表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/72

EP 32

集う力、水晶を砕く一撃

ズドオオオオオオオオッ!!

極太の熱線が直撃し、視界が白に染まった。

光が晴れた後、そこに残っていたのは、ひしゃげた大盾の破片と、壁にめり込んだイグニスの姿だった。

「イグニスさん!!」

キャルルの悲鳴が響く。

イグニスはピクリとも動かない。全身から煙を上げ、意識があるかすら怪しい。

だが、彼が身を挺して射線をずらしてくれたおかげで、勇太たちは無傷だった。

「……オ、オオオ……」

クリスタル・フォートレスが、ゆっくりと首を巡らせる。

その瞳が、次は勇太たちを捉えた。次弾のチャージが始まっている。

「……硬度はダイヤモンド並み。魔法は反射。物理は弾かれる。……詰みか?」

勇太は冷や汗を流しながら思考を加速させた。

いや、諦めるな。科学で考えろ。

この世に「壊れない物質」など存在しない。どんなに硬い物質でも、分子結合で繋がっている以上、弱点はある。

(水晶……結晶体……。硬い、だが脆い。特定の『振動』を与えれば……!)

――共振現象レゾナンス

オペラ歌手の声がワイングラスを割る原理だ。

勇太は弾かれたように顔を上げ、ボードを展開した。

ポイントは6455P。なんでも買える。

「リーシャ! キャルル! ……賭けに出るぞ!」

勇太は叫びながら、**『大音量・災害用サイレン(スピーカー付き)』と『可変周波数発振機』**を購入した。

「キャルル! リーシャに魔力を渡せ! 彼女の魔法で『音』を閉じ込めるんだ!」

「えっ、魔力を……?」

「時間がない! リーシャ、頼む!」

勇太の意図を、リーシャは瞬時に理解した。天才エルフの頭脳が、科学の理屈を魔術式へと翻訳する。

「……分かったわ。キャルル、じっとしてて」

リーシャはキャルルの首を引き寄せると、その額に自分の額をコツンと合わせた。

『マナ・ドレイン(魔力同調)』。

キャルルの身体から、淡い月の光(生命力)が溢れ出し、リーシャへと流れ込んでいく。

「んっ……あ……」

キャルルの力が抜け、逆にリーシャの瞳に強烈な翠色の光が宿る。

魔力充填、完了。

「ユウタ、やりなさい!!」

勇太はサイレンをタートルに向け、スイッチを入れた。

周波数ダイヤルを回し、水晶の固有振動数を探る。

キィィィィン――――……!!

不快な高周波音が洞窟内に響き渡る。

最初は何も起きない。だが、ダイヤルがある一点に達した瞬間。

「――ギ、ギャァァァッ!?」

タートルの動きが止まった。

全身の水晶が微細に震え始め、キーンという共鳴音を発し始める。

「ビンゴだ! リーシャ、音を逃がすな!」

「任せて! 風の精霊よ、音の檻となりて奴を包み込め! 『ソニック・プリズン』!」

リーシャが杖を振るうと、風の壁がタートルを球状に包み込んだ。

勇太の発する高周波が、風の壁の内側で反射し、増幅され、逃げ場を失って水晶を激しく振動させる。

ミシッ、ミシッ、パキパキパキ……!

無敵を誇った甲羅に、無数の亀裂が走り始めた。

「グ、ギャ、アアア……ッ!!」

タートルが苦し紛れに暴れるが、振動で関節がガクガクと笑い、まともに立てない。

「キャルル! 今だ! そのヒビを叩け!」

「はいっ! ……月影流、『破砕衝はさいしょう』!!」

魔力を渡し、少しふらつく足で、キャルルが飛んだ。

彼女のトンファーが、振動で脆くなった水晶の装甲に突き刺さる。

パァァァンッ!!

硬度は失われていた。キャルルの一撃は、ガラス細工を砕くように装甲を粉砕し、その奥にある柔らかい肉を露出させた。

「見えた……コアだ!」

勇太が叫ぶ。

だが、誰がトドメを刺す? リーシャは魔法維持で動けない。キャルルは空中にいる。勇太の銃では火力が足りない。

その時。

瓦礫の山が爆発した。

「……待たせたなぁッ!!」

土煙の中から、鬼神が飛び出した。

イグニスだ。

全身血まみれ。だが、その瞳は爛々と燃え盛っている。

彼は戦斧『ヴォルカニック・バスター』の刃を、自身の口に含み――噛みついた。

ガリッ! と火花が散り、竜の唾液(発火液)が付着する。

ボオオオオオオッ!!

戦斧が、マグマのように赤熱した。

自らの熱で武器を過熱状態オーバーヒートにする、捨て身の技。

「テメェの甲羅なんざ……紙切れ同然だァッ!!」

イグニスが跳んだ。

勇太の音波と、リーシャの魔法と、キャルルの打撃でこじ開けられた、一点の穴。

そこへ、灼熱の刃が吸い込まれる。

「砕け散れェッ!! 『イグニス・ブレイク』ッ!!!」

ズゴオオオオオオオオオオッ!!!

接触の瞬間、熱衝撃と物理衝撃が同時に炸裂した。

タートルの巨体がくの字に折れ、背中の水晶が一斉に砕け散り、美しいダイヤモンドダストとなって舞い上がる。

戦斧は核を両断し、そのまま地面まで突き抜けた。

「……グ、オ……」

光る苔の光が消える。

巨亀は崩れ落ち、ただの動かない鉱物の山へと変わった。

静寂。

キラキラと舞う水晶の粉雪の中で、四人の荒い息遣いだけが響く。

「……はぁ、はぁ。……やった、のか?」

勇太がサイレンのスイッチを切る。

イグニスが斧を引き抜き、ニカッと白い歯を見せて笑った。

「へっ……。硬いだけで、味気ねえ野郎だったな」

その言葉を合図に、全員の力が抜けた。

キャルルがぺたんと座り込み、リーシャが杖を支えに息をつく。

強敵だった。だが、誰か一人でも欠けていれば勝てなかった。

【ピンポンパンポーン♪】

【クリスタル・フォートレス(変異種)を撃破しました! 3000 P 加算!】

【『囁きの森』の異変を解決しました! 2000 P 加算!】

【合計 5000 P 加算。現在 11455 P です】

【ランクアップ! 『乗り物(車両)』カテゴリが拡張されました】

ファンファーレが鳴り響く中、勇太は仲間たちの顔を見渡し、心の底から安堵した。

これで、村の憂いはなくなった。

そして、自分たちはもう、この小さな森に留まっている器ではないことも、確信していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