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6 チーム2


「今日の情報収拾の成果だが……」

 

 今日は昼まで寝ていた。昨日フレイがおかしかったので夜が明けるまで彼女と愛し合った。彼女に今日はギルドを休めと言い、一緒に昼まで寝ていた。起きると彼女は先に起きていて俺をジッと見つめていた。目が合っておはようと言うと彼女は俺にキスをする。彼女を引き寄せ抱きしめる。しばらくして体を離すと彼女が後ろから抱きついてきて可愛いくねだってくる。そのままベッドに押し倒してお互いに愛し合う。

 2人でシャワーを浴びて身支度を整えると近場のカフェに行き遅いランチでお腹を満たす。俺は仕事に行くと伝えてフレイと別れる。徒歩でギルドに向かいながらゲルモニークに電話する。

「賞金首がどこにいるか分かるか?」

「少し待て。後で位置情報と一緒に連絡する。」

「頼む。」

 電話を切ってギルドに到着する。3時という中途半端な時間なのでギルド内も閑散としている。カウンターを見ると猫獣人の受付嬢が暇そうにしている。

「ミア。」

 彼女の名前だ。縁あって彼女が幼子のころから知っている。妹か娘のように思っている。

「シド。今日はフレイさん休みにゃ。」

「ああ、そうみたいだな。」

 さっきまで一緒にいたからな。

「受付嬢なら言うことがあるだろう。」

「私はシドの受付嬢じゃないにゃ。」

 嬉しそうにしている。言葉遊びがしたいようだ。

「ミアはギルドの受付嬢だろ?冒険者が来たら言うことがあるだろう。」

「つまんない男だにゃ。モテモテの私と話せるチャンスにゃのに。」

 彼女はつまらなさそうに言う。まぁ彼女にお近づきになりたい男はたくさんいるだろう。

「なんだ。聞いて欲しいことでもあるのか?」

 付き合ってやろう。嬉しそうにミアが言う。

「フレイさんがおかしいにゃ。みんな心配しているにゃ。何があったにゃ?」

「多分大丈夫だ。明日からは元気に出勤してくるさ。」

「ならいいにゃ。でもなんで突然イメチェンしたのかにゃ?シドとはコソコソとやってたのににゃ?シドはそれでいいのかにゃ?」

「彼女がそうしたいと決めたのなら尊重するさ。」

「そう言うけど、めんどくさくなったらまた逃げるんでしょ?酷い男にゃ。」

 見透かされてるな。否定は出来ない。

「仕事しろ。」

 彼女はハァっとため息をつき呆れた顔で言う。

「お疲れ様です。ご用件は?」

「闘技場を使いたい。」

 彼女はギルドカードを確認し俺に返すとどうぞと闘技場の入口に手をかざす。俺は手を上げ闘技場に向かう。

 闘技場を進んで行くと副長が若い冒険者を相手に訓練している。アルマが来るまで観客席に座って訓練を眺める。冒険者はEランクかDランクといった所か。副長が3人相手に圧倒している。若い冒険者が1人倒れ、2人倒れる。副長が訓練はここまでと若い冒険者達に終わりを告げる。副長が振向くと俺に気づき手を上げる。俺も手を上げ返す。しばらくボォッと闘技場を見ていると若い冒険者達がよろよろとロッカールームに向かって行く。石鹸の香りがするなと振向くと副長が近づいてくる。副長が俺の横に座り話しかけてくる。

「お前が闘技場にいるのは珍しいな。」

「ああ。アルマと模擬戦闘をするんだ。」

「そうか。彼女はどの程度の力量なんだろうな。」

「それを確認するのさ。しかしギルドの副長だろ?ある程度は彼女の力量は知ってるんじゃないのか?」

「Dランク冒険者であること。過去の依頼達成状況で想像できる程度しか知らないな。この4月から龍皇都支部に出入りし始めたからな。」

「3月まではどこの支部で活動してたんだ?」

「協商連合支部だ。問い合わせをしてみたが素行も悪くなく評判は良かったようだ。あの容姿だしな。ただほぼ全ての依頼をソロでこなしているな。チーム向きな依頼も1人で達成しているくらいだ。お前みたいに特殊な力があるのかもしれないな。」

 なるほど。特殊な力か。俺の場合は精霊魔法と召喚魔法が使えることだろう。2つとも使い手の少ない希少魔法だ。この魔法のせいで魔法協会に追いかけられて大変な時期もあった。

