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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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10/50

EP 10

模擬戦と信頼の槍

ラトルは、感心したように勇太の長槍を見つめ、土煙の舞う広場の団員たちに向かって声を張り上げた。

「見たか、野郎ども! ユウタの間合いの取り方、あの体の使い方を! 俺たちの、バネに任せた力任せの突きとは、モノが違うぜ!」

団員たちも、先ほどの魔法のような「巻き落とし」を目の当たりにして、コクコクと無言で頷いている。

ラトルは勇太に向き直ると、近くの木箱から一揃いの防具を取り出した。

「ユウタ、改めて頼む。俺たちの自警団に入ってくれ。……こいつは、その証だ」

渡されたのは、硬くなめされた革を重ね、要所を鉄板で補強した、軽量ながらも堅牢な革鎧レザーアーマーだった。

獣人の激しい動きを妨げないよう、関節部分は柔軟な素材で作られており、独特の獣脂とタンニンの匂いがする。

「これは正規団員の支給品だ。あんたの服も動きやすそうだが、モンスターの爪や牙を防ぐにゃ心許ねえ。気休めかもしれねえが、着ておいてくれ」

「こ、こんな立派なものを……ありがとうございます」

勇太は渡された防具――胸当て、肩当て、腕当て(ガントレット)、すね当て(レガース)――を、自分のパーカーとズボンの上から装着した。

ベルトで締め上げると、驚くほど体に馴染む。

現代の衣服と、異世界の革鎧。奇妙な組み合わせだが、鏡を見なくても分かった。今の自分は、もう「迷い人」ではない。

「うん、様になってるじゃねえか。これで正式に仲間入りだ」

ラトルは満足そうに頷き、そして少し言い淀むように視線を落とした後、真剣な眼差しで勇太を見据えた。

「……なあ、ユウタ。恥を忍んで頼みがある」

「はい?」

「俺たちに、あんたの槍術……いや、『ナギナタ』とやらを教えてくれねえか?」

「ええっ!?」

勇太は素っ頓狂な声を上げた。キャルルや他の団員たちも、あのプライドの高いラトルが頭を下げたことに息を飲む。

「俺は村一番の槍使いを自負してた。だが、あんたには技術で完敗した。俺たちの槍は『速さ』だが、あんたの槍は『ことわり』だ。……もし、俺たちがその理屈を少しでも学べたら、村の守りはもっと固くなる。頼む!」

ラトルが深々と頭を下げる。

それは、個人のメンツよりも、村の安全と仲間の命を最優先する、真のリーダーの姿だった。

「そ、そんな、頭を上げてください! 僕なんかが教えられることなんて……」

勇太は慌てた。薙刀は嗜んでいたが、師範代のレベルには程遠い。ましてやここは異世界、身体構造も違う獣人相手だ。

「謙遜しないでください、ユウタさん! あの動き、本当に綺麗でした。私、もっと強くなりたいんです。教えてください!」

キャルルも、キラキラした瞳で詰め寄ってくる。

周囲の団員たちも、期待と尊敬の眼差しを向けている。

(……やるしかない、か)

医者として命を救うだけでなく、技術を伝えることで未来の命を守れるなら。

それに、教えることで自分自身の技術も整理できるはずだ。

「……わかりました。僕でよければ。獣人の皆さんの身体能力に、人間の技術がどこまで合うか分かりませんが、基本の『体捌き』や『間合い』なら」

勇太が腹を括って答えると、広場は「おおー!」という野太い歓声に包まれた。

その日の午後から、勇太による「即席・異世界槍術教室」が開講した。

「いいですか、腕だけで振らないでください! 槍は『テコ』です。左手を支点、右手を力点にして……」

「足! 足が止まってます! 常に半身で、次の一歩が出せる位置に!」

勇太は、医学生らしい解剖学的な視点と、薙刀の理合を組み合わせて指導した。

獣人たちは、どうしても持ち前の脚力と腕力に頼り、「点」で攻撃しようとする。

勇太はそれを矯正し、「線」と「面」で守り、相手の力を利用して突く方法を説いた。

「そう、力で押すんじゃなくて、相手の力の流れを読むんです! 水になったつもりで!」

最初は戸惑っていたラトルや団員たちも、勇太の実演を見ると目の色を変えて吸収していく。

彼らは元々センスの塊だ。コツさえ掴めば、その成長速度は恐ろしいほどだった。

「なるほど……こうやって流せば、大柄なオーク相手でも体勢を崩せるのか……!」

ラトルが感心したように呟き、何度も型を繰り返す。

キャルルも、トンファーの動きに「円の動き」を取り入れ、鋭さを増している。

活気に満ちた訓練風景を眺めながら、勇太が汗を拭ったその時。

【ピンポンパンポーン♪】

【善行ポイントが 30 P 加算されました】

【現在所持ポイント: 85 P】

脳内にファンファーレが鳴り響く。

村の防衛力向上への貢献――「教育」もまた、この世界では立派な「善行」らしい。

(85ポイント……。これなら、かなりの物資が買える)

夕暮れの広場で、槍を振るう仲間たちの熱気を感じながら、勇太は確かな充実感を噛み締めていた。

自分の持つ「知識」と「技術」が、この世界で誰かの役に立っている。

それは、地球にいた頃には感じられなかった、強烈な自己肯定感だった。

「よし、今日はここまで! ユウタ、後で一杯付き合えよ! 秘蔵の人参酒を出してやる!」

ラトルの豪快な声に、勇太は「お手柔らかにお願いします」と苦笑いで答えた。

ルナキャロット村の自警団。

その輪の中心には、革鎧をまとった一人の人間――中村勇太の姿があった。

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