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俺は不老不死になって色々な事があった

作者: 道騎士

タイトル『悪魔の化身』

作者 道騎士

俺は、前島(まえじま)(ひそか)。何の悪戯か、不老不死になってしまった。年齢は、300歳くらいにはなったと思う。100歳を過ぎてから、もう年齢を数えなくなってしまった。死ねない未来に絶望して道端に座り込んでいた。そうしていたら、加賀(かが)智美(ともみ)に声をかけられた。その時の記憶を紡ぎだしていこう。


「俺は何で生きているんだ。腹が減った。早く死にたい!」

 

 先の未来に絶望を感じ、もしかしたら空腹で死ねるかもしれないと思い、一週間飲まず食わずの中で生きていた。生きてはいるが、身体はもうほとんど動けなくなってしまった。すると、目の前に少女が現れた。少女は何のためらいもなく、俺に近づいてきた。


「大丈夫ですか?」


 10代後半の若い少女だった。なぜ、こんな山奥に、しかも、一人でいるのだろうか。そんな心配を余所に、少女はその華奢な身体で、俺を運ぼうとした。


「俺を何処に連れていくつもりだ?」


 そう聞くと、少女は答えた。


「こんな所に一人でいたら、危険だわ」


 俺はその言葉に安堵してしまったのだろうか、そこで記憶が途切れてしまった。


 目を覚ますと、ベッドの上で寝ていた。起き上がろうと思い、ベッドに端に手を置いた瞬間、横から声が聞こえてきた。


「目を覚ましたね。無事でよかった。私は加賀智美というの。よろしく」


 俺は返事をするのが、億劫でうなずいた。


 食事を済ませた後に、少女から様々な話しを聞いた。その話しの中で、自己紹介と現在の世界の変貌について聞かされた。


「今、この世界は、ある悪魔の襲来によって大きく変わってしまった。その悪魔は、人間の隠れた能力を引き出す力を持っていて、その力は、悪魔の力を得た人間(悪魔の化身)により、破滅に導かれているの」


 それを聞いた途端、俺の頭に痛みが走った。


「う、何だ、この痛みは? 何かが、思い出せそうな気がするのだが……」


 俺は、頭を抱えながら呟いた。


「無理をしないで。今は安静にしていて」


 智美は、笑顔を顔に貼りつけ、優しい、そうまるで聖母のような声を絞り出した。


「加賀さん、少し聞いてもいいか?」


 俺は気になったことを矢継ぎ早に聞いてみた。


「悪魔って一体、何者だ? 何で悪魔の化身となった人間はそんなことをするんだ?」


 智美は困惑の表情を浮かべた。それを見て俺は、一度に色々聞きすぎたことに気がついた。


「すまない。一つ一つ聞いていくよ」


「智美でいいわ。そうよ。質問攻めは女の子に嫌われるわよ」


 智美は可愛らしく言うと、質問に答えた。


「悪魔についてはよくわからないわ。でも悪魔の化身となった人、別名を欲望の塊(ウォンタ―)の目的については、分かってきたの。それは……」


「山小屋を見つけたぞ!」


 外で大きな声がした。その声に少女は慌てた、


「へへへ。手こずらせやがって! このメスガキ」


 外は、すでに多くのものに囲まれていた。智美は、言った


「まずいわ。このままじゃ、逃げられない。戦うしかないわ」


「お前は戦えるのか?」


 そう聞いた。


「まだあなたに話してなかったけど、私にもある能力があるの。この能力で私は、生きてきたの。だから少し待っていて」


 そう智美は言って、出て行った。俺も追いかけようとしたが、身体の痛みによって動けなかった。



 智美は数体の悪魔と対峙していた。


「お前一人か! それならちょろいな」


「お前も化身の一員にしてやる」


 二体の悪魔がいち早く智美を見つけ、捕まえようとした。


「あんたたちなんかに、捕まるわけにはいかないのよ」


 そういうと戦闘の火ぶたが切って落とされた。


 智美は右手に力を込めると、浄化の炎が燃え上がった。それを悪魔共、または欲望の塊(ウォンタ―)達に投げつけた。その炎が身体にぶち当たった欲望の塊(ウォンタ―)達は、悲鳴を上げた。


「やめろ――」


「うわぁ――、死にたくない!」


 欲望の塊(ウォンタ―)達は、浄化の炎によって次々と燃えていった。それを見ていた他の欲望の塊(ウォンタ―)達は、驚いていた。


「何て力だ!」


「諦めてここを去りなさい」


 智美は声高らかに叫んだ。それを見ていた欲望の塊(ウォンタ―)達は、互いに顔を見合わせた。


「ほう、なかなかやるではないか。私が相手になろう」


 欲望の塊(ウォンタ―)達の間から異形の生物が現れた。


「これが欲望の塊(ウォンタ―)なの?」


 智美は、初めて見るその姿に後ずさりをした。欲望の塊(ウォンタ―)の親玉みたいなのは、手から黒い色の塊を放ってきた。その塊は一直線に智美に向かってきたが、動けなかった。その黒い塊に当たった智美は、黒い渦に呑まれてしまった。



 密は身体の痛みが少し引いてきたため、動けるようになった。


「智美を助けに行こう」


 そう呟き外に出て行くと、そこには欲望の塊(ウォンタ―)の手に落ちた智美がいた。


「この娘はもらった。お前は人間か! ならば用はない。始末してやる」


 そう言うと、手に黒い光を再び集め始めた。密は直感的に危険を察知し、防御の姿勢を取った。欲望の塊(ウォンタ―)の親玉は、それを放ち、密に直撃した。しかし、密には効かなかった。


