てきたPAに襲われまして……」

「ふむ、まぁやってしまったものは仕方がないし、人的な被害も出ていないから良いようなものの気を付けるべきだ。別途報告書は書いてもらうが、誰も見ていないというのもおかしな話だな」

 ファナさんはそう言いながら、手にした写真を色々と見比べている。


「そ、そうですね」

 ちなみにファナさんへ手渡した写真には空中からこちらを狙い撃ちするあの黒いPAが写っている。ただし、わたし自身が相手の射撃を避けることに必死だったことからピントを合わせて撮影まですることができず、ちょっとボケボケな写真になっていたり……


『走りながら撃つことすらキチンと出来ないのに、射撃を避けながらスクショを撮るなんて……無理だし!』



「ま、まぁ空に浮いているPAらしきものは何とかわかるから……って、ちょっと待った!」

 そこまで言ってファナさんの表情が固まる。


「空に浮いているということは、飛んでいるということか?」

「はい」

「しかも紋章がハッキリと見えなくとも、PAのカラーリングが黒だと言うことまではわかる。

 空を飛ぶ黒いPAなど私が知る限りでは一機しかいない」

「はい、わたしも同じです」


「リアがPAPと戦った後に現れた【空を飛ぶ黒いPA】……これが事実だとしたら、正直今起こっている問題なんて全て吹っ飛ぶぞ!?」

「はい。というか、わたしとしては事実なのですがファナさんはこれが事実じゃないと言う根拠が存在するんですよね?」



 わたしにとって事実でしかないことを『事実だとしたら』という風にファナさんが返すということは、わたしの知らない何かが存在するってこと!?



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