EP 11
英雄の証と祝杯の夜
夕暮れ時の冒険者ギルド「ラックギオン」。
仕事終わりの荒くれ者たちで賑わうホールに、奇妙な音が響いた。
ガラガラガラガラ……
「ん? なんだあの音は?」
「台車か? 見ない形だな……」
扉が開き、勇太たちが入ってきた。
彼らが引いているのは、極太タイヤを履いた**『アウトドア用キャリーワゴン』**二台だ。
その荷台には、布からはみ出すほどの巨大な「角」と、岩のような「甲羅」が積まれている。
「おい……まさかアレ……」
「**『岩撃竜』**の角じゃねえか!?」
「バカ言え! Eランクの坊主どもだぞ!?」
ざわめきが波紋のように広がる中、勇太たちは涼しい顔で受付へ直行した。
「ただいま戻りました。報告をお願いします」
「は、はい……お疲れ様で……ひぃっ!?」
受付嬢フォミナが、カウンターに置かれた「巨大な角」と、ワゴンの中身を見て悲鳴を上げた。
「ロ、ロックサウルス!? ゴブリン討伐じゃなかったんですか!?」
「森で遭遇しまして。……ついでに狩ってきました」
「つ、ついでぇ!?」
フォミナの狐耳が逆立つ。
その騒ぎを聞きつけ、ギルドの奥から鋭い眼光の男が現れた。
隻眼の古強者、ギルドマスターのガルフだ。
「騒がしいぞフォミナ。……ほう?」
ガルフはワゴンの中の素材を手に取り、まじまじと観察した。
「……信じられん。外傷がほとんどない。装甲の継ぎ目も無傷だ。……どうやって殺した?」
「口の中に爆……強力な魔法を撃ち込みまして」
勇太が答えると、ガルフはニヤリと笑った。
「内部破壊か。……肝が据わった野郎だ。こいつの皮は加工が難しくてな、こうして綺麗に剥がれているのは国宝級だぞ」
ガルフの一言で、周囲の冒険者たちは絶句した。
まぐれではない。計算ずくの完勝だ。
Eランクの新人たちは、一夜にして「注目の的」へと変わった。
査定の結果が出たのは一時間後だった。
「では、発表します!」
フォミナが紅潮した顔で声を張り上げる。
「ゴブリン討伐報酬に加え、Aランク魔獣ロックサウルスの討伐報酬、および素材買取査定額……合わせて、金貨50枚です!!」
「ご、ごじゅう……!?」
勇太の手が震える。日本円にして数百万クラスの大金だ。
「さらに! ギルドマスターの特例承認により、パーティランクをEから**『Dランク』**へ特別昇格とします!」
「「「うおおおおおおっ!!」」」
ギルド中から歓声と拍手が巻き起こった。
イグニスがガッツポーズをし、キャルルが勇太に抱きつく。
リーシャも、誇らしげに銀髪を揺らした。
その夜。
勇太たちは、フォミナに教えてもらった港のレストラン『海猫のテラス』で祝杯を挙げていた。
潮風が心地よいテラス席。テーブルには、帝都の海の幸をふんだんに使った豪華な料理が並ぶ。
「カンパーイ!!」
「ぷはーっ! 高いエールは染みるぜぇ!」
イグニスがジョッキを空ける。
「ん~っ! この『アクアパッツァ』、お魚がふわふわです!」
キャルルが頬を緩ませる。
「フフ、まさか初日でこんな大金持ちになるなんてね。……貴方といると、退屈する暇がないわ」
リーシャがワイングラスを揺らし、悪戯っぽく勇太を見つめる。
勇太もまた、充実感に浸っていた。
ポイントは31,605Pに増加。懐には金貨の山。
そして何より、頼れる仲間たちとの絆。
「次はどうする? Dランクなら、もっと面白い依頼が受けられるぞ」
イグニスが肉を齧りながら尋ねる。
「そうだな……。せっかく帝都に来たんだ。遺跡の探索とか、未知のテクノロジーを探すのもいいかもな」
勇太が夜空を見上げた時、ふと視界の端に――黒いローブを纏った一団が、路地裏へと消えていくのが見えた。
その背中に、奇妙な**「蛇の紋章」**があった気がした。
(……なんだ? 今の)
一瞬の胸騒ぎ。だが、今は勝利の美酒に酔う時だ。
勇太は仲間たちの笑顔に向き直り、グラスを掲げた。
「さあ、食べよう! 明日からも、僕たちの冒険だ!」
帝都の夜は、彼らの笑い声と共に更けていく。
だが、その影で、深淵なる闇が静かに動き出そうとしていた。
【クエスト完了:最初の依頼とランク昇格】
【名声ボーナス: 1000 P 加算】




