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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 37

青空教室とへっぽこ不良

「囁きの森」の異変が解決し、村に本当の平和が戻ったある日の午後。

広場の木陰で、兎人の子供たちが木の実を並べて首を傾げていた。

「いーち、にー、さーん……あれ? どっちが多いんだっけ?」

それを見ていた勇太は、ふと思いついた。

(この村の識字率や計算能力は、まだ低い。……僕が去った後、ニャングルさんとの取引で彼らが損をしないためにも、基礎教育が必要だ)

勇太はすぐにボードを展開した。

今回は武器でも薬でもない。未来を作るための投資だ。

【購入完了:小学校低学年用・算数セット(教科書・ノート・鉛筆)×20】

【購入完了:折りたたみ式ホワイトボード&マーカーセット】

【購入完了:大きな三角定規と分度器(先生用)】

翌日。

村の広場に、青空教室が開校した。

「うわぁ! なにこれ、真っ白でツルツル!」

「この『エンピツ』って棒、インクがないのに字が書けるよ!」

「『ケシゴム』ですぐ消える! 魔法だ!」

子供たちは、地球の文房具に大興奮だ。

丸太のベンチには、尻尾を揺らす子供たちに混じって、キャルルとリーシャも座っている。

「ふふっ、私も生徒になります! 『ユウタ先生』って呼べばいいですか?」

キャルルが一番前の席で、ピンと耳を立ててやる気満々だ。

「こちらの世界の教育カリキュラムには興味があるわ。お手並み拝見ね、先生?」

リーシャは後ろの席で、腕を組んでアカデミックな視点を送ってくる。

「はーい、じゃあ授業を始めるよー!」

勇太がホワイトボードにキュッキュッと文字を書くと、子供たちが「おおーっ」と歓声を上げた。

まずは数字の読み書きから。そして簡単な足し算へ。

「ここにリンゴが3つあります。隣の村から2つもらいました。全部でいくつ?」

「はーい! 5こー!」

「正解! すごいぞ!」

和やかな雰囲気。子供たちの吸収力は凄まじい。

だが、そんな平和な教室に、招かれざる「不良」が現れた。

「けっ、ちまちま数字なんぞ並べて、何の役に立つってんだぁ?」

木陰から現れたのは、腕を組んだイグニスだ。

彼はわざとらしく欠伸をすると、ホワイトボードの前に立ちはだかった。

「おいユウタ。戦士に必要なのは筋肉と勘だ。計算なんざ、弱い奴がやるもんだろ?」

典型的な「勉強嫌いのガキ大将」ムーブである。

子供たちが「あ、イグニスだー」「邪魔しちゃダメー」と騒ぎ出す。

「……イグニス。計算は大事だぞ。できないと損をする」

「はっ! 俺様が損だと? 笑わせるな!」

「じゃあ問題だ」

勇太はマーカーを手に取った。

「今回の報酬で、『極上の霜降り肉』が10枚手に入りました。これを、僕とキャルルとリーシャとイグニス、4人で分けます。一人何枚食べられる?」

「ああん? そんなもん簡単だ!」

イグニスは自信満々に鼻を鳴らした。

「答えは……俺様が7枚、お前らが1枚ずつだ! 俺様は体がデカイからな! ガハハ!」

「ブッブー。不正解」

勇太は冷徹に告げた。

「正解は『2枚ずつ分けて、余った2枚はジャンケン』だ。……でも、イグニスは計算ができないみたいだから、**『お肉は1枚でいい』**ってことだね?」

「なっ……!?」

イグニスの顔色が青ざめた。

「ちょ、待て! 10割る4は……ええと、2あまり2……? つまり俺が計算できないと、俺の肉が減るのか!?」

「そうだよ。商人に騙されて、お釣りをごまかされるかもしれないね」

「そ、それは困る!! 肉が減るのは死活問題だ!!」

イグニスは滝のような汗を流した後、ドカッとキャルルの隣の席に座り込んだ。

「……オホン。先生、授業を続けてくれ。割り算だ。割り算を教えろ!」

「はいはい、素直でよろしい」

教室中がドッと笑いに包まれた。

その後、イグニスは誰よりも真剣に(特に食料の分配に関する問題だけ)ノートを取り続けた。鉛筆を握る手が強すぎて、芯を3本ほど折っていたが。

夕暮れ時。

子供たちは「また明日ね!」と手を振って帰っていった。

ノートには、覚えたばかりの数字と、勇太への感謝の言葉が拙い文字で書かれていた。

【ピンポンパンポーン♪】

【ルナキャロット村の識字率・計算能力向上に貢献しました】

【未来への投資ボーナス: 150 P 加算】

【現在所持ポイント: 15605 P】

勇太は、西日に照らされたホワイトボードを消しながら、充実感を噛み締めた。

武器を与えれば、戦いは終わるかもしれない。

だが、知識を与えれば、彼らは自分たちの力で生きていける。

それは、どんな魔法よりも尊い「力」だ。

「……おい、ユウタ」

帰り際、イグニスがボソッと言った。

「……7かける7は、49……で合ってるよな?」

「正解だよ、イグニス」

「……へっ、悪くねえな。勉強ってのも」

赤銅色の顔を少し赤らめ、そっぽを向く竜人。

その背中を見送りながら、勇太とキャルル、リーシャは顔を見合わせて笑った。

この村での日々も、あとわずか。

だが、ここで蒔いた種は、きっと大きく育つだろう。

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