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121話 美男と美女


※18/05/24 後書き追加しました。

※18/06/22 誤字修正しました。


 ガチャ



 入口から入ってきたのは豪華な衣装をまとった女性と、その警護者らしい屈強な体格をした冒険者の戦士。


「失礼するわ。タウラスはいつも通りで」


 女性の方はプラチナブラウンの髪をクルクルっと巻き、その髪に似合ったキレイな髪飾りと目に鮮やかながらも上品な衣装を身に着けている。肌は色白で衣装も含め、どこから見ても『お嬢様』といった感じ。ちょっと目元がキリっとしたところが、美形ながら厳しそうなイメージを与え、その佇まいにもまるで隙がない。


「承知しました」

 もう一人の戦士は……あ、わたしと同じ異邦人の冒険者だ。なんだかすっごく大きいし、身に着けている鎧や盾もいかにも強くて重そうな物なのに、それらを苦にすることもなく、平然と入り口まで戻っていく。

 移動した後はそれが女性からの指示なのか、店の入り口に立つと、そこからピクリとも動かない。


『あそこまで動かないと、パッと見で闘牛を擬人化した石像みたいに見えるかも? それにしてもハルより大きい冒険者なんてそうそう見たことなかったけど、やっぱりこうして目にすると大きいって色々アドバンテージがあって羨ましいかも……』


 ん? 自然に体格から戦闘的な話になっちゃった。うーん……色々な修練もあってか、どんどん現実(リアル)のわたしから離れていくような、現実(リアル)のわたしがそっちに染まっていくような? うーん……



「これはこれはフィーネ様! お待ちしておりました」

 声がした方を見てみると、店の奥のカーテンが開いた場所から優男をそのまま形どったような、モデル級の美形な男性が現れる。その瞬間、カーテン近くにいた女性陣から黄色い声が聞こえるものの、その男性は振り向きもせずに店に入ってきた女性の元へと向かう。


「ザラ、今回も良い商品があれば買い付けます。説明をしてちょうだい」

「ええ、私としてもフィーネ様に色々と見ていただきたい物を揃えてございます。どうぞ奥のほうへ」


 ……あらっ、どうやらザラさんがお店に現れたのは、今現れたフィーネさんと呼ばれた女性を出迎える為だったみたいで。


「あー、フィーネの出迎えだったのね」

「残念……でも、やっぱり生でザラを目に出来たのよ? それだけでも並んだかいがあったものよ!」

「そうね!」


 うん、ポジティブな人達で素直に称賛できます。はい。というか、


「あのフィーネと呼ばれた人って有名な方なんでしょうか?」


「えっ、知らないの!?」

「まぁ、ザラも知らなかったからねぇ……」

 うぅ、暗に馬鹿にされているような気もするけど知らないものはしょうがないし! 



「フィーネは共和国でも上位に数えられる【クロイチェル商会】の一人娘よ。あの美形に明晰な頭脳、それに冒険者としても指折りで【風斬りのフィーネ】って呼ばれているぐらい強いの」

「あはは、なるほど」

 と言うことは、アレがハルの話していた買い付けに来る共和国の商人さんってことかな?


「ちなみに一緒に入ってきたあのデカいのが【猛牛タウラス】っていう冒険者で、共和国でも屈指の冒険者だったんだけど、フィーネに熱を上げてすっかり護衛としてついちゃったって話」

「あんな美女と野獣じゃねぇ……いくら頑張っても無理でしょ、アレ?」


「そうです? なんかわたしから見たら、すごくお似合いに感じますけど」

「えぇー! そりゃフィーネとタウラスとがくっついちゃえばザラにチャンスが出るけどさ、アレ見てもそう思う?」


 そう指さす先を見てみると、ザラさんとフィーネさんの二人が棚に並んでいる商品について、にこやかな表情でアレコレ話をしている。

 確かにそこには邪魔できないオーラというか、壁が存在しているように感じてしまい、まわりにいる誰もが近寄ることすら出来ない。


『ま、美形二人が並ぶと絵になるのは間違えないけどね』

 実際、わたしも遠めから見ているだけで『邪魔しちゃいけない』って思ってしまうし。色々と男女の仲というのは難しいものです……わたしに経験無いからわかってないだけどね!



「そうそう、さっきあなたに教えたことはあまり人に言わないでよ? ザラ狙いじゃないから教えてあげたトップシークレットなんだから」

「そ、そうですね。誰にも言いませんから安心して下さい」

 というか、そんな話を誰かに言うこと自体ありませんから!


『くっ、なんだかそういう話を振られると思わずたじろいでしまう自分が悔しいかも!』

 なんだかんだ今まで生きてきた中では、そんな余裕もなかったからどうしようも無いけどさ……はぁ。



「PA関連についてはおおよそわかりました。あとは冒険者としての装備についてですが」

「はい、そちらについても十分満足できるものが上がっているかと」

 ザラさんが自信をもって手渡したリストを見ながらフィーネさんはかなり思案しているみたいで、リストを指さしながら何やらブツブツと言っている。


『うわ、PAの装備だけじゃなく剣とか鎧とか冒険者が身につける装備品についても交渉とかしてるんだ。やっぱり出来る人っていうのは違うんだろうなぁ』

 うん、自分とは構造が違う(そりゃ、世界というか色々違っているから当たりまえだけど)人ってすごいと思います。



「いつも言っているけど、武器・防具については実際に効果を見てみないことには交渉すら出来ないわ」

 フィーネさんはそう言いながら手元のリストと、二人を遠巻きに見ているギャラリー達を見比べ始める。そして、


「そこの眼帯の戦士と横にいる槍使い、あとその向こう側の壁にもたれている弓師と柱の横に隠れている魔法使い、それと……」


 ん、目があった?


「そこの作業着(ツナギ)を着た髪の長い女性。いま私が声を掛けた五人はそれなりに腕が立つと見ました。これからザラが用意した装備を使って模擬戦をしたいのだけど手伝って貰えるかしら?

 報酬は演習で使用した装備と一人につき十G。あと、演習で私とタウラスに勝てた場合、一人につき百Gを追加報酬として渡します」


 へ? 


「ちょ、ちょっとわたしもですか!?」



 いやいや、なんでなんで!? 話の流れが読めないんですけど!




いつも読んでいただきありがとうございます(*´▽`*)


今週も無事に二度目のアップができました。

今週は出張があったので「うわ、話考える時間減るわ~」とか思っていましたが、逆に移動の新幹線が仕事の準備さえ終われば自由時間だということに気がつきました。


更に帰りは完全に自由時間!


 ……寝なければですが。



さて、新しい登場人物もやっと登場です。

といってもここからどうやって絡ませていくか、どういった立ち位置にするかをまだ完全に決めかねている所だったり。


この辺りの調整を怠ると後で痛いしっぺ返しを食らうので、まずは自分の頭の中で様子見をしながらボチボチっと書いていきます。


ま、本当は50話分ぐらい先まで書いてあればこんなことを考えなくても良いのですけどね(´・ω・`)



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