EP 8
岩肌の巨獣と氷炎の死闘
「グルルルォォォォッ!!」
魔獣ロックサウルスが、地響きを立てて突進してくる。その質量は、走る小山そのものだ。
「させっかよぉッ!!」
イグニスが吠えた。大盾を構え、真正面から激突する。
ドォォォンッ!!
凄まじい衝撃音が森に響く。イグニスの足が地面にめり込み、全身の筋肉が悲鳴を上げる。
「ぐぐぐ……ッ! 馬鹿力が……! だがなぁ、根性比べなら負けねえぞオオオッ!」
竜人の怪力が爆発した。イグニスは突進の勢いを利用し、大盾を斜めに突き上げてロックサウルスの重心を崩した。
巨体がバランスを失い、横倒しになる。
「ナイスです、イグニスさん!」
その隙を逃さず、銀色の影が舞った。キャルルだ。
彼女は倒れた巨獣の懐――岩の装甲が薄い関節部分に狙いを定めた。
「月影流・穿孔脚!」
闘気を纏った鋭い蹴りが、膝関節に突き刺さる。
ボキィッ! と鈍い音が響き、ロックサウルスの動きが止まった。
「今よ! 灼熱の嵐、敵を焼き尽くせ! 『フレイム・サイクロン』!!」
リーシャの杖から、紅蓮の炎の渦が解き放たれた。
超高温の炎が倒れた巨体を包み込み、森の空気が一瞬で乾燥するほどの熱波が広がる。
(……どうだ!?)
勇太は熱源探知ゴーグル(サーモグラフィー)越しに戦況を見守っていた。
完璧な連携だ。だが、ゴーグルに映る敵の体温上昇が、予想よりも遅い。
(……効きが悪い? そうか、あの岩の皮膚が『断熱材』になって、熱が内部に伝わっていないんだ!)
「……まだだ! みんな、離れろ! そいつはまだピンピンしてるぞ!」
勇太が叫んだ次の瞬間。
炎の渦が内側から弾け飛んだ。
「グオオオオオオオオッ!!」
黒焦げになりながらも、ロックサウルスは立ち上がっていた。
その岩肌は赤熱し、ところどころ溶岩のようにドロドロに溶けている。
だが、その瞳は憎悪に燃え、口元から白い冷気が漏れ出していた。
「なっ……!? 炎の次は、氷だと!?」
イグニスが驚愕する。
(違う……! あれは魔法じゃない!)
勇太は直感した。
あれだけの巨体だ。体温調整のために、強力な**「冷却器官」**を持っているはず。
リーシャの炎でオーバーヒートした体を冷やすため、体内の冷却液(おそらく液体窒素に近い極低温物質)を緊急放出したのだ!
ブシュゥゥゥゥゥンッ!!!
ロックサウルスの口から、絶対零度に近い冷気が噴射された。
周囲の空気が一瞬で凍りつき、ダイヤモンドダストが舞う。
「くっ……!」
「きゃあっ、さ、寒いです……!」
イグニスとキャルルが、盾や腕で顔を覆う。
直撃は避けたが、あまりの冷気に体の動きが鈍る。盾の表面が瞬く間に凍結し、ピキピキと音を立てた。
「なんてデタラメな……! 炎も氷も効かないなんて!」
リーシャが唇を噛む。
絶望的な空気が流れる中、勇太だけは冷静にゴーグルを見ていた。
赤熱していた岩肌が、冷気を浴びて急速に青く冷えていく。
(……急激な加熱、そして急激な冷却)
勇太の脳裏に、ある科学現象が閃いた。
どんなに硬い物質でも、急激な温度変化には耐えられない。
**『熱衝撃』**だ。
「……勝機はある」
勇太はニヤリと笑い、懐から**「とっておきの切り札」を取り出した。
それは、ヒュドラ戦で使ったC4爆薬とは違う、「貫通力」**に特化した現代兵器だった。
「みんな、あと少しだけ持ちこたえてくれ! ……僕がこいつの装甲をブチ抜く!」




