116話 新しい場所
※18/05/08 アップする日付間違えました(´・ω・`)
火曜日アップのつもりが月曜日に……orz
『なんじゃコイツは?』
初めからちょっとズレたというか、おかしな娘だとは思ったが……色々やっていく過程で考えられないことばかり起こしやがる。
『まずはあの修復工具の扱いと、修復技術の上がり方が異常じゃった』
コイツにも言ったが修復工具を使いこなすには一定の時間が必須。それを今日初めて触ったにも関わらずある程度使いこなしよった。いくら【リペア】のスキルを持っているとはいえ、常識じゃ考えられない速さで技術を習得しちまいやがった。
『それにアレを食らって『ほぼ満タン』じゃと? アレ一つでMP4000は回復する代物じゃぞ?』
普通に食べればアレが持つ超回復力で、よほどの者でも回復量を超えた回復力からMP酔いする一品を不味い不味いと言いながらも食いきってケロっとしてやがる。
しかも『ほぼ満タン』ということは、逆を言えばアレを食らっても回復しきっていないということになる。聞いた話ではレベルは確か15だったはず……レベルに見合っていない、どんだけ膨大なMP量をしておるのか。
そしてさっきワシが手を滑らせた時に見せた移動速度。【縮地】か? ワシはそっちについて専門ではないから詳しくはわからんが、あれとてあんな小娘が使えるようなスキルとは考えにくのだが……
『ま、他にも気になる所はあるが……まぁ、よいわ。当面退屈にならんオモチャがやって来たとでも思うことにするかの』
―――◇―――◇―――
「お前さん、今はどこに泊まっておるんじゃ?」
「えーっと、【快夜の海原】という宿屋で部屋を借りています」
「ふむ、お前さんは色々と面白そうだし、修理品を直した賃金代わりといっちゃなんだが、上に部屋も空いとるからここへ来るか? 今なら他にも修復待ちのパーツも残っておるから自由に修復できるぞ?
それらの修復と、品出しや接客など店の手伝いをすることで部屋代はタダにしてやる」
「え、良いんですか!?」
確かにあの宿屋は泊まるには問題なかったし料理も美味しかったけど、ちょっとお財布が不安になりつつあったのは事実なわけで、こちらとしては非常にありがたいというのが正直なところ。
それに修復が【おかわり自由】なんて最高じゃないの! この調子で修復作業ができれば、少しはまともなリペア使いになれるかもしれないし。
「では、明日にでもこちらへ移動したいと思います!」
「ん、その辺りは任せる。あとコレが部屋の鍵じゃ」
そういうとお爺さんは懐から取り出した鍵を、わたしに向かっておもむろに投げる。
パシッ
「はい、確かにお預かりしました。
……そう言えば今更ですが、まだお爺さんのお名前をお伺いしていなかったですね。
わたしはコーデリア・フォレストニアと言います、リアと呼んでください。あの、お爺さんのお名前をお伺いしても?」
「はっ、そうじゃったか。ワシの名前はトムシー、トムシー・ゴンラッドじゃ。まぁワシを知っとる者はトム爺と呼ぶがの」
「ではわたしもそれに倣って……トムお爺さん、改めてよろしくお願いします」
「かっ、『トムお爺さん』なんて背中が痒くなるわっ」
ええ……うーん、だったら
「お店にだから……トム店長でも良いですか?」
「あぁ、まだそっちの方がナンボかマシだわい。よろしくよ、嬢ちゃん」
「いや、わたしの『嬢ちゃん』っていうのも……」
とまぁ、こうしてわたしはアルブラでの拠点を宿屋から、トム店長の工房に宿泊することに。広い建物の中には他に従業員もいないようで、どうやらこの中ではわたしとトム店長だけの生活になるようです。
食に関してはトム爺さんはこだわりが無いようで、わたしが試しに作った料理にも『ふむ、悪くはないの』と今まで無かった普通というか大したことがない対応に、少しだけガッカリのような残念に思ったりしながらも、
『そういえばアルブラに来てから料理もしていなかったから……もしかして料理スキルのレベルが落ちたのでは!?』
などと最悪の事態を創造していたところ、トム店長から「ワシは味覚音痴でな」との一言があり、なんとなく納得というかそういうものかと思う事に。
もしかしてフロストバジリスクのアレにしても、普通なら不味くてなかなか食べられたものじゃなかったところ、トム店長自身が持つ味覚音痴によって認識されていなかったというオチが見えてきたり……
そんなこんなで色々と複雑なところを感じながらも宿屋に帰り、翌日の朝に部屋を返すことを伝えてから荷物をまとめ始めたころに
コンコン
とドアをノックする音が。
「はーい」
扉を開けるとロキシーが荷物を持って立っていた。
「なんだかひさびさな感じがする……というか荷物を片付けているみたいだけど、リアも宿から出るの?」
「え? ということはロキシーも?」
「少しでもお金稼いでおきたいと冒険者ギルドなどで求人情報を見ていたら、貴族地区でメイド募集していたから応募してみたら、どうやら私しかいなかったようで即採用に」
なるほど……ん?
「というか、メイドって職業じゃ?」
「リアのおかげで料理スキルが身について、元から持っていた作法のスキルとで自動生活用の【職業メイド】が取れたから」
「いや、それはわたしと言うよりもロキシーが頑張ったからだからね!」
自分の努力を他人のおかげだなんて思わないように!!
「わたしの方は流れでというか、色々とあったんだけど西部地区と北部地区の境目ぐらいにある工房で住み込みで働けることになったんだ。名前は【ゴンラッド工房】っていうんだけどね」
「ゴンラッド工房……ちょっと名前を聞いただけじゃわからないけど、工房ってことは多分PAに関する工房? だとすると、普通なら倍率激高な所に『流れで』なんていう偶然的な感じで入れたのは、かなりの幸運だったと思う」
「そっか……そうだよね」
ま、入れた理由が『修復をたくさんやったから』というのは本当の理由かどうかはわからないから何とも言えないけどね。
もし『アレを食べきることができたから』なんてのが選定理由になっていたら、そうそうあそこに入るのは厳しいと思うけどな……
「でもそうするとこの宿にはハルしか残らなくなる」
「あ、そうだねぇ……寂しがるかな?」
さすがにそんなことを正面きって言えないけどね。
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「で、街にはいるけど宿泊場所が別になるという事で、ちょっとした食事会をやろうと?」
「うんうん、いきなり予定を入れてゴメンね」
「ハルなら大丈夫だと思ったけど、一応リアが」
「だって、ほらハルの予定とかもあるだろうしさ」
「ま、俺の方は問題無いしな。とりあえず二人が逗留する場所さえ聞いておけば、何かあったと時に行動することもできるだろうし。それに俺の方も丁度明日から現実の用事で二日ほど入れなくなるしな」
そんなこんなを三人で話しながら、宿屋の横にある食堂で食事会をしました。もちろん三人だけで。ちょっとだけ『マチュアさん達にも会って色々と話とかしたいな~』とも思ったものの、ハルの話だとマチュアさんもロイズさんもかなり忙しいみたいで。
『大丈夫かなぁ……心配だけどマチュアさん達がいる場所が、わたしたち異邦人の冒険者とは距離を置いている人達が多い場所だから、会いに行くことで余分な迷惑をかけたくないし。とりあえずその内手紙だけでも送っておこうかな』




