12
「きゃああああああ、変態! 変態!」
山口はそこいらの物をとにかく投げつけた。
辞書が犯人のいちもつに当たる。
運が良かった。
犯人はうずくまる。
山口はその隙に事務室から逃げ出した。
廊下を駆け抜け、階段を急いで降りる。
ポケットから携帯が落ちた。
監視室で岩本は走っている山口を見ていた。
「山口さん!」
電話をかけるが繋がらない。
「くそ!」
モニターには山口が3階女子トイレに入るのが映っていた。殺人鬼がエレベーターで3階に来たのを見る。
「やばいぞ、山口さんが危ない」
岩本は部屋の端に置いてあるサスマタと懐中電灯を手に取った。部屋を出る。
1階から3階への階段を駆け上がった。息が上がる。
三階の表示。
そーっと顔をだして廊下を覗いた。殺人鬼の姿は見えない。音を立てないように女子トイレへ向かった。
岩本は女子トイレの表札を見上げる。
ここのはずだ。
中に入った。
閉まっている個室があった。
「山口さん」
「岩本さん!」
岩本の震える声が応えた。
山口は個室から出て岩本に抱きついた。
岩本は顔を真っ赤にさせながら、手を山口の肩の上でわなわなとさせてから山口を引き