「彼女がどれほどのものか私も見せてもらおう。」

 そう言うと彼女は嬉しそうな顔をした。

 メールの着信があり確認するとゲルモニークから位置情報が送られてくる。ゲルモニークに電話して明日捕まえに行くと伝えて電話をきる。

「なんだ。もう賞金首の居場所がわかったのか。」

 俺は苦笑する。

「まぁ賞金首も土地勘がないんだ。行く先は知れてる。」

「お前に追跡をされたら逃げられないな。」

「ゲルモニークが凄いのさ。」

「それを使えるお前が凄いのさ。」

 俺は苦笑する。ゲルモニークは最高レベルの情報屋だ。情報料も最高レベルだ。

「ゲルモニークは情報料が凄すぎて国家やギルドでもおいそれと使えない。弱みでも握っているのか?」

 弱みと言えばそうかも知れないが大したことじゃない。

「前にも言ったろ?友達なんだ。秘密だからな。」

 俺は苦笑して副長に言う。

「私も死にたくはない。誰にも言わないさ。」

 ゲルモニークは気に入らなければ誰だろうが消失させるだろう。それは俺も含まれてるが。

 しばらく雑談しているとアルマが闘技場に入ってきた。


 模擬戦闘を終えギルドを出ると近くのレストランに入る。めんどくさいのでコース料理を注文する。ドリンクが届くとグラスを掲げ1口飲む。

「今日の情報収拾の成果だが……」

 まぁちょっと電話しただけなんだけどと思いながら、

「賞金首の居場所が特定できた。明日の夕方学院に迎えに行く。そのまま捕縛しよう。」

「え?もう居場所わかったの?どうやって?」

「企業秘密だ。」

「チームでしょ?少しくらい教えてよ。後輩の指導と思ってさ。」

 素直な美少女のお願いを断れる男はいないだろう。

「情報屋を使ったんだ。」

「なるほど。どの情報屋使ってるの?」

 俺はゲルモニークの名前は出さず、適当な情報屋を2人教えた。まぁこの2人の情報屋も使ってるからな。

「まぁ追跡になると情報は必須だからな。ただガセもあるから情報は鵜呑みにするなよ。」

「今回の情報の確度は?」

「明日の朝から確認しに行く。」

「なるほど。ご迷惑をお掛けしますがお願いします。」

 彼女はそう言うと食事を再開する。美味しそうに食べる姿が可愛い。その姿で俺も嬉しくなる。

「アルマは若いのにテーブルマナーが良いな。」

「ありがとう。お母さんに小さい頃から躾けられたから自信あるんだ。レストランとか来ないから披露する機会はなかったけどね。」

「お母さん凄いな。剣に魔法にテーブルマナーか。料理なんかも上手そうだ。」

「料理どころか家事全般得意だよ。お母さんほどじゃないけど私もそこそこできるよ。」

「それは凄いな。いつでもお嫁に行けるな。」

 褒めると彼女は顔を赤くし俯く。

「君のお父さんも大変だ。美人でなんでもできる娘がいると彼氏が出来たら大変なんじゃない?」

「お父さんはいないの。」

 彼女の表情が曇る。しまった、センシティブな発言だ。

「申し訳ない。君を傷つけるつもりは無いんだ。」

「ううん。大丈夫。気にしないで。私が生まれた時からお父さんはいないから。」

 返す言葉が見つからない。

「友達がお父さんと一緒にいるのを見ても寂しいとか羨ましいとかの感情は湧かなくて、ただお父さんと一緒っていうのがどんな感じかなっていつも思う。」

 なるほど。そもそもお父さんがいないから理解できないといった所か。まぁそれは俺も一緒だ。そもそも捨て子だったからな。

「おじさんといるとね、お父さんってこんな感じなのかな?って思ってるよ。」

 彼女が少し照れた顔で言う。俺は少し冗談っぽくオーバーゼスチャーで、

「こんなに若くて男前の他人を捕まえて、お父さんはないだろう。」

 すると彼女は

「じゃあ、おじさんはお父さんじゃなくて恋人?」

 何故顔を赤くして照れながら言ってくるのかな。

「まぁアルマの好きな方でいいんじゃない?俺は君の事を冒険者の後輩でチームメイトで試験官だと思ってるよ。」

 俺は会話から逃げる為に会話はこれで終わりとデザートを口に入れた。

 会計を終えて店を出る。

「じゃあ明日学院に迎えに行くから。」

 と、俺は背中を向けて歩き出す。が腕を掴まれる。

「今日は送って。」

 彼女は俯き表情が見えない。

「わかった。送るよ。」

 と言うと、彼女は顔をあげ表情に花が咲く。

 家がわからないので後ろをついて歩いていると彼女は立ち止まり拗ねた感じで俺に言う。

「おじさんはお父さんか恋人か冒険者の先輩かチームメイトか試験官のどれかわからないけど、今日は私の隣で歩いて。」

 彼女は俺の横にくると腕に巻きつき恋人のように寄り添って歩き出す。俺は無言でされるがままに歩き出す。

 

 ……明日賞金首を捕まえたら終わりだ……

 

 

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