EP 10
戦利品と勝利の味
硝煙と土煙が晴れていく。
そこには、内側から弾け飛び、沈黙した魔獣ロックサウルスの残骸が横たわっていた。
「……終わったな」
勇太が呟くと、イグニスが巨大な肉塊を見下ろして口笛を吹いた。
「へっ、派手に吹き飛んだもんだ。こりゃあ素材の回収は無理か……と思ったが」
イグニスが足元に転がっていた「岩の装甲版」を拾い上げる。
「おい見ろよ! 中身が爆発したおかげで、一番硬い外側の皮が、綺麗に剥がれてやがる!」
「本当だわ……。普通なら解体するだけで数日かかるミスリル級の硬度よ。それが、まるで茹で卵の殻みたいに……」
リーシャが感嘆の声を上げる。
内部破壊による撃破は、結果として「素材を傷つけずに剥離させる」という最高の解体方法になっていたのだ。
「よし、回収だ! ギルドに持っていけば、とんでもない額になるぞ!」
勇太はボードを操作し、『大型サバイバルナイフ』と『厚手の革手袋』、そして**『業務用土嚢袋』**を購入した(計50P)。
四人は手分けして作業を開始した。
イグニスは戦斧を使って巨大な角と爪を。
リーシャは魔法で切断しつつ、良質な装甲版を。
そしてキャルルは、焼け焦げた胸部の肉をかき分け、何かを見つけた。
「あ! ユウタさん! なんかキラキラしてて温かい石があります!」
彼女が取り出したのは、赤褐色に脈動する拳大の結晶だった。
「これは……『大地の心臓』!?」
リーシャが息を呑む。
「ロックサウルスの生命力の源よ。これ一つで、城壁の結界を百年維持できるほどのエネルギーがあるわ!」
「すげぇ……。大当たりじゃねえか」
勇太はその重みを感じながら、大切に袋にしまった。これがあれば、ノマド号の動力強化にも使えるかもしれない。
一時間後。
そこには、山のような素材の袋が積み上がっていた。
「ふぅ……。大漁だけど、腹減ったなぁ」
イグニスが腹の虫を盛大に鳴らす。
「そうですね。緊張が解けたら、急にお腹が……」
キャルルもぺたんとお尻をついた。
「よし、じゃあここで昼飯にしよう。……手軽だけど、とびきり美味いヤツを出すよ」
勇太はニヤリと笑い、**『具だくさんグルメサンドイッチ・バラエティパック』と、『冷えたフルーツジュース』**を取り出した(計300P)。
コンビニのものではない。デパ地下で売っているような、断面が美しい高級サンドイッチだ。
「うわぁ! パンに宝石が挟まってるみたいです!」
キャルルがフルーツサンド(イチゴと生クリーム)を見て歓声を上げる。
「こっちは肉厚だな! 甘辛いタレの匂いがしやがる!」
イグニスは照り焼きチキンサンドに釘付けだ。
「いただきます!」
四人は森の木陰に座り、戦勝祝いのランチを始めた。
「んん~っ! 甘酸っぱくて、クリームがふわふわですぅ!」
キャルルが口元にクリームをつけながら微笑む。
「うめぇッ! この鶏肉、炭火で焼いたみたいに香ばしいぜ! パンとの相性も抜群だ!」
イグニスが瞬く間に二つ目を平らげる。
「私はこの野菜とハムのサンドね。……シャキシャキした歯ごたえと、パンの柔らかさ。シンプルだけど奥深いわ」
リーシャも優雅に紅茶を飲みながら、舌鼓を打つ。
勇太もカツサンドを頬張った。
命のやり取りをした後の食事は、なぜこれほどまでに美味いのか。
仲間たちの笑顔が、何よりの調味料だった。
「ごちそうさん! ……さて、帰るとするか」
イグニスが立ち上がり、山積みの素材袋を見て頭をかいた。
「問題は、これをどうやって街まで運ぶかだが……。俺が担いでもいいが、流石に全部は無理だぞ?」
「任せてくれ。文明の利器がある」
勇太はボードを操作し、**『アウトドア用キャリーワゴン(極太タイヤ仕様)』**を二台召喚した(計200P)。
折りたたみ式だが、広げれば100kg以上の荷物を運べる優れものだ。
「なんだこの箱車は? タイヤが太いな!」
「これなら悪路でもスイスイ運べるよ。さあ、積み込んで!」
素材を満載したワゴンを、イグニスと勇太が引く。
キャルルとリーシャが護衛につく。
「すごい! 軽々と運べます!」
「本当に、あなたの道具には驚かされてばかりね」
一行は意気揚々と森を抜けた。
Eランクのゴブリン退治に行ったはずの新人たちが、Aランク魔獣の素材を山ほど抱えて帰ってくる。
ギルドがどんな大騒ぎになるか、勇太たちはまだ知らない。
「急ごう。……ギルドのみんな、腰を抜かすかもな」
勇太たちは顔を見合わせて笑うと、夕暮れの帝都へ向かって足早に歩き出した。




