142話 アルブラ動乱6
※18/08/07 誤字修正しました
【拒絶派】から拒否されてしまっている。
↓
【革新派】から拒否されてしまっている。
意味が変わってしまうほどの誤字でした、申し訳ありませんm(_ _)m
『正体不明の集団って……』
正直、想定外過ぎることが起きて理解がイマイチできない。
「その後、所属不明の集団とそれに従っているPAPが街にいる異邦人の冒険者、そして彼ら冒険者に関連する施設や住人を中心に襲撃。結果的にアルブラの半数近くが領主の命令が届かない状態になってしまっている。
よって今では街に戒厳令を出し、全力で対応しているところだよ」
「そ、そんな……」
でも、
「アルブラは最前線の一つと聞いています。街中の総力で当たればそんな集団に対抗できないなんてこと無いですよね? 【拒絶派】【革新派】がそれぞれ持つわだかまりを捨て、協力して対応すれば……」
今までのような色々と分かれてしまった状態で対処するのは難しくても、こんな緊急事態であれば派閥とかに関係なく対応さえ出来れば、そんな所属不明の集団なんて撃退できるはず。
「ことはそう簡単にならないのだ……問題は二つ。
一つ目の問題はその所属不明の集団の主張だ。彼らはこう主張して行動をしているんだ、
【全ての異邦人をこの世界から駆逐せよ】
とね」
「……その主張って、まるで【拒絶派】じゃないですか!」
「ああ、だからこの集団についても【拒絶派】から派生した集団か、もしくは【拒絶派】が裏で操っているのではないかと【革新派】から疑われている。
これがアルブラ内において足並みが揃わない状態を作り上げてしまっているんだ」
『共通の敵であっても、もしかしたら……』
そんな考えを【革新派】が持っても不思議ではない以上、容易に共に戦おうとはならないか。
でも、
「ダラスさんなら……【革新派】の代表でもあるダラスさんなら街のことを考え、【拒絶派】とも手を組んで戦えるんじゃ」
「そうだな……あの人が動けば【革新派】も纏まるだろうな」
「だったら」
「それが二つ目の問題なんだ。
【革新派】、そしてレイジー商会の代表でもあるダラス代表は意識不明の重体だ」
「はい?」
えっ? えっ?
「きっかけはPAPの暴走に起因している。
PAPが暴走し始める前、レイジー商会が所有する倉庫の一角でPAPに対して呪文を唱えている怪しげな奴を、偶々検査で訪れていたウチの役人とダラス代表が見つけた。
何をしているのか問い詰めようとした際、相手が隠していた魔具によってダラス代表は炎に包まれた。これがかなりの威力だったらしく、ダラス代表は全身を包帯にくるまれた状態で未だに目が覚めない。
そして……予想はつくと思うが、これも【革新派】の多くからは『【拒絶派】が裏で仕組んだことではないか』と言われてしまっている。
これにより【革新派】から見た【拒絶派】への信頼度はゼロどころかマイナスの状態だ」
「そんな……」
会ったことは一度しかないとはいえ、一度見ただけでもダラスさんの強さとタフさは何となくわかる。
『あのダラスさんが意識不明になるほどの強力な魔具なんて……とりあえず一命は取りとめたようだから良かったけど、意識不明ってことはかなり危ないんじゃ!?』
「あの、よろしければわたしが治療しに行きましょうか」
「いや、既に私達からも似た形での提案はしているのだが、【革新派】から拒否されてしまっている。
『治療者が今回の襲撃者、もしくは襲撃者と同じ手の者であることすら否定できない。ダラス代表の命に危険が及びかねない事は辞退させていただく』とな」
「そうですか……」
そういう返答が出てしまっても仕方ないのかもしれない。わたしが行ったところで誰もわたしの身を襲撃者とは異なる者と証明できない以上、何も手を打つことは出来ない。
「ちなみに自走型PAPについては緊急停止用のキーワードがあるらしい事までは掴んでいるのだが、残念ながらその方法はダラス代表しか知らないということをレイジー商会から報告を受けている」
「厳しいですね……」
『予想外、というか予想できるような範疇超えてるし……』
聞いた話を簡単にまとめただけでも所属不明の集団が、【拒絶派】か【拒絶派に類する集団】じゃないかという考えに至ってしまう。でも、
『PAPの暴走、その原因についてはダラス代表を襲った犯人が有力視されているけど、その一人が発端となって何かをしただけで、PAPの暴走をアルブラ全域に広がらせることが出来てしまうものなの?』
暴走しないように何らかのセキュリティはしてあると思うけど、そんな簡単に解除というかPAPを操れてしまう欠陥があったとしたら、かなり大問題な気がするし。
それにPAPの緊急停止の仕方を知っているダラスさんは襲われて意識不明の重体なんて、言い方が悪いけどタイミングが合い過ぎている。
『だとしても【拒絶派】に関連度する人達が犯人だとした場合、こんなことをするメリットは何?』
いくらなんでもやり方が雑過ぎるし、わざわざ異邦人の排除を目的とし、大々的に主張するのも【革新派】の反発を招くだけじゃなく、アルブラ内外でも不要な軋轢を生むことにしかならない……
それに黒いPAP、あれが間違いなく帝国のものだとしたら、これら全てを裏から仕込んでいる可能性もゼロじゃないはず。
「とりあえず今は領主であるティグ様が全体を取りまとめ、両派閥を協力させ対処しようとしているが……なかなかに話がまとまらないというか協議が進まない状態だ」
「ちなみにダラスさんを襲った犯人は?」
「ウチの役人とレイジー商会の従業員がその場から逃走した犯人を追いかけたのだが、そいつは西の商業地区から東の貴族地区へ逃げ、最終的にメテオス神殿の付近で見失ってしまっている。
これにより【革新派】からは
『メテオス神殿に雇われた犯人がPAPを誤動作させ、PAPへの信頼を失墜させると共に、【革新派】の代表であるダラス代表を亡き者にしようとしたのではないか』
と陰で言われており、両派閥の仲を悪化させるのに一役買ってしまっているよ」
「最悪な状況じゃないですか!?」
よくもまぁ、これだけ最悪の状態が立て続けにおきると、どうする事が・どう進める事が今起こっている問題に対し対処出来るのか……正直わたしの頭では答えが出せそうに無い。
『こんな時ルナさんがいたら……』
こういった色々な事が絡み合った事案の対処に秀でた、この場にいない親友の存在を渇望するしかわたしには出来なかった。
うーん、暑さにやられて中々話をまとめることができません(´・ω・`)
次回の更新も、来週の月曜日(8月13日)予定です。




