勇者候補達
あけましておめでとうございます。
鈍足亀並みの更新速度ですがよろしくお願いします。
(見てる方はいないと思いますがw)
「和矢!」
俺を確認するやいなや、未来が駆け寄ってくる。珍しくポニーテールにしている髪がフリフリと揺れている。普段は後ろに束ねるだけとかも結構多いけどな。ふむ、ポニテか…悪くない。
いや、俺は何を考えているんだ。
「和矢?下らないことを考える事は後からにしてほしいんだけど?」
…なんで勘付かれるのかな。
「顔に少しでてるからよ、お馬鹿」
まじっすか未来さんよ…表情見て思考読めるとか半端ねぇな。
まさかもう異能力的なものに目覚めたのか?
「あ、和矢のだけ分かるだけだから。変な能力とかそういうのじゃないわよ?何年も一緒にいると少しくらいは分かるようになったのよ。逆に和矢は私を見て何か気づいてる時あるじゃない」
「なんだ、そういうことか。なら俺も気づく時はあるな。それにしても未来はよく見てくれてるんだな。未来が気づいてくれてるから本当に助かってるよ」
「も、もう!和矢、早く他の人達にも挨拶を済ませないと!時間無いみたいだから」
ちょっと顔を赤くして、視線を逸らしながら促してくる。ツンツンしちゃってさぁ…まあいいや。
他の人達は…生徒会長さんか。
それと体格のいい柄の悪そうなやつだが…あれ、あいつ俺を突き飛ばしたやつじゃないか?
思い出したらムカついてきたな…平常心平常心。
もう1人がパッとしないような感じか?オタク系的な。なんか興奮気味に見えるけど…
共通してるのはみんな同じうちの生徒ってことだな。
「俺が最後みたいですね。2年生の鈴本和矢です。よろしく?お願いします」
無難な挨拶を済ませると生徒会長さんが話しかけてくる。
「鈴本君、無事起きてきてなによりだ。知ってるとは思うけど、3年生、生徒会長の清川光だよ。改めてお礼を言わせてほしい。助けてくれてありがとう、鈴本君」
すいません会長さん、名前覚えてなかったよ…
「お礼なら未来に言ってください。俺は未来を助けるためのついでみたいなものですし…多分未来が清川先輩を助けようとしたのを引き継いだだけですから。真っ直ぐ近くの出口から出ろとは言ったんですが…」
さり気なく未来の方を見るとバツの悪そうに顔を逸らす。反省はしてるみたいようだし、後から聞こう。
「そうか、藤咲さん。僕が今生きているのは君の勇気ある行動のお陰だ。本当にありがとう。でも、ちゃんと心配してくれてる人が居るんだから余り心配はかけないであげて欲しいよ」
おぉ、『先輩もっと言ってやって!』と一瞬思ってしまった心を引っ込める。
「う…分かりました。気をつけます」
未来が俯きながら答えるからその頭を軽く撫でる。サラサラなんだなぁ…全然抵抗しないし。顔真っ赤に見えるのは気のせいではないな。
「ちょっと和矢…恥ずかしいんだけど…」
「まぁいいじゃないか。落ち込まれるのも嫌だし、小さい時はよくしてあげてただろ?」
「もうそんなに小さくないわよ!…バカ」
「なんか言ったか?」
「なんでもない!」
怒らなくてもいいじゃないか。手のかかるやつだこと。
「2人はとても仲が良いみたいだね。ご馳走様でしたって感じだよ。まぁここら辺りで自己紹介の時間を続けてもいいかな?」
ニコニコしながらさり気なく清川先輩…会長さんが言ってくる。
「あ、どうぞ。すいません清川先輩」
「構わないよ、じゃあ次は、鬼道君。頼めるかな?」
そう言って体格のいい、鬼道君と呼ばれた人の方を見るが、椅子に踏ん反りかえって無視をする。
「しょうがない、僕から紹介させてもらうよ。
