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弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


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エピローグ:外側の記録

・隣国王城

「……またか」

王は書簡を握りつぶした。

内容は単純だ。

“レヴァンティアへの人材流出が止まらない”

「兵が消えています」

「職人が消えています」

「農民すら消えています」

文官の声が震える。

「行き先は全て同じです」

王は吐き捨てるように言う。

「レヴァンティアか」

沈黙。

誰もそれ以上言えない。


・軍の崩壊

兵舎。

空席が目立つ。

「おい、あいつどこ行った」

「辞めたよ」

「辞めたって……戦時中だぞ?」

誰かが笑う。

「戦う理由がない国に行ったらしい」

その言葉で空気が凍る。

戦争より恐ろしい現実だった。


・商人ギルド

別の国の商人たちは、逆に笑っていた。

「レヴァンティア経由の交易だけは外せない」

「価格が読めないのに、必ず儲かる」

「なぜだ?」

「簡単だ」

年配の商人が言う。

「“物が余っている国”だからだ」

「余っている?」

「そうだ。奪っていないのに増えている」

誰も意味を理解できなかった。

だが誰も、それを否定できなかった。


・宗教者の記録

「その国には飢えがない」

「ゆえに祈りもまた、形を変えている」

神殿の司祭は書き残す。

「人々は神に願わない」

「代わりに“仕組み”に感謝している」

そして最後にこう記す。

「これは奇跡ではない」

「設計である」


・商業会議

「価格が合わない」

「レヴァンティア市場を基準にすると全て赤字になる」

帳簿が閉じられる。

「基準が壊れている」

老商人が呟く。

「壊れてるんじゃない」

「“上書きされた”んだ」


・貴族社会

「税が取れない」

「人がいなくなったからです」

「では戻せばいい」

「戻りません」

短い沈黙。

一人の貴族が笑う。

「なら、我々はどうするのだ」

誰も答えない。


・レヴァンティア側

王宮。

アルベルトは報告書を閉じる。

「また流入増加です」

副官が肩をすくめる。

「向こうが崩れてきてますからね」

アルベルトは少しだけ眉をひそめる。

「崩壊を“吸収”している状態か……」


・レオン

高台。

街を見る。

以前と変わらない景色。

だが中身は違う。

「兄上」

アルベルトが来る。

「また人が増えています」

レオンは答える。

「減る理由がないからだ」

アルベルトは少し黙る。

「……このままでは、周辺国が持ちません」

レオンは初めて視線を動かす。

「持たなくていい」

一拍。

「選べばいいだけだ」


・崩れ始める外の国

ある国。

国境。

兵が門を開ける。

「行くな!裏切り者!」

だが止まらない。

列は続く。

家族連れ、職人、兵士、商人。

誰も振り返らない。

「どこへ行く!」

誰かが叫ぶ。

返事は一つだけだった。

「生きられる方へ」


レヴァンティア王都。

戦後の喧騒がようやく落ち着き、城壁の上には穏やかな風が吹いていた。

だが、その静けさは“油断”ではない。

整然と並ぶ投石器群――群が、無言のまま外を向いている。

木と鉄で組まれたそれは、職人と軍が共同で作り上げた“産業兵器”だった。

レオンは最後に一言だけ言う。

「敵が来るなら」

静かに。

「撃つだけだ」

風が一段強くなる。

カタパルトの腕木がわずかに軋む音だけが響いた。

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