EP 14
黄金の小鬼と新たな挑戦
帝都アウストラでの生活にも慣れ始めた頃。
勇太たち「ホープ・クローバーズ」は、とある「壁」にぶち当たっていた。
「……高い。高すぎるよ、帝都の土地」
宿屋の食堂で、勇太は「帝都不動産情報誌(羊皮紙の束)」を広げて頭を抱えていた。
希望条件である「広めの工房兼ガレージ付き一戸建て」。
その相場は、最低でも金貨300枚。
ロックサウルス討伐で得た金貨50枚など、頭金にしかならない金額だ。
「うへぇ……。家を買うのって大変なんですね」
キャルルが金額を見て目を回す。
「ケッ、ちまちま貯めてたら爺さんになっちまうぞ。一発デカイのを当てるしかねえ!」
イグニスがパンをかじりながら吠える。
「そうね。Dランクになったことだし、割の良い仕事を探しましょう」
リーシャの提案で、四人は冒険者ギルド「ラックギオン」へと向かった。
掲示板には、Dランク向けの依頼がずらりと並んでいる。
『オークの集落討伐:金貨3枚』
『ワイバーンの卵採取:金貨5枚』
どれも悪くないが、家を買うには程遠い。
「もっとこう……ガツンと稼げるヤツはねえのか?」
イグニスが唸っていると、勇太の目が一枚の奇妙な依頼書に釘付けになった。
【緊急討伐:黄金の小鬼】
【場所:帝都南東、囁きの森・廃坑エリア】
【報酬:金貨20枚 + 剥ぎ取り素材の所有権】
「金貨20枚!? たかがゴブリン一匹に?」
勇太の声に、三人が集まる。
通常のゴブリン討伐は、群れを全滅させても銀貨数枚だ。桁が二つ違う。
「黄金……。突然変異種かしら? それにしても破格だわ」
リーシャが怪しむ。
勇太たちは、受付カウンターへ向かった。
そこにはいつもの狐耳受付嬢、フォミナがいた。
「フォミナさん。この『黄金の小鬼』って依頼、詳しく教えてもらえる?」
フォミナは依頼書を見ると、困ったように狐耳を伏せた。
「ああ、それですか……。実はこのゴブリン、ただの魔物じゃないんです」
彼女の説明によると、ターゲットは『強欲のゴブリン(グリード・ゴブリン)』の変異種。
光り輝くものを異常に好み、商人や冒険者を襲っては、金貨や宝石、マジックアイテムだけを奪って逃げるという。
戦闘力はそこまで高くないが、致命的に「逃げ足が速く、罠を使いこなす」らしい。
「被害総額は計り知れません。奪われた宝石類を取り戻すためにも、ギルドは高額の懸賞金を掛けたんです。……今までCランクのパーティーも挑みましたが、全員、森の罠にハメられて逃げられています」
「なるほど……。知能が高いタイプか」
勇太が顎に手を当てる。
「へっ! 要は、そいつを倒せば懸賞金に加えて、そいつが溜め込んだ『お宝』も手に入るってことだろ!?」
イグニスの目が、ゴブリン以上に強欲に輝いた。
「そういうことになりますね。巣穴には、盗品が山のようにあるとか……」
「決まりだ! やるぞユウタ! 家の頭金、そいつで稼ぐぞ!」
イグニスが鼻息荒く戦斧を叩く。
「もう、イグニスさんったら……。でも、罠を使うなんて卑怯なゴブリンですね」
キャルルが頬を膨らませる。
勇太は少し考え込み、そしてニヤリと笑った。
「罠か……。面白そうだね」
「勇太? 何か策があるの?」
リーシャが尋ねる。
「ああ。向こうが知恵比べを挑んでくるなら、こっちは『科学の罠』で対抗しよう。……逃げ足が速いなら、逃げられないようにすればいいだけさ」
勇太の脳裏には、既に「地球ショッピング」の商品リストが浮かんでいた。
『赤外線センサー』『トレイルカメラ』『強力粘着シート』、そして『閃光弾』。
異世界のゴブリンが体験したことのない、ハイテク・ハンティングだ。
「受けます。ホープ・クローバーズが、その泥棒ゴブリンを捕まえます」
「分かりました! では受理しますね」
フォミナが判子を押す。
「場所は廃坑です。足場が悪いので気をつけてください。……あと、そのゴブリン、光るものを見ると見境なく襲ってくるそうです。装備品の管理にはご注意を」
「光るもの、か……」
勇太は自分の「腕時計」や、リーシャの「髪飾り」を確認した。
「よし、行こうか! ノマド号を出して、南東の森へ!」
「「「おーっ!!」」」
こうして、マイホーム資金を懸けた「対ゴールドゴブリン戦」が始まった。
だが彼らはまだ知らない。
そのゴブリンが、単に物を盗むだけでなく、とんでもなく「性悪な罠」を仕掛けてくることを。




