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102話 色々と危機一髪


※18/04/25 誤字脱字修正致しました。


「リ、リア!?」

 不意討ちのあまり、思わず声も裏返る。


「……」


『え? え?』

 ど、どうしたら良いんだ!?

 リアは黙ったままだし、動くに動けないというか動いたら勿体ないというか……


 温かくてムニュっとして、トクトクと鼓動は……リアのなのか、俺のなのか判別かつかないぐらい、自分の中でも混乱しまくっている。


『こ、これは……どうする? ヤバイ、なにがどうしたら……』

 正直、この事象に頭の処理が追いつかない。困り果てるというよりも、そんな時、


「ハル、いますか?」


 想定外の事態にテンパっていた俺に冷や水を被せるロキシーの声が階段の方から聞こえる。

 その瞬間、リアも素早く俺から離れると、何事もなかったような顔でこちらを見てから部屋の中へ戻っていく。


「あ、ああ。じゃあ悪いけど」

「……」

 俺が声をかけるとリアは少しだけ寂しそうな顔をしてから扉を閉めた。


 ・

 ・

 ・


「貸し一つ」

「いいっ!?」

 階段に着いた俺にロキシーの一声。あれを見られていたと思うと顔から火が出そうな思いになる。


「ど、どこから」

「最初から」


『うは』

 恥ずかしさが倍増し、冷や汗が背中を伝う。


「とりあえず、マチュアさんに相談案件。何かあったらと気にして来てみたらあんな事に(ま、視えたから来たのだけど)」

「えーっと、俺はなにも」

「あんな羨ま、」

「うらやま?」

「何でもありません」


 何が言いたかったんだ?



―――◇―――◇―――



 バタン



 扉を閉めてゆっくり息を吐く。そして、



「何をした?」

 思わず声に出す。



『ちょ、ちょっと待って、今わたしは何をした!?』


 なになに!? まるでいきなり我に返ったような感じもあるけど、物凄いトンデモナイことしたよね!


「え? はっ?」

 ヤバイ、ちょっと自分に対し狼狽えてる。

 ……と、とりあえず頭の中を整理しよう!


『確かログアウトしようと思って着替えて、少しだけベッドに横になっていたらウトウトとして、そしたらドアがノックされたから出てみたらハルがいて、話している内に体の中で【ズキン】として……』



 気がついたらハルを後ろから抱き締めていた。



「ひゃぁぁぁぁぁ」


 どどどどうしよう! 一体全体わたしに何があった? 明日からどんな顔してハルと話せば良い??

 し、しかもおもいっきり胸を押し付けるような抱き締め方だったし……どう考えても痴女じゃない!?



 きゅうぅぅぅ



『わわわ……』

 さすがに色々と考えすぎて目が回る!


「でも、本当に明日からどうしよう」

 とりあえずログアウトしてから考えることにしようかな……



―――◇―――◇―――



 翌日。


「ねむかった~……」


 色々と頭を悩ませているうちに気がつけば外が明るくなり始め……急いで寝たもののかなり睡眠時間が足りないことに代わりなく、学校に行ってからも毎授業睡魔との戦いになりました。



『さて、それはさておき』


 ……うーん、とりあえず昨日の件は自分の中で答えと言うか原因は出せなかったけど、時間も無いからログインしないと。


 ・

 ・

 ・


「あっれ、なんだか意外に普通だった」


 ログインしてからハルと会ったけどいつもと何も変わらない挨拶で、拍子抜けというかなんというか。そのおかげというのもおかしな話だけど、こちらも冷静になれて助かったかな。


 そこから皆と揃って山の中腹にある洞窟へ行き、わたしとファナさんだけが中へ。



『眠っているようですね』

『ええ、傷の回復に努めているのでしょうね』


 洞窟の中を歩いて五分ほど進んだ先、ちょっと大きなスペースに山神様は静かに眠っていた。


 わたしが最後に山神様を見たのはPAに乗る直前、傷つきながらもバンダナのことを睨んでいたのが印象に残っている。


『こうやって回復しても、また五十年後ぐらいにはその時の巫女と討伐部隊の人達と戦い傷つくんだよね……』


 とりあえず時間経過で塞いだ傷口。付着している血はすでに黒く変色し、その表面にこびりついている。


『そういう使命だとはいえ、さすがに可哀そうだと思うけどそれがここでのルールな以上、部外者が口を出すわけにはいかないし』


 石像のように固まった体を撫でながらポケットかに手を入れると、ほとんど空の状態になっているエリクサーの小瓶を取りだし、山神様の大きな口の前に置く。


『わたしが持ってきたコレで少しは回復できると良いけど……あとは魔物には効かないって聞いているけど気持ちだけ』



《ヒール》



 わたしが唱えた魔法は山神様を淡い光で包むけど、人にかけた時とは異なり魔物である山神様の怪我は癒えることは無い。



『これも他人から見たらただの自己満足でしかないって言われるのでしょうね』

『良いじゃないの自己満足で』

 ファナさんはわたしの呟きに答える。


『自己満足で戦う者もいれば、自己満足で癒す者もいる。でも人ってそんなものじゃないの? あとは自分で完結できるか、人に迷惑をかけるかの違いじゃなくって』

『そういうものなんでしょうか……』


『まぁ人それぞれでしょうけど、自分の行動である以上は他人の評価よりも自分自身への信頼と決意だと思うし、他人に流されるべきものでもないと私は信じたい』

『強いですね』



 わたし達が暮らす世界と異なり、何をするにも命がかかっているからなのかな?



 わたしにはファナさんがすごく眩しく見えたのだった。



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