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5 チーム


「アルマ。今回はチームで賞金稼ぎだ。お互いのことをある程度は理解しなければいけないだろう。」

 その通りだと思うので私はコクと頷く。おじさんのことを知りたいし、私のことも知って欲しい。私、なんでドキドキしてるんだろう。2人っきりだからかな。

「アルマは学院があるだろう?2人で行動できる時間は限られてくる。いつもは1日をどう過ごしてる?」

「朝は6時に起きて1時間ほどトレーニングして学院に行く準備。学院は9時から16時までで、16時以降は冒険者活動やトレーニング。最低6時間の睡眠時間を取るようにしてる。本当はもっと寝たいけど♪」

「休日は取ってるの?」

「学院が土日休みだからちゃんと休んでるよ。ただ土日は1日中冒険者活動をしてて充実してる。おじさんはどう過ごしてるの?」

「俺は時間に縛られないようにしてる。気の向くままに仕事して遊んで寝るって感じかな。」

 だらしない生活をしているように聞こえた。

「そんな顔しなくていいだろ。独身冒険者のおっさんなんてこんなもんだ。」

 ダメダメじゃんって思ったことが、私の表情に出ていたようだ。おじさんが苦笑しながら私に言う。

「まぁアルマには都合がいいだろ?16時以降がチーム活動の時間だ。」

 私の都合に合わせてくれるというのは嬉しい。

「おじさんは9時から16時は何するの?」

「情報拾集と準備だな。」

「本当に?遊ぶんじゃないの?」

 意地悪で聞いてみる。

「空いた時間は遊ぶかもな。」

 否定はしないのか。クスッと笑ってしまう。

「まぁ、ちゃんと仕事はするさ。」

 とりあえず信用するとしよう。

 注文した料理が来たので食事を始める。そして聞いてみる。

「賞金首の情報は?」

 おじさんがフォークを置き、布巾で口を拭く。

「賞金首は元Cランク冒険者だ。」

 そこまでは知っている。

「ソイツ何したの?」

「チームメンバー殺しだ。よくある話しさ。」

 チームって怖いな。

「よくある話しなの?」

「ああ。」

「チームメンバーを殺す理由は?」

「さあな。」

「私とおじさんはチームだ。おじさんに殺されたくないし、殺したくない。例えばでいい。想像でもいいから答えて。」

 本心だ。今までチームを組まなかったのは怖いからだ。

「そうだな。金や女のトラブルが多いんじゃないかな。」

 ありきたりの答えだがそうだろう。

「おじさんと私は男と女。トラブルもあるんじゃない?」

 何故かフレイさんのことを考えてしまう。

「親子ほど歳が離れているんだ。男と女はないだろう。」

 何故か胸がチクっとする。恋愛はわからない。

「じゃあ親子?」

 ウチは母子家庭だ。父親ってどんな感じだろうか。

「結婚したことがなく子供を持ったことがないからよくわからないな。」

「私はおじさんにとって女でも娘でもないんだ。」

 おじさんが困った顔をしている。これは意地悪な質問だったようだ。困らせたいわけじゃない。

「ごめんなさい。」

 おじさんが苦笑いをして私に言う。

「俺達はチームだ。賞金首を捕まえるまでの期限付きパートナー。」

 期限付きって所に不満を感じた。

「わかった。」

 私はおじさんにどう言って欲しいのだろうか……。

 


「そう言えば、おじさん魔導銃を使ってたよね。」

 変な流れだった話しの内容が変わった。この美少女との会話は心臓に悪い。これほどの美少女だ。フレイがいなかったら女として見ていただろう。言えないが俺はアルマに父性を感じている。守りたい、大事にしたいと思ってしまっている。軽薄な男だ。

「ああ。珍しいか?」

 魔導銃は魔力を弾丸に変えて発射するもしくは魔法を弾丸に込めて発射する武器だ。宝珠に魔力を込めて発動する魔法に比べて、引金を引くだけで魔力弾を遠くに飛ばしたり、魔力が少なく上級魔法を使えない人も、上級魔法を魔法弾丸に込めれば上級魔法を使えるのがメリットだ。しかしデメリットが多い。まず魔力総量が少ないとすぐ魔力枯渇してしまう。次に魔法弾丸が高価だ。引金を引くたびにお金が減っていく。他にも連発が出来ないとかまだまだデメリットがたくさんある。だから使用者が少ない。使用者が少ない為高額だ。

