プロローグ ある日の採用活動
何もかもがめちゃくちゃだ。
砕けたアスファルトや折れた鉄骨、その他一切合切が、強風に流される風船のように周囲を飛び交っている。だがぶつかれば破裂するのは人体のほうだ。
ごうごうと吹き荒れる風が全てを巻き上げ、渦を巻いている。
いや、風ではない。
PK、TK、様々に呼ばれる力。意志や感情をエネルギーに変えて物を動かし、破壊する念動力。
荒れ狂うその力の中心、台風の目は、たった1人の少女だった。
「わかってる……わたしの居場所なんて、この世界のどこにもない……」
頭を抱えてうずくまった、独りぼっちの女の子。
「それなら、もういい……みんなわたしをいらないって言うなら……わたしだって、こんな世界いらない……」
消えてしまいそうなか細い声とは裏腹に、彼女を中心に巻き起こる力は強大で、圧倒的だ。
ともすれば、本当に世界を崩壊させるかもしれない。
止めなくては。
僕にできることは、ただひとつ――
声を張り上げること。
キミの居場所はあるんだと。キミを必要とする人がいるんだと、伝えること。
僕は、大きく息を吸い込んだ。
「お忙しいところ失礼しまーーす!!」
「……!?」
「我が社は……秘密結社アラストルは、キミのような人材を求めていまーーす!!!」
僕が“秘密結社の人事担当”として、ヴィランの見込みがある人材をスカウトすることになったのは、さまざまな経緯が重なってのことであるーー