EP 17
黄金の空賊と四葉の逆襲
上空を旋回するグリフィンの背で、ゴールドゴブリンは甲高い笑い声を上げた。
「キシャシャシャ! 地を這う虫ケラどもめ! 高見から見下ろされる気分はどうだぁ!?」
彼は懐から、青白く輝く宝石のような石――『雷鳴石』を鷲掴みにし、眼下へばら撒いた。
使い捨ての高価な攻撃アイテムだ。
バチバチバチッ!!
「うわっ!」
「ぐあああっ!」
無数の雷撃が雨のように降り注ぐ。
イグニスが盾で防ぐが、衝撃が殺しきれない。
リーシャが風の障壁を展開するが、防戦一方だ。
(くそっ……! 金に物を言わせた爆撃か! このままじゃジリ貧だ!)
勇太は歯噛みした。
グリフィンは遥か上空。こちらの攻撃は届かないが、あちらの雷は届く。
引きずり下ろすしかない。
「みんな、聞いてくれ! ……僕が囮になる!」
「勇太さん!? 無茶です!」
キャルルが叫ぶ。
「そうだぜユウタ! あんな高さから狙われたら、避けようがねえぞ!」
「勝算はある。……奴はプライドが高い。『自分より目立つ奴』や『バカにされること』を許せないはずだ」
勇太はボードを操作し、『拡声器(メガホン・サイレン機能付き)』を購入した(50P)。
「リーシャ、イグニス。僕が奴を低空まで引きつけたら、『プラン・シューティングスター』で行く。……キャルル、飛べるかい?」
勇太の作戦を聞き、三人の顔つきが変わった。
キャルルが力強く頷く。
「はい! 任せてください!」
勇太は岩の上に立ち、メガホンのスイッチを入れた。
『ウゥゥゥゥゥゥ―――ッ!!』
サイレン音が森に響き渡る。上空のゴールドゴブリンがギョッとして動きを止めた。
そこへ、勇太が増幅された大声を叩きつける。
『おーい! そこの金ピカの成金野郎ー! 高い所から石ころ投げるしか能がないのかー!?』
『そのグリフィンは立派だけど、乗ってる主人はチキン(臆病者)だな! グリフィンが可哀想だぞー!!』
「なっ……なんだとォォォッ!?」
ゴールドゴブリンの顔が屈辱で真っ赤に染まる。
自慢のペットと、自身の権威をコケにされた怒りが、冷静な判断力を吹き飛ばした。
「黙れ下等生物がぁぁぁっ!! グリフォス! あの生意気な猿を八つ裂きにしろ! 降下だッ!!」
「グオォォォッ!」
挑発に乗った。
グリフィンが翼を畳み、勇太へ向かって一直線に急降下を開始する。
その速度は砲弾並み。だが、それこそが勇太の狙い。
「来たぞ! カウント3、2、1……今だッ!!」
「おうよオオオッ!!」
イグニスが前に出て、大盾を空へ向けて構える。
キャルルが全速力で助走し、イグニスの盾へと飛び込んだ。
「飛べぇぇぇッ! キャルルゥッ!!」
イグニスが渾身の力で盾を跳ね上げる。
同時に、後方のリーシャが杖を突き出した。
「追い風よ、彼女に翼を! 『ウィンド・ブースト』!!」
イグニスの剛腕による射出。
リーシャの暴風による加速。
二つの力を受け、キャルルは銀色の弾丸となって空へ射出された。
「いっけええええええっ!!」
グリフィンとキャルル。
二つの影が空中で交錯する刹那。
キャルルは空中で身を捻り、全闘気を右足に集中させた。
「月影流奥義・三日月蹴り(クレセント・ムーン)!!」
銀色の弧を描く蹴りが、グリフィンの顔面――いや、その背に乗るゴールドゴブリンを直撃した!
「ブベラッ!?」
ゴブリンがボールのように吹き飛ぶ。
操縦者を失い、さらに強烈な衝撃を受けたグリフィンは、バランスを崩してきりもみ状態で墜落した。
ズドォォォォンッ!!!
地面に激突し、土煙が舞う。
グリフィンはピクリとも動かないゴブリンの下敷きになり、もがいている。
「トドメだ、イグニス!」
「任せなッ!!」
イグニスが走る。リーシャが最後の魔力を振り絞る。
「雷よ、戦斧に宿れ! 『サンダー・エンチャント』!」
バチバチバチッ!
イグニスの戦斧に蒼い雷光が纏わりつく。
さらにイグニス自身の「火炎」が混ざり合い、斧は雷と炎の二重属性を帯びた。
「これで……終わりだァァァッ!! 『ボルテックス・ブレイク』ッッ!!」
イグニスが跳躍し、グリフィンの首めがけて、必殺の斧を叩き込んだ。
ザシュッッ!!!
雷鳴のような轟音。
硬い鱗も筋肉も関係ない。圧倒的な破壊力が、魔獣の首を両断した。
グリフィンの巨体が崩れ落ち、完全に沈黙する。
少し離れた場所では、ゴールドゴブリンもキャルルの一撃で既に気絶(あるいは絶命)していた。
森に静寂が戻る。
「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」
四人は武器を掲げ、勝利の雄叫びを上げた。
空からの脅威、狡猾な罠、格上の魔獣。
全てをチームワークと知恵でねじ伏せた、完全なる勝利だった。
【ピンポンパンポーン♪】
【強敵討伐:空の王者グリフィンを撃破! 12,000 P】
【討伐:ゴールドゴブリン(変異種)を撃破! 5,000 P】
【合計 17,000 P 加算。現在 40,605 P です】
勇太の視界に、見たことのない桁のポイントが輝いていた。
これでマイホームへの道が、一気に開けたのだ。