「おじさんは魔力が少ないの?」

「魔力はまあまあ多いぞ。」

 魔導銃を取り出して彼女に見せる。

「俺の魔導銃は剣や杖と一緒だ。相手を油断させるために魔導銃にしてるんだ。」

 実際、連写出来ないと思わせ、連写して仕留めた敵は多い。

「おじさん、ズルいんだ。」

 若いな、と思う。

「ああ。ズルいぞ。死にたくないからな。」

 死ぬのは怖い。

「私も死にたくないから守ってね。」

「俺も守ってくれよ?」

「お互いに守り合いましょう。」

 2人で笑い合う。

「おじさんはどんな戦い方をするの?」

「ソロだからな。多分アルマと似たような感じなんじゃないかな。まぁ聞くより見た方が早いだろうから明日模擬戦闘をしようか。」

「じゃあ明日、学院終わったらギルドに行くね。」

 今日の打ち合わせはこれでお終りとなり連絡先を交換する。お互いに食事を終えて店を出る。



「じゃあまた明日な。」

 おじさんが手を上げる。

「美少女に1人で夜道を歩かせる気?」

 送ってくれるだろうか。

「夜道が怖くて冒険者ができるか。」

 さっさとおじさんは帰って行く。怖いって言ったら送ってくれるだろうか。次は言ってみようと考えながらおじさんの背中を見つめていた。

 翌日ギルドに入ってカウンターを見るとフレイさんの前は行列になっている。猫獣人も相変わらず多いので、一番奥の男性の受付の前に行く。

「お疲れ様です。ご用件は?」

 戦闘訓練をしたいので闘技場に入りたいと言うとギルドカードを提示し、受付して奥に進んで行く。ドアを開けると観客席のある闘技場だ。少ないが何人か訓練している。観客席にも何人かいるようだ。ロッカールームに荷物を預け闘技場に入るとおじさんが副長と話している。

「おじさん。」

 声をかけるとこちらを向き近づいてくる。

「副長との話しはいいの?」

「俺とアルマの模擬戦闘を見たいらしい。」

 おじさんが魔導銃を取り出す。私は剣を下段に構えて魔力を練りながら間合いを取る。おじさんは何もする様子がない。掛かってこいってことだろう。私は剣に魔力を込めて魔法を発動させる。

「アイスアロー」

 5本の氷の矢がおじさんに向かって行く。

 おじさんが片手を横に振ると氷の矢が全て消失する。どうなってんの!考えるより先におじさんに走り寄り下段から剣を切り上げる。おじさんは最小の動きで剣を躱すと、一歩踏み込み掌底を私の体に打ち込む。が、おじさんは私の右足の蹴りに気付き、掌底をやめたその手で私の蹴りを受け止める。掌底を叩き込む方が早いのに。

「おじさん、私を舐めてるの?」

 おじさんは苦笑している。が、私も馬鹿じゃない。

「おじさん。実力差がありすぎる。私に戦闘を教えてください。」

 私は素直に頭を下げた。


 おじさんは闘技場の武器置き場に行くと木剣を2本取り戻ってくる。1本を私に渡し、おじさんが剣を中段に構える。

「打ち込んでこい。」

 私はおじさんに剣で打ち込む。全ての剣撃をおじさんに弾き返される。おじさんは剣を捨てどこから取り出したのか短い枝を持って、

「打ち込んでこい。」

 私は剣を打ち込むが全て躱され、その間に私の体のあちこちを枝で打ちつける。おじさんは強い。どんな戦闘スタイルかわからなかったけど、強いということだけはわかった。

 

 


「今日はここまでにしようか。」

 俺が言うとアルマは仰向けで大の字に寝転び胸を大きく上下させている。

「おじさん、めっちゃ強いね。チームメンバーが強くて安心したわ。」

「それは良かった。」

「久しぶりに枝で打ちつけられたわ。」

 ほう。似たようなことする人もいるんだな。

「師匠にやられたの?」

「うん。お母さん。」

「お母さんが師匠?」

「うん。剣と魔法を教えてもらった。まだお母さんの方が強いけど、枝は4年前で卒業したと思ってたわ。」

「それは申し訳ない。」

「ううん。お母さんより強い人に教えてもらえるのは嬉しい。魔法も教えてくれる?」

「魔法はどの程度出来るの?」

「剣は見ての通り、魔法は水属性で上級魔法まで多分使える。」

 彼女の剣に埋め込まれている宝珠を見ると良い宝珠だが中級魔法までしか対応していないようだ。

「宝珠がないのか?」

「うん。この前中古で上級魔法を使える宝珠を見てきたけど値段が高くて……。」

 俺はコートのポケットに手を入れ宝珠を取り出す。

「この宝珠を貸してあげるよ。」

 彼女は宝珠を手に取ってまじまじと見つめると魔力を込める。

「前に見た宝珠に比べると起動速度は遅いけど充分使えそう……。」

 ただほど高いものはないからな。何か理由を付けてあげようと考えていると、副長が近づいてくる。

「借りておけ。賞金首を追うのに役立つだろう。装備は良ければ良いほどいい。技量が追いついていないなら装備で補うのもチームだろう。」

 さすが副長。上手いことを言う。

「おじさん。ありがとう。しっかりイメージトレーニングするね。」

 新しいおもちゃを手に入れて嬉しいのだろう。彼女の嬉しそうな顔を見ると俺も嬉しくなる。

「シャワーを浴びて、飯に行こう。今日の情報収拾の報告がしたい。」

 俺達はシャワーを浴びて、ギルドを出た。

 


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