111話 サクラとモモ
「いや〜ウチめっちゃPA大好きでな、なかなか見かけないというかアルブラじゃ初めて型ハマル見たから気になって、ついつい前に出てしもうたん。
だってな、白銀のハマルなんていうめっちゃド派手なPAがギュインギュイン走ってたから、どないなごっつい奴が乗ってるか興味深い湧いてついなぁ……
せやけど、こないな別嬪でスタイルの良いネーチャンだけやのうて、なんやエラくカッコいいニーチャンまでコックピットから出て来てるし。
……あ、もしかして二人でお愉しみ中やったかな?」
「?」
二人で……お愉し……み?
「ち、違いますから!」
気を付けないとマシンガントークで一気に話が流されて否定する間すら与えられないし!
というかわたしだけが真っ赤な顔で否定して、ハルは何か考え事をしているようで、どこ吹く風な状態……
「……ん、ゴメン。なんかあったか」
「い、いや別にぃ」
なんだか負けたような気がするから気にしない!(たぶん被害妄想だけど)
「ほら、モモお姉ちゃん、いっぱいしゃべりすぎ! しかもメッチャ失礼なこと聞いて! この人も困ってるじゃないの!」
「ああ、スマンスマン」
テヘペロしながら話すその態度には謝罪の色が全く見えませんが……
「だ、大丈夫ですよ。まだPAの操作に慣れていないので、この人に操作方法とか教えて貰っていたんです」
「ふーん、そっかぁ……」
モモさんはわたしのPAをしげしげと見てから残念そうな声を漏らす。
「ま、しゃーない。キッチリ強なったら一戦しような」
「はい、その時は是非お願いします」
『ハルは良かったの? この人達かなり強そうだから、PAの練習相手にもってこいだと思うけど?』
『ん? ああ、まぁ今はリアにPA教えるので精一杯だからな』
『……そっか、ありがとね』
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「じゃ、ウチらはこれぐらいで」
「ほんと、練習中にお邪魔しましたぁ」
二人はそう言うと近くにあったPAPへ乗り込み、練習場の向こうへと移動する。
あれからちょっとした事とか話していたけど、別段特別な事はなく井戸端会議のレベル。まぁ、モモさんがわたし達に【PA愛】をひたすら語っていたような気がするけどね。あとおっぱい触らせてとかセクハラ発言が出る都度、妹さんから止められてたり。
「っていうか、個人でPAP持っているって……もしかしてあの二人って大金持ち!?」
「いや、確かレンタルPAPとかもあったはずだから」
な、なるほど……いろいろあるんだ、さすがアルブラ。それにしても
「ハル、なんかさっきの変な雰囲気といい、思案的な表情といい……何かあったの?」
「いや、ちょっと気になったけど……多分、他人の空似だったようだな」
ふーん、ま、いいっか。
―――◇―――◇―――
「とりあえず気にするレベルじゃないかな」
自動運転で走行するPAPから遠くなる二人を微かに見ながらそう呟く。
「見たことないハマルがいたからマークした方が良いかと思ったけど、多分姉さんの言う通りスルーしても良いと思うかな。ハマルだけあってPAの能力的には高そうだけど、あの子自身がまだ扱える域になっていないようだし」
「そうね、あのハマルはちょっと見ただけでも出力とか異常だったから気になったけど、ああやって実際に見てみることでパイロットの影響もあってか、警戒対象としての域に達していないのはわかったわけだし。
正直、知らないハマルがいると聞いて慌ててきたけどアレなら大丈夫でしょ」
おおよそのPAはチェックしていたハズが、ここにきて未見のPA……しかもハマルだと警戒度をあげざるを得なかった。ただし、いくらPAの能力が高くてもそれを操作するパイロットのレベルが知れていれば警戒するまでもないし。
「ま、こちらをあの距離で見つけてからギリギリのラインで止まれたことは素直に称賛するけど、私達ならもっと無駄なく止まれるし」
「うん、きっと姉さんが扱うPAならジャンプするなりもっとスマートに止まっていただろうし」
「お世辞言ってもこの装備はあげないよ?」
「いらないし!」
この装備の良さがわからないようじゃモモもまだまだね……それよりも
「彼女の横にいた冒険者の方が気になったわね。この姿にも殆ど目を向けることがなかったし」
「いや、それは姉さんが属性盛りすぎだからじゃないの? 普通にそのスタイルだけでも十二分に男の目を釘付けにできるのに、妹属性入れてるし際どい鎧着てるし」
「ははっ、別に見られる分には問題ないよ。私はあの方にすべてを差し出した以上、あの方以外の男が私を変な目で見ても犬に見られるのと同等かそれ以下だし。モモもそうだろ?」
「ま、確かにそうだけどね」
私達がアルブラにいる理由はあの方の意思。それを成す為なら喜んで裸にでもなるし、単騎で敵陣の真っただ中に飛び込んだって構わない。
『だってあの方は私達がこの世界で生きていく為の道しるべをくれた特別な人だから』
「現状で問題点もナシ、気になる点もナシ。モモは?」
「姉さんが言う通りあの冒険者が気になるからもう少しだけ探りを入れてみるわ」
ふふ、私にはあの方とモモがいるからこの世界も楽しくて仕方がない。
「そうやって仕事に励むモモは可愛い」
「姉さんだって……んんっ」
啄むように唇を重ねるとモモはすぐに吐息を熱くする。
仕上げはほぼ出来ている。あとは合図が上がったタイミングで導火線に火をつけ、影に隠れた獲物を灯った明かりで見つけ出すだけ……
『そう、始まりはもうすぐなのだから』
いつも読んでいただいてありがとうございます!
お約束通り、なんとか今週二回目をアップしました。
ただし、文章が見づらいかもしれません……こんな雰囲気でしゃべっている感を出したことから、こういう表現になっていますが(´・ω・`)
次回は再び火曜日にアップできるように調整しています。
そういえば基本的に午前零時に予約アップしていますが、昼にアップした方が読む方としてはよかったりするのでしょうか?
わたしは昼でも夜でも読むタイミングで更新が来ていれば読んでいるタイプなので気にしないのですが、実際どうなんでしょうね。
さぁ、次の更新に向けて頑張りまっしょい!
※もっと誤字脱字に気を付ける時間を作れと神の声が聞こえるような……




