13話 ジョブチェンジ(職業が変わるとは言ってない)
ふふふ、当初の予定から外れて戦闘どころかメインとなるはずのPAの話まで行けてないぞ……
※1/16 文頭部おかしいところを修正しました
「そうそう、自己紹介しないとね」
昼食後、改めて初めて顔を合わせた女性神官さんはそう言うと
「私がマチュア。で、こっちの厳ついのが」
「ロイズです、キレイなお嬢さん。昼食はとても美味しかったよ。ウチのは料理が苦手でね」
はぁ……まぁ、得意は人それぞれだし?
「あらっ?元々戦闘職で、料理なんか覚える暇なかったって話しておいたわよ?それにあなただって捌いて焼いただけの鳥を『ウマイ、ウマイ』って食べてたじゃないの」
「なに、アレはアレで若かった時の思い出だよ。だが時と共に色々と考え方ができるようになると、昔とは変わる物もあるのさ、ねぇお嬢さん」
「え、あの……」
ご夫婦なのかな?
「なぁ、戯れ合うのは夜にお前たちの部屋だけにしてくれないか?見ているこっちがムズムズするわ。
それに、コーデリアさんも困っているだろうに」
わたしがあたふたしているのを見て、中年男性の神官さんが呆れたようボヤくと、
「ハバスだ、よろしくお嬢さん」
と手を出し、握手を求められた。
話を聞くとマチュアさんは元々戦闘僧侶として前衛職をしていたけど、魔法の腕を買われて回復系魔法の技術を伸ばし、神官見習いから始めて今ではここの神官に。
そしてマチュアさんの能力を見いだしたのがロイズさん。元々は雇われの高レベル神官として各地を回っていたけど、マチュアさんと出会い指導していく過程で惚れたらしく、猛アタックの末にマチュアさんと結婚してここの神官になったとのこと。
ハバスさんはこの神殿の副神官長で、わたしと同じ白魔法使い。回復系を熟知しており話を聞く限りでは頼れるお父さんポジションっぽい。
ついでにトーレさんとダレスさんの事も聞いてみると、トーレさんは神官見習いを経てからこの神殿に配属になったらしく勤務五年目。
ダレスさんは長年ここの神官長として働く神官で、町役としての顔も持つ重鎮さんだった。
『ゲームとして稼働しているのはクローズ時代を含めて半年前からって聞いてるけど、この世界自体が数百年前から始まっているって言うのは本当なんだ……』
わたしとの会話を淀みなくする彼らを見て、改めてこの世界で暮らす住民の自然さに驚かされる。
『まるで……本当に生きているみたい』
自然とそう思える出来事だった。
その後、皆さん揃って午前に治療した人達や怪我・症状について話し合いが。
「毒の症状を訴える人が多かったね」
「特に西の森に行った人に」
「東や北の平原は、どちらかと言うと魔物の大量発生が起因した怪我が多かったわ」
「南側は比較的安全なようだけど、いつもより多かった冒険者が沢山退治していたからかも」
「あとは……普段は人を避けているような気弱な魔物が襲ってくるのも特徴的だな」
「冒険者ギルドには南よりも北と東に生息している魔物退治を依頼書で出すように話をしよう」
「全く、なんでシーレフの近郊でこういうことが起こるのかしら?」
……なかなか大変なようです。
―――◇―――◇―――
「夕方からまた治療を始めるが、コーデリアさん」
「は、はい?」
なんだろ、急に呼ばれてちょっとびっくり。
「もし、あなたさえよろしければ……夕食の事もお願いしたいのですが、どうでしょうか?」
「材料とか調味料さえあれば出来ると思いますが」
さすがにルナさんに貰った材料だけじゃ作れるものに限界あるし、調味料についても運良く?見つけたコンソメ的なのしか確認できてないし。
「では、是非ともお願いしたい。こんなに美味しい食事をいただけるのは我々としても大変助かりますし、こうやって食べてみて改めて食事の必要性を感じました。なぁ、みんな?」
ダレスさんの問いかけに皆さん頷いている。
「材料など必要なものがあればコレで買い出しして下さい」
ダレスさんはそう言うと、懐からお金が入った小袋をわたしに手渡す。
……あの、ずっしりと物凄く重たいのですが!?
「えーっと、結構入っているようですけど?」
少なく見積もっても、100Gぐらいは入っているのは気のせいでしょうか?
「ああ、それで足りないのであれば追加で出しますが、200Gにしましょうか?」
「いえいえいえ、これだけあれば足りると思いますから大丈夫です!」
お芋が一個1Gとかなら詰みますが……
それから皆さんの好き嫌いを聞き、おおよその献立を決めてから買い出しに。
意外にお肉料理のリクエストが多かったけど、何にしようかな~
あ、市場の位置はトーレさんに聞いたので問題なし。
ちなみに服装が見習い服から、神官服に変わってます……神官じゃないのに。
見習い服で買い出しに行こうとしたところ、マチュアさんからストップが。
「ちょっと、なんでコーデリアさんが私のお古着てるのよ?」
マチュアさん、怒ってるというより呆れているような?
「いえ、見習い服がコレしかなかったもので……」
「トーレくん……どう見てもサイズ合ってないでしょ!
それとも皆、コーデリアさんにパッツンパッツンな服着せて喜ぶ趣味があったとか言わないわよね?もしあったら……更正対象よ」
ポキポキッ
「ひっ」
薄い笑みを浮かべながら拳を鳴らすマチュアさんに男性一同真っ青です。
うん、この人怒らしちゃダメだわ。
「神官長、コーデリアさんの服ですが見習い服がないので、特別に神官服を着てもらおうと思いますがよろしいですよね。コーデリアさんも良いわね」
疑問符付きません、拒否権もありません。
コクコク
わたしとダレスさんは頷くのみ。
「新品の神官服ならサイズ合うものもあるから、先に着替えないと。女の子なんだから着るものにも拘らないとダメよ?」
というわけで、マチュアさんといっしょに件の倉庫に行ってお着替えタイム。
なお、身に付けている下着にもダメ出しされて「これでもうちょっと自分に似合ったカワイイ下着も買いなさい」とお小遣いを。それと、マチュアさんが使わなくなったブローチと髪止めも「よければ」と頂いてしまった。
さすがに「いただき過ぎです」と一度は断ったものの「年の離れた妹みたいで……ダメかな?」と言われてしまっては断りきることもできず。
確かにわたし的にも『お姉さんがいたらこんな感じかな?』と思うことがあったので素直に貰うことにした。
本当にありがとうございます、大事にしますね。