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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 19

碧海の交易都市と深淵の秘宝

第17話:帝都の壁と商人の囁き

グリフィン討伐という大手柄を立て、金貨100枚という大金を手にした「ホープ・クローバーズ」。

彼らはいよいよ、帝都アウストラでの拠点確保――マイホーム購入に向けて動き出していた。

しかし、大陸最大の都市の不動産事情は、彼らの想像を遥かに超えていた。

「……うーん。高い。高すぎるよ」

勇太は、大通りにある不動産ギルドの掲示板を見上げ、深くため息をついた。

「このお家、可愛いですけど……金貨300枚!? こっちは400枚!? ゼロが一つ多いです~!」

キャルルが価格表を見て目を回す。

「帝都の中心部は、土地の値段が大陸随一だからね。平民区の小さな一軒家ですら、金貨150枚は下らないわ」

リーシャが冷静に分析する。

「おうよ! なら、グリフィン級のヤツをあと二、三匹狩ればいいじゃねえか!」

イグニスが腕を鳴らすが、勇太は首を振った。

「いや、問題は値段だけじゃないんだ。……僕たちには**『ノマド号』**がある」

勇太の言葉に、三人がハッとする。

全長8メートルを超える巨大装甲トラック。これを路地裏の小さな家に停めることは物理的に不可能だ。

「最低でも、巨大な馬車を停められる『広い前庭』。そして僕のスキルで作業をするための『工房』が必要だ。……となると、貴族街の屋敷クラスを買うしかない」

「でもユウタ、私たちには金貨100枚があるじゃない? 足りないの?」

リーシャが尋ねる。

「全額を家に突っ込むわけにはいかないんだ。これからの生活費や、新しい商品を作るための『事業資金』を残しておかなきゃいけない。……家に払えるのは、せいぜい金貨50枚が限界だ」

金貨50枚で、巨大な庭と工房付きの豪邸。

それは「空から金貨が降ってくる」のを待つような、あり得ない条件だった。

四人が途方に暮れて歩いていると、後ろから陽気な関西弁が飛んできた。

「あら? ユウタはん達ですな! 毎度おおきに!」

振り返ると、ゴルド商会のパリッとした制服を着こなしたニャングルが立っていた。

「やあ、ニャングルさん。休憩中?」

「ええ、まあ。それより皆さん、えらい難しい顔して……ひょっとして、物件探してはるんでっか?」

「まぁな。だが、どこもかしこも高すぎて手が出ねえ。おまけに俺たちの『鉄の馬車』が停められる庭付きとなると絶望的だ」

イグニスがぼやくと、ニャングルは人差し指を立て、チッチッと左右に振った。

「あきまへんなぁ、ユウタはん。帝都でワガママな家を探すのに、表の不動産屋を頼るなんて。……やめときなはれ。餅は餅屋、不動産は商人の『裏情報』ですわ!」

「え?」

「まぁよろしい、ついて来なはれ! VIPルームで極秘の商談と行きまひょか!」

ニャングルは有無を言わさず勇太たちの背中を押し、ゴルド商会の壮麗な本店へと連れて行った。

通されたのは、ふかふかのソファがある豪華な応接室だった。

上等な紅茶を振る舞われながら、ニャングルは凄腕の商人の顔になった。

「それで? 具体的な条件と予算をおさらいしまひょか」

「四人が住める部屋、お風呂。ノマド号が停められる巨大な庭と、作業用の工房。……予算は、金貨50枚だ」

勇太が答えた瞬間、ニャングルの営業スマイルがピシリと固まった。

「……あきまへんなぁ~、ユウタはん。その条件で金貨50枚て。帝都なら、スラム街の犬小屋しか買えまへんで」

「そんな~……」

キャルルががっくりと耳を垂らす。

だが、ニャングルはすぐにニヤリと、三日月のような口の端を吊り上げた。

「……普通なら、ね。せやけど、ユウタはんらとワテの付き合いです。これまで散々儲けさせてもろた恩もある。……ワテの極秘リストから、とっておきの**『特級物件』**を出したろやないですか」

「本当!?」

リーシャが身を乗り出す。

ニャングルは、羊皮紙の図面をテーブルに広げた。

それは、帝都の郊外――美しい森と湖に隣接した、見事な屋敷の間取り図だった。

「場所は帝都の郊外。元々は、ある高位貴族の別荘でした。広大な庭、大理石の風呂、馬車庫ガレージ、使用人用の離れ(工房に最適)。……どうです?」

「すげえ! 完璧じゃねえか!」

イグニスが図面を見て興奮する。

「こ、こんな豪邸が、本当に金貨50枚で買えるんですか……!?」

勇太が疑わしげに尋ねると、ニャングルは意味ありげに人差し指を立てた。

「ええ。ただし、一つだけ……ちぃ~さな問題がありましてな」

「問題?」

「はい。その別荘……**『出る』**んですわ」

「「「……出る?」」」

「ええ。地下室から、タチの悪いアンデッド(不死の魔物)やら悪霊やらが、毎晩ウジャウジャと。前の持ち主の貴族も、それに耐えきれず手放した**『超・事故物件』**ですわ」

ニャングルの言葉に、部屋が水を打ったように静まり返った。

安くて広い物件には、やはり致命的な理由があったのだ。

「どうです? ちょっとした**『害獣駆除』**付きのマイホーム。……グリフィンを狩るホープ・クローバーズの皆様なら、お安い御用ちゃいますか?」

ニャングルの目は、完全に「新しい儲け話」を楽しむ色で輝いていた。

勇太は図面を見つめ、仲間たちと顔を見合わせた。

呪われた貴族の別荘。

だが、そこを制圧できれば、夢の城が手に入る。

「……面白い。その物件、内見させてもらうよ」

勇太がニヤリと笑うと、イグニスが拳を鳴らし、リーシャが杖を弄び、キャルルが気合を入れるように頬を叩いた。

魔物退治こそ、彼らの本業なのだから。

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