時計はデジタルなのか?夜眠れないのでアナログとデジタルのことについてぼんやりと考えてみたら迷走した(13)
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アナログとデジタルについて迷走中の私ですが、ここしばらくアナログの姿を見失っていました。
デジタルの方が何か好い感じで。コンパクトディスク(CD)、ファクシミリ(FAX)、それからフロッピーディスク(FD)など、デジタルのことばかりを調べていました。調べるのは楽しかったから、それはそれで良かったのです(自己満足)。
偶然なのでしょうけれど、どれも日本企業の貢献があって1980年代に開発されたものでした。今から40年前の話なのですけどね。あの頃の日本に思いを馳せる。
そんな中、フロッピーディスクドライブ(FDD)のインターフェースを調べていたところ、FDDはアナログデバイスという疑いが出て来ました。
FDDの出力信号(READ DATA)がアナログなのです。FDDはFDの中の円盤を回して、磁気ヘッドで円盤上の残留磁気を読み取り、磁気の方向が変化したらパルスを出力するのですが、READ DATA 信号には、このパルスがそのまま出力されるのです。時間軸で標本化されていないのです。だから、G1やG2のFAXをアナログ式と分類したのと同じ考え方で分類したらアナログというしかありません。
でもこれをアナログとしてはいけない気がするのです。何か違う感じがする。
どうしよう! ...、と思っていたところ、追い打ちをかけるように時計にはアナログと言うべき方式もあるよね、という情報が。
アナログとデジタルに関する第2仮説は、アナログ式表示とデジタル式表示の時計のために定めたものです。でも本質的には時を刻むので時計はデジタルだよね、と内心では思っていました。
だけど本当の意味でアナログと言うべき時計があるのならば確認しなければ! 詳しく調べたい!
今回はそんな話です。
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腕時計には機械式とクオーツ式がある。本シリーズの(2)でやりましたね。
機械式ならゼンマイを動力に、テンプ(ひげゼンマイ)を振動させて、テンプに合せて秒針を進める。
クオーツ式なら電池が動力で、電圧をかけた水晶振動子の振動をIC回路で分周して、ステップモータで秒針を回す。
時間の刻み方がテンプか水晶振動子かが重要なポイントだろう。機械式の機械とはテンプのことだと思うくらい。...、ゼンマイとギアを含めて全部が機械だけど、テンプが主役。ガンギ車とアンクルも。
ゼンマイとモーター(電池)と言う秒針を動かす動力によって分類する解説も見かけるが、ゼンマイを巻くのか電池の交換をするかは利用者に良く分かるからだろう。これは便宜的な分類だと感じる。
ところが、機械式とクオーツ式をハイブリッドした第三の方式があるそうです。
スプリングドライブ式(1999年発売、セイコー社)です。
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ここで豆知識です。
機械式腕時計の主要な部品はぼぼ決まっているようで、どの文献でも同じ呼び名で解説されてます。
・香箱車 ・・・ ゼンマイ入り。動力源。一番車とも言う
・二番車 ・・・ 1時間(60分)で1回転。分針
・三番車 ・・・ 二番と四番の中間。8 * 7.5 = 60倍速
・四番車 ・・・ 1分で1回転。秒針
・ガンギ車 ・・ アンクルと合せて「脱進機」と言う
・アンクル ・・ 回転を往復運動に変換して、テンプを揺らせて、
テンプの揺れに合せて、ガンギ車を止めたり進めたり
・テンプ ・・・ ひげゼンマイ。「調速機」とも言う
二番車から四番車までを(表の)「輪列」と言うそうです。時針は二番車を12分の1に減速して「日の裏車」で回す。腕時計の中に輪列をどうレイアウトするかは様々な工夫があって楽しいです。
あとは手巻きでゼンマイを巻き上げる機構ですね。自動巻き、カレンダー(日付、曜日)、アラーム、時報、...が付いている時計もありますね。
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スプリングドライブ式は、クォーツ式と機械式の良いとこ取りをしたと言う方式。精度はクオーツ式と同レベルで、機械式と同じくゼンマイで動くが、テンプは使わない。電池はないし、ステップモータもない。
ゼンマイのほどける力で秒針を駆動するのと共に発電機のローターを回して水晶振動子とIC回路を動作させて、調速するそうです。
基本的なアイデアは1978年に出願されていて、割と古い。
調速は、ローターの回転数と水晶振動子の振動数(を分周した値)を比較して、ローターの回転が速いときは電磁ブレーキをオンすることで行う。ローターは秒針とギアで接しているので、ローターにブレーキが掛れば秒針にも伝わる。
水晶振動子の振動数 32,768Hz を分周した 8 Hz を基準信号としてローターの回転数と比較する、との解説がセイコー社のWEBにありました(URL https : // museum.seiko.co.jp/knowledge/Quartz06/ )。
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ゼンマイの力で秒針が回る。ここに注目すると水時計などと同じくアナログ式に見える。これだけならね。
ゼンマイの力は最初と最後では違って秒針の回る速さにも影響するからそのままでは時計としての精度が難しい。だから機械式の腕時計の命はテンプなのだけど。
電磁ブレーキで調速する部分はどう考えるのか? ブレーキが入っても秒針の動きがアナログであることには違いはない、と言えるのかな?
