140話 アルブラ動乱4
※18/07/23 後書き追加しました。
「あなたは」
「別に名乗るほどの者じゃないさ、ただの通りすがりだよ」
た、ただの通りすがりって……
「帝国のPAが現れて、ただの通りすがりなんてあり得ないでしょうに!
……それとも、今あなたがこの時点でいることが帝国から王国への宣戦布告を兼ねた登場ってわけ!?」
敵対している国のPAがいるなんて普通じゃありえない。
『どう考えても普通じゃないし、何か目的があっての行動なはず』
だけど、そう思って見ていた相手から発せられた言葉は想定外のもの。
「ほぅ、君は戦争にしたいのかな?」
「はぁぁぁ? 戦争なんてイヤに決まってるでしょう!」
戦争になれば自ずと悲しい未来をが来る事ぐらいわたしにだってわかる。
「はははっ! だが君は随分と自分に都合が良い解釈をしているじゃないか」
「……どういう意味よ」
「簡単な話だよ、さっきも言った通り僕はただここに来ただけだ。上から見てPAPを襲っているPAがいたから攻撃した……ただそれだけだよ?
なのに君は僕がいることを利用して、帝国が攻めて来た事にしたい……ほら、どっちが戦争をしたいか明白じゃないか?」
「か、勝手な解釈をしているのはどっちよ!」
「勿論君だよ」
「なっ!?」
『意味がわからない! どうしてわたしが戦争をしたいことになるのよ! というか、なんなの!?』
なんだか言っていることが噛み合ってない、噛み合わせようとしていない! そもそも、この人はいったい何者なのよ!
「ムカツク!」
「それはそれはご丁寧に」
とにかくわたしとしてはこんな出鱈目な話に合わせていられない!
どう話しても向こうにとって都合が良い、こちらにとって都合が悪い話にすり替えてくる手法が上手いというか、かなりムカツクんですけど!
「いやぁ、とりあえず平和的な会話が出来てよかったよ」
「はぁぁぁぁっ!?」
ただでさえ挑発的な感じだったのに、更に噛み合わない会話を続け完全に
ぶちっ
キレた!
「ひ、人をいきなり足蹴にした人が言うセリフじゃないでしょ! とりあえず蹴られた分は返させてもらうわ!」
ギュン
『この距離ならイケる! 捕まえて口を割らせてやるんだから!!』
ペダルを強く踏み締め、一気に間合いを詰める! だが、間合いを詰めてからの攻撃に対し
ヒュッ、ヒュッ
「うん、いい切り替えだね。でも、君のその機体じゃ僕とこの子を捕まえるのは無理だよ」
左右から繰り出した攻撃はどちらも完全に見切られ、黒いPAは大した回避行動を取ることもなくかわしてみせる。そして、
ドッ!
『高い!?』
黒いPAは勢い良く跳躍すると、背後のバーニアも噴かして瞬く間に遥か上空へと飛び上がる。
『確かにそこまで高く上がられたら今手にしている武器じゃ届かないし、上下移動に優れていないハマルでは追いつくこともできない』
だけど、
「だったら落ちてきたところを殴るまでよ!」
そのまま十手を構えて黒いPAが落ちてくるのを待つ。
……しかし、黒いPAは落ちてくるどころかそのまま上空で浮かび続けると、こちらに向かって銃を構え、
ピーッ、ピーッ、ピーッ
『ええええっ?』
ちょっと、なんで落ちてこないの!
「っていうか、ロックオンされた!? まさかあそこから撃ってくるわけ!?」
ロックオンされた警告音から逃れようと、ジグザグに回避行動を取りながら走行して相手の射撃を避ける!
バババッ!
『!』
完全なヒットはしていないものの、掠っただけでも若干のダメージが。
「でも、ハマルの装甲だったらコレぐらい大丈夫! だけど反撃しようにもわたしの射撃の腕じゃまず当てられないし……」
あんな所で飛んでいる相手を撃つなんて、わたし自身が止まって狙わないと無理だし、止まって撃てば相手の的にしかならない。
『どうする!? 飛ぶPAなんて相手にしたことが……え? ちょっと待って、飛ぶことが出来るPA!?』
以前に直緒や要さんと話していたことを思い出す。
「半飛翔型PA……帝国にのみに存在……エースパイロット……えっ、まさか!?」
その内容に一致するPAに心当たりはある。ただし、それがこのPAだった場合にはシャレにならないというか、色々な意味で危険すぎる。
『どうすれば良い!?』
どう考えても相手は格上、そして帝国のエースがこんな場所にいるという想定することすら冗談と思われる事実。
とりあえず装備していた十手を格納し、こちらもライフルを装備するけど回避するのが精いっぱいで撃つことすらままならない。
『と、とりあえずスクショだけでも撮って……』
操縦しながら撃つことすらままならないのに、撮影なんて……ええい! とにかくあの辺りを連写!
「うん、君がなかなか良い腕を持った冒険者だということはわかったから、僕はこれぐらいで失礼させてもらうことにするよ」
そう言うと黒いPAは上空から何かを落下させる。
「あの黒いものは何? って、まさか爆弾!?」
そう思った瞬間、
ピカッ!
「くっ……」
何が落ちてきたのかと凝視した瞬間、画面いっぱいに凄まじい光が溢れて何も見えなくなる。
『逃げられた? それとも……』
閃光により何も見えない状態から回復するのに一分足らず。再び見える状態になった頃には黒いPAはどこにもいなくなっていた。
普通に考えれば逃げたということなんだろうけど、自分と相手との力量の差を考えれば【逃がされた】とすら思えることに臍を噛む。
「はぁ……」
体を座席に倒すとため息が。
『結局、暴れていたPAPは何だったの? PAPがいなくなったタイミングであの黒いPAが出てきたということは何か関係が? わからない事が多すぎて頭痛い……』
「って、時間時間! ログインしてから三時間だし! ということは現実だと午前四時!?」
慌ててログアウトをし、デバイスギアを取り外してベッドへ潜り込むと、わたしはほんの数分で意識を手放していた。
いつも読んでいただきありがとうございます!
今週、というか明日からですが社外研修という名の拉※監禁になりますので、たぶん木曜日にアップする時間(というか見直し・校正がメインですが)が無く、月曜日のみのアップになるかと。
ど、努力してアップできそうでしたらなんとかしてみますので木曜日にアップできなかった際には「あぁ今週は落ちたな」と生暖かいゴミを見るような目で見ていただければ……
なお、この先については一応話の草案は出来ていますのであとは組み立てていくだけになっています。
まぁそれが一番難しいんですけどね(´・ω・`)




