EP 9
碧海の交易都市と深淵の秘宝
第8話:決死の連携と爆砕の一撃
絶対零度の氷ブレスを浴び、イグニスとキャルルの動きが鈍る。
ロックサウルスは勝利を確信したかのように、再び突進の構えを取った。
だが、竜人の闘志は凍りついてはいなかった。
「こんの……クソトカゲがぁっ!!」
イグニスは吠えた。凍りついた大盾をかなぐり捨て、残る全気力を戦斧に注ぎ込む。
赤黒い「竜気」がオーラとなって斧身を包み込んだ。
「いい加減、くたばりやがれ! 『竜気断頭斬』!!」
渾身の一撃。狙うは、先ほどの連携で熱衝撃を受け、装甲が脆くなっていた首の付け根!
ズドォォォンッ!!
岩の皮膚が砕け、戦斧の刃が深々と肉に食い込んだ。
「グゴアアアアアッ!?」
ロックサウルスが苦悶の叫びを上げる。致命傷ではないが、動きが止まった。
(……今だ! あの斧が刺さってるなら!)
勇太は好機を見出した。
「リーシャ! あの斧目掛けて最大火力の雷魔法を撃て!」
「えっ? 斧に……?」
「金属は電気を通しやすい! あの斧が避雷針になって、雷を体内に誘導するんだ! 急げ!」
「わ、分かったわ! ……イグニス、離れてッ!」
リーシャが杖を掲げ、魔力を収束させる。
イグニスが斧から手を離し、バックステップで退避した瞬間。
「穿て、雷神の槍! 『サンダー・スピア』!!」
杖先から放たれた蒼い雷撃が、一条の光となってイグニスの戦斧に直撃した。
バリバリバリバリィッ!!!
膨大な電流が金属製の斧を伝い、ロックサウルスの体内へと駆け巡る!
「グギュルルルルアアアアアアアッッ!!!」
ロックサウルスは、これまでにない激痛に白目を剥き、全身を痙攣させた。
麻痺して動けない。口が大きく開いたままだ。
「トドメだッ!!」
勇太は走り出した。懐から取り出したのは、『M67破片手榴弾』。
安全ピンを引き抜き、レバーを弾く。起爆まで4秒。
(頼む、入ってくれ!)
大きく振りかぶって投擲する。狙うは、開いた口腔内!
だが、焦りからか、手榴弾はわずかに軌道を逸れ、下顎の岩肌に当たって弾かれた!
「しまっ……!」
「あっ!」
万事休すかと思われた、その時。
銀色の影が、誰よりも早く反応した。
「させませんっ!」
キャルルだ。氷ブレスの影響で足が痺れているはずなのに、彼女は驚異的なバネで飛び出した。
地面すれすれで手榴弾を拾い上げ、そのままトンファーで打ち上げる!
カィィンッ!
美しい放物線を描き、手榴弾は吸い込まれるようにロックサウルスの喉の奥へと消えた。
「なっ……!?」
「すげぇ……!」
神業のようなアシストに、勇太とイグニスが息を呑む。
ロックサウルスは異物を飲み込み、ごくりと喉を鳴らした。
一瞬の静寂。
そして――。
ドォォォォォォンッッ!!!
ロックサウルスの腹部が内側から膨れ上がり、閃光と共に破裂した。
最強の硬度を誇る岩の装甲も、体内からの爆発には耐えられない。
肉片と岩塊が四方八方へ飛び散り、硝煙が立ち込める。
やがて煙が晴れると、そこには頭部と下半身だけになった巨獣の残骸が転がっていた。
【ピンポンパンポーン♪】
【強敵指定個体:岩撃竜を討伐しました!】
【Eランク依頼の規格外達成ボーナス: 8000 P 加算!】
【現在所持ポイント: 23605 P】
電子音と共に、勝利のファンファーレが鳴り響いた。
「やった……! 倒したぞ!」
勇太はその場に膝をついた。安堵と疲労が一気に押し寄せてくる。
「やったー! やりましたね、ユウタさん! 私のトス、完璧でしたよね!?」
キャルルが満面の笑みで飛びついてくる。
「へっ……ざまあみやがれだ、クソトカゲ。俺様の斧の切れ味、思い知ったか!」
イグニスも大の字になって笑う。
「……本当に、とんでもない初仕事だったわね」
リーシャも杖をついて座り込み、深く息を吐いた。
Eランクのゴブリン退治が、まさかAランク魔獣との死闘になるとは。
だが、彼らは勝った。
科学と魔法、そして筋肉と技の連携で、格上の敵を打ち破ったのだ。
四人は顔を見合わせ、泥だらけの顔で笑い合った。
帝都での冒険者生活は、これ以上ないほど派手なスタートを切った。




