EP 15
黄金の悪知恵と奇策のボーリング
帝都南東、囁きの森。
「ホープ・クローバーズ」の四人は、昼間でも薄暗い森の中を進んでいた。
足元は湿った落ち葉に覆われ、どこからか獣の腐臭が漂う。
「……間違いねえ。この先に奴らの巣がある」
先頭のイグニスが鼻をひくつかせ、足を止めた。
「待ってください。……ここから先、地面の様子がおかしいです」
キャルルが耳を伏せ、注意深く足元を見る。
一見ただの落ち葉だが、その下にワイヤーが張られていたり、不自然に土が盛られていたりする。
「フォミナさんの話通りだな。……『ゴールドゴブリン』は知能が高い。ここは奴の狩り場だ」
勇太がゴーグル越しに熱源を確認するが、敵の姿はない。完全に潜伏している。
(正攻法で突っ込めば、罠にかかるか、伏兵に囲まれる……)
相手は狡猾な知能犯。ならば、それを上回る「予想外の手段」で虚を突くしかない。
勇太の脳裏に、あるアイテムが閃いた。
(罠だらけの狭い一本道。そして、緩やかな下り坂……)
「みんな、少し下がってて。……ちょっとした『ゲーム』を始めるよ」
勇太はボードを操作し、ある物を召喚した。
黒光りする硬質な球体。三つの穴が開いた、重量15ポンド(約6.8kg)の**『ボウリングの玉』**だ。(3個で90P)
「ユウタさん、それは……? 黒い石ですか?」
「漬物石にしちゃあ丸すぎるな」
「これは『ボウリングの玉』。……見ててよ、これが最高の罠解除ツールになるから」
勇太はニヤリと笑い、一番重い玉を抱えた。
狙うは、獣道の中心。そこにある木の根元に、微かなワイヤーが見える。
「行くぞ! ストライク狙いだ!」
勇太は独特のフォームで(異世界人には奇妙な踊りに見えただろう)玉を投げ、地面を滑らせた。
ゴロゴロゴロゴロ……!!
完璧な真球体は、加速しながら坂道を転がり落ちていく。
そして、最初のワイヤーに触れた。
ガシャンッ!
仕掛けが作動し、落とし穴の蓋がパカンと開く。
だが、ボウリング玉はその勢いのまま、穴を飛び越えていく。
バチンッ!
次の罠、跳ね上げ式の丸太が作動。
しかし、硬度90以上のウレタン樹脂製ボールは傷一つつかず、丸太を弾き飛ばして直進する。
ドサッ! ガラガラガラ!
網が落ち、石が降ってくるが、全て空振り。玉は止まらない。
「「「ギギッ!? ギャアアア!?」」」
自分の仕掛けた罠が次々と暴発し、隠れていたゴブリンたちがパニックになって飛び出してきた。
その数、約20体。
「今だ! リーシャ、お願い!」
「ええ、任せて! 輝きよ、敵の目を焼いて! 『フラッシュ・アロー』!」
リーシャが放った光の矢が、空中で炸裂した。
カッ!!!
強烈な閃光が森を照らし、夜目の利くゴブリンたちの網膜を焼く。
「ギャアアアアアッ!!」
視界を奪われ、完全に統率を失った群れ。
そこへ、無慈悲な銃声が響いた。
プシュッ、プシュッ、プシュッ!(サプレッサー装着済み)
勇太のグロック20が火を噴く。
10mm弾が、混乱するゴブリンの頭部を次々と撃ち抜いていく。
「オラオラァ! 寝てる場合じゃねえぞ!」
イグニスが戦斧を振り回し、まとめて吹き飛ばす。
「隙ありですっ!」
キャルルが残党の首をトンファーで刈り取る。
ものの数分で、雑魚ゴブリンは全滅した。
「……ふぅ。作戦成功だな」
勇太が残心し、マガジンを交換する。
その時。
手下たちが全滅した森の奥から、ひときわ甲高い、怒りに満ちた叫び声が響いた。
「キシャアアアアアアアッ!!」
木々の間から、一体のゴブリンが姿を現した。
他の個体より小柄だが、その体毛は黄金色に輝いている。
そして何より異様なのは、その装備だ。
首には何重もの「金のネックレス」、指には「宝石の指輪」、腰には「高級な短剣」をジャラジャラと身につけている。
あれが、**『ゴールドゴブリン(強欲の小鬼)』**だ。
その目は、自分の完璧な罠を台無しにされた屈辱と、部下を皆殺しにされた怒りで血走っている。
「ほら、お出ましだ。……盗品コレクションを自慢しに来たのかな?」
勇太が銃口を向けると、ゴールドゴブリンはニタリと笑い、懐から「ある物」を取り出した。
それは、キラキラと光るガラス瓶――**『爆発ポーション』**だった。
「ッ!? 全員、伏せろッ!!」
勇太の警告と同時に、ゴールドゴブリンが瓶を投げつけた。




