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131話 PAP


「フィーネさんって、なんだか凄い人だな」

「うん、歳だってわたし達とそこまで違わないはずなのに……わたしとは本質的な部分で異なっているっていうのが話していてわかるもの。本当に感心するし、自分とのあまりの違いに少し怖いぐらいかな……」


 マチュアさんやファナさんも凄いとは思っているけど、フィーネさんはあの二人とは異なる独自の強さを持っている。

 それは今のわたしから見て別次元というか、別ベクトルの強さであり到底真似が出来ないモノ。


「ま、何にせよリアにとって悪く無さげな話っぽいが?」

「さすがに即断なんて出来ないわ。と言うよりも、ハルはわたしが遠い場所に行っても……」


 ん?


「い、今のは言葉のアヤだから!」

「お、おぅ」


 あ、危なっ! なにか凄いことを言いかけてたような気がするけど華麗にスルーしとこ。

 さてっと顔も熱いし少し夜風にあたって……



 ゾクッ



「ヒッ!」


『な、に、今の……』

 ちょっと熱くなった顔をパタパタと扇いだ瞬間、不意に襲われた殺気に対して思わず自分の体を両手で抱きしめる。


『痛みを感じる程の殺気って……というか、今のは殺気なんだよね!?』


「リア、どうした?」

「あ、うん。なんだか凄く濃くて粘り気のある独特な殺気みたいなモノを感じたから……」


 今まで感じたことが無かったレベルの濃密な殺気。それはマチュアさんから修練時に受けたどの殺気よりも強く、感じた痛みは心臓を直接抉えぐられたのではないかとと感じたほど。



「俺は感じなかったが……という事はリアに向けてのみ発せられたものか!? まだ感じるのか?」

「ううん、本当に一瞬だけだったから」

「気をつけろと言うのは簡単だが……とにかく自分の身は大事にしろよ。また何かあれば遠慮なく言ってくれ」


「うん、ありがとね」

 正直なところ不安しか無いものの、いたずらに騒ぐこと自体が殺気を放った人の思う壺かもしれないから、ここは素知らぬ顔でいた方がベターかな。


 ハルもそれを悟ってくれたのか、



「じゃ、話を変えるが……あの衣装はというか戦闘着は、いったい何だったんだ?」

「え?」


『いや、話を変えるってソレ!?』

 くっ、確かに存在していた何とも言えないモノを一気に流しているけどね!


「あ、あれはラスエリ工房のザラさんがデザインした試作装備の一つよ。機能面からあのデザインになったらしくて、一応あの上に装備する鎧とかもあったんだけどね……

 戦闘着と同様に機能面を優先したデザインだったということもあってか、重量のわりに防御力が高いとは感じなかったかな。

 まぁ、あの戦闘着を着る羽目になったのも、偶々ラスエリ工房にいたわたしをフィーネさんが目にしてって話なんだけどね」

「なるほどな……それはご愁傷さま」

 流石にハルもアレは無いと思ってくれたようで。


「ちなみに着た感想は」

「二度と着ません」

「それ感想じゃないだろ」

 えっ、だってそれしかコメントないし。


「ま、とりあえず確かにデザインはかなりアレだとは思ったけど、本人の思惑は別にして普段見ない髪型からあの戦闘着まで、かなり似合っていたのは確かだぞ」


「えっ、あっ、ありがと……」

 そう言われると少しは嬉しいと思ってしまう自分が……


「既に画像掲示板にスクショがアップされ、かなりの【Good】が付いているから」

「よしっ、速攻で消すように運営に連絡だ!」

 前言撤回。


『はぁ、明日から街を走るの止めようかな……』

 


―――◇―――◇―――


 次の日。


「おいっ、オメーなんかしたのか!」

「えっ? えっ?」


 昨日(といってもこちらの世界では三日前ですが)の件を忘れるべく、一心不乱に棚の整理をしていたわたしをトム店長が呼び止める。


 ちなみにもう一人(オートモード)のわたしも戦闘着(アレ)の件は地味にダメージがあったらしく、統合インストールした際に記憶を辿ると今のわたし同様、作業に没頭していました。


『うーん、自動生活(オートモード)でもおかしな事はしていなかったはずだけど……』


「領主の所から役人がやって来てオメーに召還状だとよ。何でも事件について聴取だとか言ってやがったが……何しやがった?」

「事件ですか!? ……って、もしかしてトム店長にもお話ししたラスエリ工房のことでしょうか」

 他に思い当たるものはないし……



「ホレっ、とりあえず見てみろ」

 トム店長は手にしていた封筒をわたしに渡すと、カウンターの中へ戻っていく。


「えーっと、なになに……『ラスエリ工房におけるPAP事故について』って、やっぱりアレの件じゃないですか!?」

「はっ! やっぱりあんなオモチャが街をうろつくから面倒な事が起こるんじゃねぇか!」


「あはは……

 それにしても、トム店長は本当にPAPが嫌いなんですね」

 わたし自身、アルブラに来てからPAPに触れる機会も無かったことからあまり嫌な思いは無いけど、トム店長は言葉の端々に嫌悪感がアリアリと出ている。



「オイ、オメーはPAPってどういう原理で勝手に動くか知ってるか?」

「原理……ですか? とりあえずこちらの世界のひと達がPAを参考にして作成した量産型の機械だということぐらいしか」


「確かにPAを真似て作成しただけあって、起動の仕組みやモーター部分はPAと同じような感じになっちゃあいる。ま、心臓部についてはPAのように魔晶石を使えねぇから模造品(イミテーション)として魔石から加工した魔力炉を使っているがな。

 だが俺がPAP(アレ)を嫌うのはそれじゃねぇ、ココよ」

 そう言ってトム店長は頭を指差す。


「頭ですか?」

「ああ、正確にはPAPを制御する脳ミソだな。昔は手動でPAPを動かしていたんだが、レイジー商会の奴が『PAと同レベルの自動稼働を目指す』って言い出しやがって、オメーら異邦人とPAを真似て稼働出来る仕組みを考え、実装しやがった」

 なるほど、PAPって前まで手動だったんだ。


「じゃあ、いまPAPが自動運転とかで動いているのは」

「自動運転化を実装したのはつい最近だが、起動部分にアタッチメントで取り付けることにまで成功しやがったから、今じゃ量産化していやがる。

 でだ、その量産化した脳ミソが何で出来ているか知ってるか?」



『うーん、頭というか脳って話になると現実リアルなら人工知能(AI)とかになるのかな? コンピューターという概念はここには無いはずから……何なんだろう? まさか人間の脳を移植してるとかって話じゃないよね?』


「悪くねぇ推理じゃねぇか」

「ええっ! まさか本当に人間の脳を使っていませんよね!?」

「当たり前だろうがっ!」


 あー、びっくりした! でも悪くない推理って……というか相変わらずコチラの思考が駄々漏れなのはなのは……もういいや。



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