EP 18
英雄たちの報酬と新たな階梯
イグニスの雷炎の戦斧がグリフィンの首を断ち切り、森に沈黙が訪れた。
そして数秒後、張り詰めていた空気を破るように、四人の歓喜の雄叫びが響き渡った。
「やった……! やったぞ、みんな!」
勇太がまだ熱を持つグロック20を下ろした瞬間、両サイドから柔らかい衝撃が飛び込んできた。
「ユウタさんっ! すごかったです! あの作戦!」
「本当に……! ヒヤヒヤしたけど、完璧な連携だったわ!」
キャルルとリーシャだ。
興奮と安堵から、二人は勇太の腕に勢いよく抱きついていた。
右からは兎人族の元気な温もりが、左からはエルフの神秘的な甘い香りが押し寄せ、勇太は一瞬で顔を真っ赤にしてフリーズした。
「お、おい、二人とも……! 密着しすぎだってば……!」
「へっへっへ! 俺様の『ボルテックス・ブレイク』も伊達じゃねえってことだ! ま、ユウタの囮とキャルルたちのファインプレーが無けりゃ、どうなってたか分からねえがな!」
イグニスは戦斧を肩に担ぎ、両手に花状態の勇太を見てニヤニヤと笑っている。
「さ、さてと! いつまでもこうしてはいられない! 素材を集めないと!」
勇太は照れ隠しに咳払いをし、慌てて二人から離れた。
グリフィンほどの高位魔獣だ。素材の価値は計り知れない。さらに、グリフィンの下敷きになって絶命したゴールドゴブリンの懐からは、あの「黄金の笛」と、大量の宝石類(盗品)が見つかった。
「すごい量ですね。……でも、これなら!」
キャルルが腰から**『マジック・ポーチ』**を取り出した。
グリフィンの巨大な風切羽、鋭い嘴、そして純度の高い「風の魔石」。それらをポーチの口に近づけると、シュポッ! と音を立てて次々に吸い込まれていく。
「こりゃあスゲェ……! 金貨7枚の元は、今日だけで完全に取れたな」
イグニスが呆れたように笑う。
「ええ。これだけの素材と盗品……ギルドがどんな顔をするか見ものね。さあ、街に帰りましょう」
リーシャが疲労混じりに微笑んだ。
数時間後。
帝都アウストラの冒険者ギルド「ラックギオン」は、再び爆発的な喧騒に包まれていた。
「お、おい……あれ、グリフィンの羽じゃないか!?」
「それに、あの金ピカの毛皮……手配書に載ってた『黄金の小鬼』か!?」
カウンターにドサリと積まれた戦利品の山を見て、受付嬢のフォミナは口をパクパクとさせている。
「ゴ、ゴールドゴブリンだけじゃなく、空の王者グリフィンまで!? し、少々お待ちください! すぐにギルドマスターを……!」
「呼ぶまでもない。見えているぞ」
ギルドの奥から、隻眼のギルドマスター・ガルフが頭を抱えながら現れた。
彼はカウンターの素材を一瞥し、そして勇太たちを見て深い溜息をついた。
「お前ら……。この前ロックサウルスを狩ってきたばかりだろうが。帝都の生態系をぶっ壊す気か?」
「いえ、向こうから襲ってきたので、正当防衛です」
勇太がしれっと答えると、ガルフは「へっ」と口角を上げた。
「……大した新人どもだ。査定結果を伝えるぞ、耳の穴かっぽじってよく聞け」
ガルフが顎でしゃくると、フォミナが上ずった声で羊皮紙を読み上げた。
「ホ、ホープ・クローバーズの皆様! ゴールドゴブリンの討伐、及び被害品の回収。さらに、Aランク魔獣グリフィンの討伐は、Dランクの範疇を遥かに超える特級の功績と認定されました!」
フォミナは大きく息を吸い込んだ。
「よって、パーティランクをDから特進で**『Cランク』**へ昇格! そして、特別報酬および素材の買取額の合計は……金貨100枚となります!!」
「「「ひゃ、ひゃくぅぅっ!?」」」
ギルド中の冒険者がひっくり返った。
金貨100枚。日本円にして約100万円。ルナキャロット村の年間予算を軽く吹き飛ばす大金だ。
「やったぜ! Cランクだ! 金貨100枚だぁっ!!」
「ユウタさん! これで、あれが買えますよ!」
キャルルがぴょんぴょんと跳ねる。
「ええ……! いよいよ現実のものになったわね。私たちの『城』が」
リーシャも、珍しく興奮を隠しきれない様子で拳を握った。
勇太は、ずっしりと重い金貨の袋(マジック・ポーチへ直行)を受け取り、仲間たちの笑顔を見つめた。
ポイントも40,605Pまで貯まっている。
資金も、ポイントも、名声も手に入れた。
「……よし。明日は不動産屋へ直行だ!」
その日の夜。
イージーブロンズ亭の一室では、夜更けまで最高級のエールと豪快な笑い声が響いていた。
帝都での「マイホーム購入」という途方もない夢が、今まさに、彼らの手のひらに収まろうとしていた。
【クエスト完了:黄金の小鬼と空の王者】
【現在所持ポイント: 40,605 P】