彼は3年生の鬼道仁君だよ。見ての通り少しばかり僕は彼から嫌われてるようでね。あの時僕を部屋に閉じ込めたのは彼で、恨みが僕にあったみたいなんだ。まぁ気にしなくてもいいよ」
…え?何かさらっと言ってくれたけど要は鬼道さんに殺されかけたってことか?気にしない方が無理なんだが…
「あの、清川先輩。殺されかけたんですよ?流しちゃっていいんですか?」
「あぁ、構わないよ。何時もの事だからね」
…何時もって、やばくね?どんだけ恨まれてんだよ。毎回相手してる会長さんも大概だな。
「さて、最後は影倉君。自己紹介を頼むよ」
まじで流しちゃったよ。会長さんメンタル強すぎだろう…
「あ、はい。1年生の影倉通です。まさか本当に異世界召喚が起きるなんて夢にも思いませんでしたよ。勇者になったらみんなで頑張りましょう!」
おぉ…勇者になる気満々だな。面倒事に巻き込まれるのは確実なのに喜ぶのは凄いな。
でも気持ちは分からなくはない。多少は憧れるもんな。
「影倉君はこういう事に詳しそうだね。僕もクラスメイトから勧められて似たような小説とかを読んだ事はあるけど、君の方がかなり詳しそうだ」
「生徒会長さんも読んだ事あるんですね!だったらこういう場合は人間族を苦しめる魔族との争いに関わる事が多いですよ。魔王の討伐だとかがテンプレなんですよ」
会長さんも読んだ事あるんだな。ちなみに俺も友達から勧められて読んだ事はあるけど、確かに面白い。チート並の能力を転移、召喚時から持っていて無双したりとか、羨ましい限りだよな。
召喚された身としては乗り気にはなれないけど、もしかしたら俺にも能力が!とか少しばかり期待もしてしまう。
「召喚されたって事はやはり、魔王がいるんじゃないですか?その影響でこの国に危機が訪れたとかですかね?僕、ちょっとワクワクしてきましたよ!」
「でも影倉君。そうなると僕等は争いは避けられないことになるよ。相応の心構えはしておくべきだと僕は思うよ」
そこなんだよな。争いとかになると相手を自分の手で相手を傷つけないといけない。ゲームとは絶対に違う。生きるか死ぬかの厳しい世界なのだと思う。
「大丈夫ですよ清川先輩、僕等はきっとチート能力とかに目覚めて無双するんですから、サクッと倒してこの世界を救いましょうよ」
「いや、そういう訳ではないんだ、影倉君。
僕が言いたいのは…「失礼致します、勇者候補様方。全員揃われたので、勇者選定の儀式の前に簡単なステータス確認をするので、こちらをどうぞ」
会長が物言いたげな顔をして喋りかけたけど、この城の兵士の人が入って来たから口を閉じて兵士の人に譲る。
手渡された物は羊皮紙?のような紙だ。それと小さな針が1本。紙には特に何も書いていないので、恐らくこれに俺のステータスが出るのだろう。
「その紙に血を一滴落として、『ステータス』と念じて下さい。そうすると勇者候補様方のステータスが出てくるので、お手を煩わせますがお願いします」
やっぱり血ですよねー、針渡されたからなんとなく察したけどなぁ…地味に痛いのに血が滴らせるくらいだから結構サクッといくんじゃないか?お、未来がやったな。ちょっと顔しかめてるのもまたこれはこれで…
「何よ、そんなに見て。面白い物じゃないでしょ?」
…気づくの早いよなぁ。ガン見はしてなかったつもりだけど。弄りネタとして面白そうだったからな。
「いや、しかめっ面の未来がちょっと面白かったからかな。中々悪く無かったぞ?」
「〜ッ!もう!」
顔を真っ赤にした未来が俺の手を取り針を奪い取って…
…ブスッ
「イッタァ!?」
手加減はしてもらってたのかさほど深くはないけどマジ痛い、そりゃ悪かったけどさぁ…
ステータス見ますかね…