「何だ? 何にも起こらないぞ!」


「これはお前を動けなくするだろう」


「なんだと……」


 俺はそれを聞くと、次第に動けなくなった感じがした。


「何とかしなければ……」


 そう呟き、考えを巡らせた、


「俺は不死身な以外、普通の人間なんだよ。その女とは関係ないからに逃し

てくれないか? だから助けてくれ」


 俺は相手を騙すために嘘をついてみた。すると、欲望の塊の親玉、またの名を闇夜の鉤爪(ダーククロー)は鼻で笑った。


「はっ、嘘をつくな。同じ小屋から出てきたではないか! 無関係とは言わせないぞ!」


「ばれてしまったか! 仕方ない、本気をだしてやる」


 俺は手から取り出した光輝く剣を取り出した――それは周りから見たら、突然現れたかのように感じただろう。


「いくぜ」


 そういった瞬間、闇夜の鉤爪(ダーククロー)は真っ二つに裂かれていた。


「な……に……」


 闇夜の鉤爪(ダーククロー)はそういうと跡形もなく消えてしまった。周りにいた欲望の塊は、密の力を見て戸惑いを隠せなかった。


「なんて奴だ。俺はあんな奴とは戦いたくない」


 そう言って逃げ出すと、周りにいた奴らも逃げて行った。


「このくらいの悪魔なら楽勝だな」


 俺はそう言って智美に駆け寄った。


「加賀さん、大丈夫か?」


 そう聞くと、智美は意識を取り戻した。


「あなた……、どうやって奴らを?」


 そう智美に聞かれ、俺は答えた。


「俺はさっきの戦いですべてを思い出したんだ。俺には悪魔たちに対抗する力~理性の魂~ を持っているんだ。その力で、今回の欲望の力を倒した」 

俺は、俺が持っている力について説明をし始めた。





~そのころ悪魔side~


「面倒な奴を見つけてしまった」


「奴の光輝く剣……。我らに対抗策はあるのか」


「うろたえるな!」


 悪魔たちの親玉らしき奴らは会議をしていた。


「既に手は打ってある。次の一手でこれで、あの青年を葬り去る」



~密と智美side~


「俺の母親は悪魔だった父親と人里離れた山奥に移り住み、そこで俺を産んだ。母親は欲望の塊(ウォンタ―)を倒すための力を持っていた。しかし、その力と父親の悪魔の力が混ざり合い、俺は不死身の力を身に宿してしまった。10歳頃、人間によって両親が殺されてしまった。俺は何とか生き延びて、20歳で成長が止まった」


 一度そこで話を止めて、智美を見た。


「そんなことがあったんですか! その後は?」


「不死身の力が働いて、これ以上身体は成長しないらしい。そしてこの剣は、父親の形見なんだ」


「さっき使った剣のこと?」


「そう。父は悪魔の中でも良い奴だった。他の悪魔たちに人間を襲うのを止めるように言っていたが、誰も耳を貸してくれなかった。そこで人間が対抗できるように武器を開発して、それを俺が受けついたんだ」


 智美は驚いていた。


「良い悪魔がいるなんて、知らなかった」


「長い年月の間、俺は自身生い立ちすら忘れていた。だから欲望の塊(ウォンタ―)達は光の剣を持っている俺のことを知らなかったのだろう。しかし、今日俺の存在が奴らに知られたしまった。このまま俺と一緒にいたら、加賀さんを危険な目に合わせてしまうかもしれない。だからここでさよならだ!」


 俺は智美に言い放った。すると、智美はすぐさま言い返してきた。


「馬鹿なこと言わないで! もうとっくに巻き込まれているわよ」


 俺は智美の言葉によって我に返った。


「すまなかった。そうだな、もうとっくに巻き込んでしまっていたな。これからは一緒に奴らを撃滅して、平和な世界を目指していこう、加賀さん、いや、智美」


 智美はそれを聞き、うなずいた。


「もちろん、そのつもりよ。私も欲望の塊(ウォンタ―)と戦えるように頑張るわ」


「よし、まず下山して町の人に話を聞きに行こう」


 二人は出発してかなりの時間を歩いた。なかなか町に着かないので、智美に話しかけた。


「なあ、もうすぐ町なのか?」


「うん。この橋を渡ったらすぐよ……、え?」


 智美が指差した先には、煙が上がっていた。


「まさか! 欲望の塊(ウォンタ―)か!」


 俺たちは橋を走って渡った。人が町の入口に倒れていた。


「おい、大丈夫か?」


 俺は倒れていた男性に話しかけた。その男性は虫の息で答えた。


「ま……まだ、生き残りがいたのか! は……早く逃げ……ろ」


 そういうと男性は最後の言葉と共に事切れた。


「許せない。犯人をボッコボッコにしてやる」


 智美は怒りにまかせて走り出した。それに俺は続いた。


 町の中央部に数体の欲望の塊(ウォンタ―)がいた。家の死角から奴らの行動を眺めていた。


「智美、ここにいろ! まずは俺が行く!」


 そう言って、欲望の塊(ウォンタ―)達のところに向かって行った。


「おい、お前達、町を襲うのを止めるんだ!」


 欲望の塊(ウォンタ―)達はそれを聞き、鼻で笑った。


「は! 誰がやめるかよ」


「生き残りは許さん! 全部殺せ!」


 奴らは聞く耳を持たなかった。


「やむを得ないか、俺の本気を見せてやる」


 俺は光の剣を出現させて、斬りかかった。


「グハァ!」


 まず一体。あと何体だ? 振り返ると、やられた村人たちが欲望の塊(ウォンタ―)と化し、智美を包囲していた。


「智美‼」


「大丈夫よ。こんな奴ら、楽勝よ」


 そういうと、智美は欲望の塊(ウォンタ―)を燃やした。


「さすがだな、智美。行くぞ、奴らが待っているぞ!」

 

 ここから二人の戦いは始まった。     完

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