表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/72

EP 38

知的好奇心と乙女たちの成長

勇太が開いた「青空教室」は、子供たちだけでなく、パーティメンバーにも劇的な化学反応ケミストリーをもたらした。

夜、集会所の一角。

ランプの灯りの下で、リーシャは勇太が取り寄せた『図解・化学の基礎』と『天体写真集』を、食い入るように見つめていた。

「……信じられない。炎が燃えるには『酸素』が必要で、その酸素はこの空気中に2割しか含まれていない……?」

リーシャが顔を上げ、勇太に問いかける。

「ユウタ。もし、風魔法で空気中の『酸素』だけを集めて、そこに火種を投じたら……どうなるの?」

「理論上は、燃焼効率が劇的に上がって、温度が高くなるはずだよ。赤い炎じゃなくて、青い炎になるくらいに」

「青い……炎……」

リーシャは庭へ飛び出すと、早速実験を始めた。

いつもの『ファイア・ボール』ではない。まず風魔法で周囲の空気を選別・圧縮し、中心に濃密な酸素の渦を作る。そこへ着火。

ボッ!! シュゴオオオオオッ!!

「きゃっ!?」

爆音と共に生まれたのは、いつもの赤い火球ではなかった。

中心が透き通るような蒼色に輝く、超高温のプラズマごとき炎。

それが一瞬で薪を炭化させ、白い灰にしてしまった。

「すごい……! 魔力消費は同じなのに、威力が倍以上だわ! これが『科学』のことわりなのね!」

リーシャは興奮で頬を紅潮させた。

「感覚」で操っていた魔法に、「理屈」という骨組みが通った瞬間だった。彼女はもはや、ただのエルフの魔法使いではない。**「魔導科学者マジック・サイエンティスト」**への第一歩を踏み出したのだ。

一方、キャルルもまた、別の種類の興奮に包まれていた。

彼女が読んでいるのは『実戦格闘術・解剖学図譜』。

骨格や筋肉の付き方、神経の通り道が詳細に描かれた専門書だ。

「ユウタさん! 人間のあごって、こんなに弱い力で揺らせるんですね!」

キャルルは自分の顎を触りながら、目を輝かせた。

「これまでは『強く叩く』ことばかり考えてました。でも、この『テコの原理』を使えば……」

翌日の組手。

ラトル相手に、キャルルは不思議な動きを見せた。

ラトルの豪腕を真正面から受け止めるのではなく、関節の可動域ギリギリを指先で押し、体勢を崩す。そして、無防備になった顎の先端を、トンファーで軽くかすめるように打った。

「ぬおっ!?」

ラトルが膝から崩れ落ちた。脳が揺れ、三半規管が麻痺したのだ。

「すごい……! ほとんど力を使ってないのに!」

「キャルル、今の動き、達人級だったよ!」

勇太が拍手すると、キャルルはピョンピョン跳ねて喜んだ。

解剖学を知ることで、彼女の月影流は**「破壊する武術」から「制圧する武術」**へと洗練されつつあった。

二人のあまりの急成長ぶりに、勇太は頼もしさと共に、心地よい責任感を感じていた。

自分の知識が、この世界で彼女たちの翼になっている。

そんなある日の昼下がり。

二人の訓練を眺めていた勇太の背後に、巨大な影が差した。

「……おい、ユウタ」

振り返ると、イグニスが腕を組んで立っていた。

いつもの不遜な態度はどこへやら、少しモジモジしている。

「あー、なんだ。……ズルくねえか?」

「え?」

「リーシャもキャルルも、お前の本のおかげで強くなってやがる。……俺様にもなんかねえのかよ。その、最強になれる本とかよぉ」

どうやら、仲間はずれにされて拗ねていたらしい。

勇太は苦笑しつつ、ボードを展開した。

(斧の使い方の本もいいけど……イグニスにはもっと根本的なものがいいかもな)

「分かった。イグニスには、とっておきの『バイブル』をやるよ」

勇太が選んだのは、ボディビルダー向けの**『解剖学的筋力トレーニング論 ~最強のバルクアップと栄養学~』**というガチムチな表紙の本だった。

「なんだこりゃ? 裸の男が笑ってる絵だが……」

「筋肉を効率よくデカくする方法と、そのために必要な『食事』のことが書いてあるんだ」

「なにっ!? 食事だと!?」

イグニスの目の色が変わった。

「『タンパク質』……『超回復』……!? なんてこった、俺様は今まで無駄な努力をしていたのか!? 肉を食うタイミングにも『ゴールデンタイム』があるだとぉぉ!?」

イグニスは本をひったくると、岩陰に座り込んで熟読し始めた。

時折、「プロテイン……鶏のササミ……なるほど!」と唸り声を上げている。

彼が「科学的トレーニング」と「栄養管理」を身につけた時、その怪力はさらに手がつけられないものになるだろう。

三者三様の進化。

ルナキャロット村での穏やかな日々は、来たるべき冒険に向けて、彼らの牙と爪を静かに、しかし確実に研ぎ澄ませていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