127話 モーションブレイク
米18/06/13 後書き追加しました。
【フィーナの視点】
「行くぞ!」
『タウラスは偃月刀を上段に構えて前方へのダッシュ……そうね、その武器を使ったあなたは猪突猛進に攻撃を繰り出す狂戦士に変わっちゃうのよね』
星流偃月刀の持つ効果は攻撃力の大幅上昇、そしてただただ戦うことに先鋭化する事。
『今のタウラスは私を護る為、その武器を封印しているものね。だけど私は狂戦士化も好きよ』
「行きます!」
それに対して戦闘神官は先程までよりも更に身を低くして突っ込んでいく。
『あんなに低い体勢から……どんな技が出せるの? スライディング? それとも蹴り上げ?』
そんな事を考えていると、タウラスが振り下ろす偃月刀と戦闘神官が低い姿勢から突き上げた拳とが激突し、
バンッ!
「くっ」
激しい爆発音と共に二人を真っ赤な爆炎が包むと共に見ていた者の肌を焼くような熱い熱風が辺りに吹きすさぶ!
その熱風に耐えかね、顔を腕で隠していると
ガシャン……
「何、今の音!?」
まだ爆炎が二人を解放しておらずハッキリとはわからないものの、何か重たいものが地面に落ちた音がする。そして間髪置かずに聞こえる
ドンッ!
何かを貫いた鈍い音。
『タウラス!』
そんな貫くような音が出せる武器をタウラスは持っていない。だとすれば、そこから推察されることはただ一つ。
「……嘘」
爆炎が収まった後、目にしたものは仁王立ちしているタウラスと、その厚い胸元を左手で貫く戦闘神官の姿がそこにあって……
―――◇―――◇―――
【タウラスの視点】
「行きます!」
こちらがダッシュするのとほぼ同じタイミングで戦闘神官も低い姿勢で突っ込んで来る。
『今までで一番速く、低い体勢で突っ込んでくるが……何にせよ一刀で斬るまで!』
「ハァァァッ」
《龍尾薙》
溜めた闘気を解放しながら偃月刀を上段から振り下ろす技は、龍がその巨大な尾で阻害するもの全てを薙ぎ払うと例えられた強烈な斬撃。相手どころか地面すら割く必殺の一撃。
『何が狙いかはわからないが、とにかく斬り伏せる』
ただ無心で上段から振り下ろす偃月刀。
その振り下ろすタイミングに合わせ戦闘神官も低い体勢から構えると、そのまま偃月刀に向かって拳を打ち出してくる!
バンッ!
「なっ!?」
偃月刀と拳が衝突した瞬間、激しい爆音と共に視界全てが炎に染まる。そして偃月刀を通して両腕に凄まじい衝撃が走ると、耐えきることができずに両手から武器を手放してしまう!
『バカな!』
確かに威力のある突きであり、視界が埋まるほどの炎と体の中まで響く爆音に驚きはした。が、それらを合わせたとしても武器を手放してしまうなど考えてすらいない。
『……いや、今のは通常の打撃ではなく強制武器解除か!』
いつもなら戦闘中にそんな事を考えたりはしない。だが、予想外の事に思考が奪われていたことが結果的に命取りになる。
ドンッ!
「しまっ……」
最初に胸を何か突かれた感覚から、しばらくして全身に激しい痛みが走り、自分が何をされたのかを悟る。
そして爆炎が晴れた後、目の前にいる戦闘神官の手刀が自分の胸を貫いている事実を改めて認識すると、痛みによる熱さと同時に手足の先から感覚が抜け落ちていくのがわかる。
『だ、が…まだ』
意識が完全に飛ぶまで反撃を試みようとするが、思うように体が動かない。そしてこちらが動いたことを見逃さなかった戦闘神官は、手刀を抜いたモーションから次の動作に入り、手首から先が欠けた右腕を左腕に添えながら……
―――◇―――◇―――
『とりあえずここからは練習でも数度しかしていない連携技。少しでもミスったら即こちらの負けになるけど、それに恐れたらもっとダメ。出来ることを信じて技を繰り出すのみ!』
「行くぞ!」
タウラスさんもこちらの動きなど関係なしとばかりにダッシュで間合いを詰めてくる。
「行きます!」
わたしだって負けられない、残った力を全て出し切るべく一気に間合いを詰める!