テンプの代りに水晶振動子を使っているだけならアナログとは言えないですよね。例えば、秒針はゼンマイの力で回るのだけど、8Hz 周期でブレーキが外れて 1/8 秒分だけ秒針が進み、またブレーキが掛かるような場合。
スプリングドライブ式をクオーツ式に分類して、その動力がゼンマイであることから「ぜんまい駆動式クオーツ腕時計」と表現している文献もあります。
どう理解したらよいのか? 調速の仕組みを詳しく調べましょう。
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電磁ブレーキをオンにしたらローターは完全に停止するのかな? それとも減速する程度なのかな? コイルに可変抵抗を接続して抵抗値を調整すればよいのですよね。
...、あ、調べていたら電磁ブレーキはコイルの両端を短絡するらしい。負荷のオン・オフだけで調整。
ローターには磁石が付いていて、ローターが回転すると側にあるコイルが起電する。これを整流してIC回路の電源とする。整流前のコイルの電圧をセンサーで読み取ればローターの回転が分かる。(負荷がオフのとき)ローターの回転数は 8Hz より少し速く回るように調整してあるのだろう。
それから、水晶振動子の振動から 8Hz のパルスを得る。これは単純に分周するだけだ。
具体的に制御方法を考えてみる。ローターとパルスの位相を比較して進み遅れを調整すればよいのだけど。
・ローターが1回転したらカウンタを+1する。
・パルスがきたらカウンタの値により、カウンタが2だったらブレーキをオンにする(負荷を強くする)。1なら何もしない。0ならブレーキをオフにする(負荷を弱くする)。それからカウンタを0クリアして次のパルスを待つ。
これで動くはずだ(ドヤっ)
(あれ? ブレーキをオンにしたらコイルが短絡するからローターの回転が検出できなくない? ブレーキをオンしている間の電力は? どうなの? 発電用と電磁ブレーキ用のコイルの2つを用意するの? 位相の調整って、もっと丁寧に制御しないと発振したりしない? 8Hz に対してもっと細かく位相を把握しないと? どうなの? どうなの?)
...、orz
実際には、ブレーキは常時オンにするのではなくて、オン・オフを繰り返す。オン・オフの周期は 256Hz で、デューティ比で負荷を調整する。
これにより、
1)オフした時のコイル電圧を調べれば、ローターの回転(位相)を把握できる。256Hz なら 256/8 = 32 段階で分かる。
2)オン・オフするとコイルの出力電圧が高くなって、IC回路用に嬉しい。ブレーキのオン時間が増える(負荷を強くする)と、電圧は高くなるのは意外な感じだけど、よく考えれば当然かも。
ローターの回転数を 8Hz にするには、ローターを回すトルクが 80gcm ならデューティ比を約 50% に、トルクが 50gcm なら約 20% に設定すればよい。ゼンマイをフルに巻くとトルクが高くなり過ぎるので巻き過ぎ防止機構があるって。
電磁ブレーキが常時オフのとき、つまりデューティ比が 0% のときは約 0.3V、10% で 約 0.5V、80% で約 1.7V の電圧が得られる(0% でも 0.9V 近くが得られるとの文献もあって謎)。IC回路の動作電圧と消費電流は 0.6V と 80nAだ。新しい文献では 0.5V と 50nA という値もある。
デューティ比を更新することで負荷を調整するのだけど。その制御のパラメータをどう決めたかは、調べた範囲では具体的なことは分からなかった(これは企業秘密?)。
デューティ比の刻みはどの位だろう。水晶振動子が 32768Hz なので 32768/256 = 128 段が最大だけど、64 段位かな。位相が +1 とかにズレたら直ちに調整するのかな。
更新は 8Hz 毎のみ? それとも 256Hz 毎でも変えるのかな。256Hz/8Hz = 32 単位で調整するなら、負荷は 32*64 = 2048 段になる。整流回路が半波整流なので電圧を稼げる時にデューティ比を上げるとよいかも。最初の 16 個は 48/64(=75%)で、後半の 16 個は 16/64(=25%)にする等。でも電力は十分でむしろ回路規模を抑えるべきかな? 気になるー
ローターをぴったり 8Hz で回転させる値にデューティ比を設定できたら、時間の経過でゼンマイがほどけてトルクが落ちたら位相が -1 になってデューティ比を下げる場合もあるかも知れない。観察したいよ!
