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あーかい部! 61話 悪役令嬢

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室……の前。




「さ〜てと、今日も……、あら?2人とも中に入らないの?」




白ちゃんは部室のドアに聞き耳をたてるひいろときはだに出会(でくわ)した。




「ああ、きはだがここで待機だ〜って聞かないんだ。」


「そうなの?」


「えぇ〜っとぉ……とりあえず聞いてみて?」




白ちゃんはきはだに促されるままに、2人を真似てドアに耳をくっつけた。




「中でなにか……、




『オーッホッホッホ♪……いや違うな。……オォーッホッホッホ!!……う〜ん。』




部室の中で高笑いの練習をする聞き慣れた声がした。




「ね?」


「この声……あさぎちゃん?」


「そうなんだ。かれこれ10分くらいずっと高笑いの練習をしてるんだ……。」


「B級映画といいマッサージといい、今度は誰に影響されたのかしら……まったく。」


「またモーラさんにでも変なこと吹き込まれたんじゃないか?」


「そそそ、そうだねぇ!?あはは……。」


「「きはだ(ちゃん)……?」」


「すみませんでした。」




きはだはただ粛々と土下座をした。




「きはだの仕業だったのか……。」


「いや、全部わたしのせいってわけじゃないんだけど……はい、そんなところです。」


「でも、きはだちゃんってスレてるけど、人に影響与えるほど悪役令嬢してないわよね?」


「悪役令嬢っていうより、ただの悪役だよな?」


「いいたい放題か……っ!?」




いつの間にかきはだが立ち上がっていた。




「あさぎちゃんと何かあったの?」


「何かっていうか……その、見られてしまいましてぇ、」


「『見られた』?」


「えっと……この前、モーラさんとお揃いのコーデでお出かけしているところをですねぇ……、見られてしまいまして……。」


「きはだとモーラさんって2人でお出かけするほど中良かったんだな。」


「確かに初耳ね。」


「で、それが『悪役令嬢』の格好だったのか?」


「えっと……悪役令嬢って訳じゃなかったんだけど……そのぉ、会うなり開口一番『悪役令嬢コーデ!?真っ黒でカッコいい〜!』って、お目目をキラキラさせてたもので……、」


「どんな格好してたんだよ……。」


「で、話を合わせてたらあさぎちゃんがああなってたと。」


「はい……。」




『オーーーッホッホッホ♪♪』




「それは仕方ないとして……あれ、どうするの?」


「どうしましょう……。」


「放置してたら一生高笑いしてそうな勢いだぞ……。」


「流石にそれは……、


「「あるな(ねぇ)……。」」


「今はまだ部室で高笑いしてるだけだけど、このままあさぎちゃんが悪役令嬢を完全にモノにしちゃったら……、


「教室や外でも『アレ』がデフォになるのか……。」


「アレが教頭先生の目に触れでもしたら……あの人、泡吹いて倒れるわよ。」


「そしたら白ちゃんの監督責任だねぇ?」


「黙れ元凶。」


「ま、まあここは協力して軌道修正しないか?ワタシもあさぎが一生アレなのは(こた)えるし……。」


「……そうね。ここは大人のわたしがビシッと言ってくるわ。」


「「白ちゃん……!」」




白ちゃんはドアノブを回し、勇み足で部室へと入っていき、それにひいろときはだも続いた。




「やっほーあさぎちゃん、元


「あら、ご機嫌ようみなさん……♪少し来るのが遅くなくて?」




白ちゃんの挨拶に被せるように、不敵な笑みを浮かべてお決まりの口上で3人の出鼻を挫いて見せた。




(((これは重症だな……)))




「今度はご令嬢?この前の落語といい、すごい再現度ね。」


「……『悪役』令嬢でしてよ?」




(((めんっっどくさ……!?)))