『今までよりももっと低い姿勢! その姿勢から跳ね上がるような感覚で脚から腰、腕に力を通す。右腕には魔力と気を暴発するレベルまで注ぎ込んで……すっごい痛いだろうな』
タウラスさんがこちらが間合いに入ったことを判断した瞬間、先程までとは異なる鈍く光る偃月刀を振り下ろしてくる!
対してわたしも右腕に溜まったエネルギーを一気に開放しながら、振り下ろされる偃月刀に向かって拳を突き出す。
・
・
・
『リア、この技は如何にして相手の攻撃、その出かかりに当てるかが肝よ? どんな攻撃でも出かかりならば互角以上の威力をもってすれば潰せるわ。
でも、今のリアでは二度は出来ない。力や消耗的な意味もあるけど、優れた冒険者にそのまま出してもきっと対策を取られるから……だから【二度目は無い】という状態で使うこと。
えっ、互角以上の威力が無い場合はどうすのかって? うーん、失敗しちゃうかな。本来は互角の相手に使う技なんだけど、確かにリアの場合なら互角以上の相手に使うこともあるわよね……
じゃあ、ちょっと技を追加してアレンジしましょうか。まぁ、技と言うより【ワザと暴発させる】って感じになるけどね。
あっ、今の面白くないって思ったでしょう……』
《通天崩・爆》
バンッ!
『くぅぅぅぅぅぅぅ! 痛っいっ! あとやっぱり面白くない!』
拳と偃月刀が衝突した瞬間に溜まり切ったエネルギーが爆発すると、手首から先の感覚が一切なくなり偃月刀にも自分自身にも激しい衝撃を与え、その衝撃を受けて発生した爆炎が視界を赤一色に染め上げる。
『自分が起こした爆炎で視界は一切見えないけど、偃月刀を弾き飛ばした感覚は消えていないし、この距離なら見えなくても次の技を出して当てる事が出来る!』
《闘気錬精》
己の肉体に受けたダメージを全て攻撃力に変換。それは戦いが始まってからのダメージだけでなく、ついさっき自分が繰り出した技で受けた自爆的なダメージも攻撃力に変換出来る。
『倍率は十倍、だったらあの鎧相手でもいけるハズ!』
ダメだったらこちらが負けるだけ。でも絶対に負けない!
《旋風貫手》
自分の左手を、指を、一つの武器として固めたイメージを強く持ち、そこにあるであろうタウラスさんの胸元に向かって真っすぐ突き出す!
ドンッ!
突き出した手刀は闘気錬精で通常の十倍に底上げされた威力もあり、伝説級鎧である夜叉霞をも容易に貫くと、そのまま背中まで貫通する!
『これで終わって……ない!? まだタウラスさん目から戦うことを諦めていない!』
爆炎が消え去ると、わたしの左手はタウラスさんの胸元にしっかりと突き刺さっていた。
しかし、視界に映るタウラスさんの目にはまだ光が宿っており、戦うことを諦めていないのが手に取るようにわかる。
『そう……だよね、どちらかが負けたと思わないと終わらないよね。
だったら、わたしは攻撃する事を止めない』
タウラスさんの体から引き抜き真っ赤に染まった左腕に対し、手首から先が無くなり炭化している右腕を添える。
ガッ
左脚で強く大地を踏みしめ、発生したエネルギーを力に変える! そして両腕を前に突き出し、
《衝波》
ゴウッ!
「ぐっ……」
至近距離で繰り出した攻撃を避ける事もガードする事も出来ないタウラスさんは、わたしの放った【衝波】を真正面から受けると、後方へ吹き飛びながら粒子化していく。
バタッ
「さすがに……わたしも、限界……」
そして全て出し切ったわたしも、その場に倒れ込むのであった。
いつも読んで頂きありがとう御座いますm(_ _)m
いつもは週二回、月曜・木曜アップなのですが、今週はちょっとだけストックが出来たので月曜・水曜・金曜の三回アップを頑張ってみようかと。
……なんだか百回までの毎日アップが懐かしかったです( ´ : ω : ` )
話的には戦闘中な感じですか、とりあえず三者視点で書いてみましたが……
相変わらずイメージを文章化するのは頭をたくさん使います。こういうのは何度も何度も書いて覚えるしかないかな〜と。
まだまだ未熟な文章ではありますが、少しでも読んで面白いと思っていただけるよう、引き続き頑張っていきたいとおもいます。
では、次回金曜日向けて添削読み直しをやってきます┏〇))