PID制御って制御工学も楽しそうだ。
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なるほど! スプリングドライブ式の調速方法は分かった(分ってない!)
これは一見するとアナログだけど、ローターの回転を基準信号 8Hz に同期させているのだから、時間の情報源は水晶振動子で、これはクオーツ式と同じ。
つまり、本質的にはデジタルと考えるべきではないか。まぁ、秒針が回るならアナログ表示式ですけど。
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秒針の動きが滑らかで、ここが真にアナログ?
機械式腕時計の秒針はスイープ秒針と言っても、テンプに合せて動くから10分の1秒刻みとかになる。じっと見つめれば微少にカタカタと動いている気配を感じる。スプリングドライブ式なら滑らかに動くのはその通りですね。
でもね。秒針の動きを滑らかにしたいだけならね、...。
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クオーツ式の時計は水晶振動子の振動を分周して 1Hz のパルスを作り、ステップモータを1秒毎に回して秒針を進めています。モーターは1秒に1回だけ動作するのでとても省電力です。
この秒針の駆動方法を少し変えてみます。
DCモータで秒針を回します。そうですね、モーターは1秒8回転として、ギアで 1/(8*60) にして秒針を進めることにします。それと水晶振動子から 8Hz のパルスを作ります。
DCモータは電圧で回転数が決まるので、回転数をセンサで取得して、速すぎるなら電圧を下げて、遅すぎるなら電圧を上げるといった制御をします。
・モーターが1回転する毎にカウンタを +1 します。
・8Hz のパルスがきたら、カウンタを -1 して、カウンタが 1 以上なら速すぎ、-1 以下なら遅すぎと判定します。
これで秒針は滑らかに動きます。クローズループ式の制御なので、原理的には元のクオーツ式と同等の精度です。
安定動作させるためには電圧を更新する際の時定数などの検討が必要というか、そもそもDCモーターを回すのは現実的ではないでしょうが。いわゆる思考実験なので細かいことは無視してね!
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ここで主張したいのは上述のように秒針の駆動方法を変えても時計の本質は変わらないことです。
秒針を水晶振動子のパルスを契機に飛び飛びに進めるのではなくて、ローパスフィルタのようなものを介してスムーズにしても、時間情報としては同じだと考えるのです。
DCモータで秒針を回したら秒針の位置はアナログでは、という主張もあるかも知れません。ですが、その「アナログ」には何か有意な情報が含まれているのでしょうか。例えば、デジタルなデータをグラフにプロットして、点と点とを結んだらアナログなデータになるのでしょうか?
あ、グラフ表示ならアナログ式表示ですけど、...そういう意味ではなくて、ですね。なんだろう?
アナログ式表示とデジタル式表示は第2仮説です。表示方法を改良して秒針を滑らかにしても、表示桁数をいくら増やしても、アナログ式の表示ならアナログ表示であり、デジタル式もデジタル表示であることに違いはありません。
スプリングドライブ式が実現したかったのはクオーツ式と同等の精度を持つ機械式腕時計。だから、その本質はアナログかデジタルかと言われても迷惑なことでしょう。
ですけれどアナログとデジタルに拘る私は、現代の高精度な時計の心臓部は(時を刻むという意味で)デジタルと考えました。つまり、スプリングドライブ式はデジタル。
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如何でしょうか? これが今日の結論です。迷走中なので明日は結論が変わっているかも知れません。
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余談になります。
2023年の機械式腕時計についてです。アナログなレコードと比べると今でもしっかり残っていますね。
出荷数では6%が機械式なのですが、金額だと25%もあります(2.9/49.9 = 5.81%, 69.1/279.9 = 24.68%)。平均的には機械式はクオーツ式の5倍の価格。
この数値は日本時計協会の2023年の統計データです。つまり、日本時計協会会員企業(セイコ、カシオ、シチズン、エプソン、リズム)の出荷データの統計です(海外生産分も含む)。
|腕時計の全体
|総出荷 数量 _49.9|輸出 数量 _44.3|国内 数量 _5.6|(単位100万個)
| 金額 279.9| 金額 187.4| 金額 92.5|(単位10億円)
|うち機械式
|総出荷 数量 __2.9|輸出 数量 __2.6|国内 数量 _0.3|
| 金額 _69.1| 金額 _42.9| 金額 26.3|
機械式は100万円以上もする高級な腕時計が普通にあって、機械式は高価。クオーツ式にも高級ブランド時計もあるのでしょうが安価なものも多そう。チープカシオには2千円〜3千円で買える時計もある。安いけど所謂安物ではなくて、しっかりとした腕時計。普段に使うのに良さそう。
クオーツ式にはデジタル表示とアナログ表示があるのですが、その内訳は、総出荷数量 49.9-2.9 = 47.0 のうち、デジタルが 16.7 で、アナログが 30.3 です。金額だと 279.9-69.1 = 210.8 のうち、デジタル 41.1、アナログ 169.7 です。
国内だと、数量では 5.6-0.3 = 5.3 のうち 1.2 がデジタルで 4.1 がアナログ。金額では 92.5-26.3 = 66.2 のうち 9.4 がデジタル、56.8 がアナログです。
デジタル式表示は全体の33%(金額だと14%)で、アナログ式表示が多数派なのです。国内向け出荷では、デジタル式は数量で21%、金額で10%と更に少くなります。
本当の腕時計はアナログ式表示で、機械式こそが本物の腕時計という感じでしょうか。デジタルは安物というのが腕時計の現在かな。
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なお、世界全体の腕時計の生産数量(推定値)は 1067(単位100万個)ですって。
10年前には日本の腕時計は世界市場でも3割とか4割の存在感があったはずだけど。今は5%あるのかな? 得にムーブメントでの輸出が減少している。日本はどこに行くのだろう?