「その悪役令嬢って普通の令嬢と何が違うんだ?」


(わたくし)、ただの良い子で収まるようなタマではありませんの。ねえ、きはだ先輩?」




あさぎが不敵に口角を上げ流し目できはだを見た。




「「きはだ……?」」


「あ、ええっと……。」




きはだは両手でTの字を作り、白ちゃんとひいろを外へ連れ出した。




「わかる、2人の言いたいことはわかるよ?……でもしょうがないじゃん!?めっっちゃお目目キラキラさせてくるんだもん……!!」


「……で、『合わせた』のね?」


「はい……。」


「すぐに別れなかったのか……?」


「ええっと……その、一旦あさぎちゃん家まで戻って、お揃いの黒ずくめコーデで猫カフェ行きました……。」


「猫カフェってまさか……みどり先輩の所に……!?」


「はい……。」


「生徒の実家じゃねえかっ!?」




みどり先輩こと、池図女学院2年生の鶸田(ひわだ)みどりは『キャットハウス鶸田』という猫カフェの1人娘である。




「あんまり迷惑かけるなよ……。」


「……え、じゃあ生徒に見られたの?」


「高笑いしながら入店したら、みどり先輩また腰抜かしてたよぉ。」


「いやほんと何してるんだよ……。」


「まって嘘でしょ、じゃあ彼女……不審者3人組の筆頭が『白久先生』だと思ってるってことじゃない……!?」


「妹いるって知らなかったらまず見分けつかないだろうし、白ちゃんだと思うだろうな。」


「最悪だ……私の印象が不審者に……。」


「そうは言うけどグラサン不審者の前科があるからねぇ。」


※43話参照




「疑う余地が無いな。」


「終わった……。」




白ちゃんは膝から崩れ落ちた。




「で、どうするんだ?ここは悪役令嬢の先輩としてビシッと言ってやるべきじゃないのか、きはだ『先輩』?」


「はいはいわかりましたよぉ。ちょっと待っててぇ〜。」




そう言い残すときはだはどこかへと歩いていった。




「どこへ行ったんだ?」


「もうダメだぁ……どうせ私はグラサン悪役令嬢よ……。」


「白ちゃんも使い物にならないし、どうしたら……。」




八方塞がりで悩んでいたひいろのもとにきはだが戻ってきた。


……もう1人の悪役令嬢を連れて。




「おまたせぇ〜。」


「え?みどり先輩……!?」


「部活動中にすみません。あさぎさんが思い悩んでいると聞いたら、いてもたってもいられなくて……。」


「あ、いやそれは良いんだが……なんでその格好?」




みどり先輩の服装は全身真っ黒のフリッフリのヒラっヒラで、令嬢とはちょっとズレてるかもしれないが、共感生羞恥を煽るには充分すぎるオーラを放っていた。




「『自分よりイタい人を見れば我にかえる』……そうです///」


「バケモノにはバケモノをぶつけんだよ……!」


「ならきはだがやればいいだろう!みどり先輩を巻き込むなよ……。」


「わたしやひいろちゃんがやってもあさぎちゃんはやめないと思うよぉ?」


「た、確かに……!」


「心配しないでください。みなさんのお役に立って見せますから……!」


「みどり先輩……無理はしないでくれよ。」




みどり先輩は颯爽と部室のドアをぶち開けた。




「……!?」




みどり先輩は中で身体をビクッとさせるあさぎに先制攻撃を仕掛ける。




「オォォオオッッホッホッホ!!♪♪……ご機嫌うるわしゅう?あさぎさん。」


「ご、ご機嫌よう……。」




「おお!?さっきまでさんざん高笑いしてたあさぎが若干引いているぞ……!」


「客観視って大事だねぇ。」




「……♪」




(たたず)むあさぎの前でみどり先輩はゆっくりと一周回ってみせた。




「みどり先輩……?」


「……ああ、申し訳ございません。愚民の皆さまに、悪役令嬢たる(わたくし)の高貴さは目に余りましたわね……♪」


「そ、そうですか……。」




「ぐwwwみwwwんwww」


「あんまり笑うなよ。ワタシ達のために身体張ってくれてるんだぞ?」


「ごwごめんごめん……ww」


「ともかく、あさぎの言葉遣いが戻った……!いける、いけるぞみどり先輩!」




「あら、どうかされました?まるでドブネズミが豆鉄砲でも喰らったような……


「あ、あの……みどり、先ぱ


「はっ!?申し訳ございません。(わたくし)ったら、『ドブネズミ』なんて品性に欠ける表現をしてしまいましたわ!?いくらありのままを口にしたとはいえ、とんだ無礼を……!?」




「やwwwwwやばwww、無理……www」


「……真面目な人なんだ、みどり先輩は。」




「あ、あの……っ!?」


「へ?」




ドアの外できはだが笑い転げていると、部室の中ではあさぎがみどり先輩の両肩を掴んでいた。




「何か悩みがあるなら言ってください!?そんなに親しくないかもしれませんが、今のみどり先輩は見るに耐えませんっ!」


「そ、そう……?///なら良かった……//////」


「あの……みどり先輩?」


(わたし)の悩みはもう解決したから大丈夫です/////////」


「それってどういう……、




そう言い残すと、みどり先輩は部室から出て後ろ手にドアを閉めた。




「あああ、あの……///こ、これで………///」


「「みどり先輩っ!」」




ひいろはみどり先輩の手を強く握りしめた。




「えっ//////」


「ありがとう……!そしてすまない。ワタシ達のために、こんな恥ずかしい思いを


「は、恥ずか……///」




ひいろに手を握られた照れと、先程までの地震の言動の恥ずかしさの再認識によりみどり先輩のお顔は大火災であった。




「すみません!///今日のことは忘れてくださぁぁぁああいっ!!/////////」


「あっ……、」




ひいろの手を振り払い、1人の悪役令嬢は一陣の風となり走り去っていった。




「……、」




そんなみどり先輩を見送るきはだが無意識のうちにとっていたのは『敬礼』の姿であった……。






あーかい部!(4)




ひいろ:投稿完了だ!


あさぎ:ありがとうみんな


きはだ:目が覚めたか?


あさぎ:うん、モーラさんももう悪役令嬢はしないって


白ちゃん:まったくよ


ひいろ:しかしどんな格好してたんだきはだとモーラさん……


あさぎ:今思い返してみれば、令嬢っていうよりはもふ

あさぎ:もっふもふでイタかった

きはだ:あ〜なんであんな格好して出歩いてたんだろ恥ずかしいなぁ


あさぎ:[送信を取り消しました]

白ちゃん:着ぐるみでも着てたの……?

あさぎ:[送信を取り消しました]


ひいろ:それで猫カフェとか何してるんだよ本当に……


きはだ:すみませんっ!気をつけますっ!

あさぎ:[送信を取り消しました]

あさぎ:気をつけますっ!


きはだ:ものども散れいっ!解散だ!

あさぎ:かい

あさぎ:[送信を取り消しました]

あさぎ:解散だ


ひいろ:あさぎとモーラさんは何で喧嘩してるんだよ


白ちゃん:二重人格の人もこんな感じで主導権争いしてるのかしら?


あさぎ:[送信を取り消しました]


ひいろ:こんどみどり先輩に何かお礼しないとだな


きはだ:腕枕でもさせとけ!解散!

あさぎ:解散だ!


白ちゃん:はいはい、喧嘩は程々にね?

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