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国内のデータだけを見ているとクオーツ式と機械式しか出てきませんが、世界的にはスマートウオッチの時代です。
2023年の日本国内向けの腕時計(機械式+クオーツ式)の出荷数は560万個。これに対して日本国内のスマートウオッチの販売台数は375.8万台ですって。日本メーカは製造できなくて外国から輸入してるってことかな。
腕時計(機械式+クオーツ式)の出荷数のグラフだけを見ると横ばいに見えて(少し減ってる?)。腕時計が売れなくなった、という記事もあるけど。デジタルなコンパクトディスク(CD)が消えていくような速度(10年で半減)で腕時計が消えることは無さそうではあります。
日本の腕時計の生産技術(精密機械、マイクロエレクトロニクス)は、スマートウオッチのハードウェアに適用可能かな。センサー、省電力、発電、...。可能でも技術だけを吸い取られて、ポイッと捨てられるかも。
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それにしてもね。スマートウオッチやスマートフォンなどで、秒針などを描画する形式の時計アプリは、アナログ式でよいのだろうか? うーん、今のところ、第2仮説でアナログ式表示だよね。
アナログ式の表示だけど表示される値がステップ秒針で離散的というだけではなくて、表示手段自体がデジタル的な。
物理的な針で時間表示するスマートウオッチがあるそうだけど。秒針らの後ろの盤が液晶画面になっているタイプしか見つからなかったけれど。透明な液晶画面の後ろに時計の表示盤を設けて普段は秒針などが見えて、スマートウオッチしたいときは液晶が不透明になって情報を表示できる腕時計もあってよいよね。
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むう。これは。予感がする。
従来の腕時計を(機械式とクオーツ式をまとめて)アナログ腕時計と呼び、スマートウオッチを本当のデジタル腕時計だと言う人が居るのではないか!
...、居ないかな? 居ないか、...(グルグル検索中)。...、居なそうか。そうか。
スマートで定着しているみたいだ。スマホもスマートフォンだしな。
ならば、第2仮説は廃止して、アナログとデジタルが相克して残るのはスマート(腕時計)って、新たな仮説にするのはどうだろう?
DXは、やっていることがいまいちズレている気がするのは「デジタル」が言葉として不適切で、正しくは(デジタル技術などを活用した)スマート化だからなのかも!
アナログ技術であろうが排除する必要はなくて、ポイントはスマートに処理できるか否かだ。かつては機械化・電気化・電子化などがスマートだったけどれも現在はもっと高度化できるはず。労働集約とか知的集約とかの概念は、数年前からのAI()ブームで見方が変わったよね。
ダサい作業は機械にまかせて、人間はもっと知的な活動をすべきだ!(...、なのだけど実は逆になりそ)
我々はアナログ技術であろうがデジタル技術であろうが、ともかく持てる技術を活用して諸々の活動をもっと賢くしなければ生き残れない時代に生きているのではないか? 目指すべきは(アナログを排除した)デジタル化ではなくて、スマート化だ!
...、とか言ってみるのはどう?
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間違いの指摘とか疑問とか、ご意見・ご感想とかありましたら、どうぞ感想欄に!
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2024.8.11 推敲しました
2024.8.12 推敲を少し
2024.8.13 各所で微推敲
2024.8.14 微推敲
2024.8.17 推敲
2024.8.20 推敲と加筆
2024.8.29 推敲
2024.9.1 少し加筆
2024.9.7 少し加筆(蛇足とも言う)
2024.9.8 推敲
2024.9.16 微推敲