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ひまわりの秘密

作者: 黒楓

このお話は2部構成です。


前半は


『そのひまわりが咲く事は無い』


https://ncode.syosetu.com/n6634hz/


の後の話。


間に


『ひまわり記念日』


https://ncode.syosetu.com/n7025hz/


があって


後半のお話となります。




合わせてご一読いただければ幸いです。


?!


信号が変わったのに始動が遅い。


どちらかと言うと運転では『せっかち』な深谷らしくない…


「大丈夫か?」


「…はい」


ひきつった笑顔の横顔は青ざめていて…私は路肩に車を止めさせた。


深谷…詔子(しょうこ)のハンドルを持つ手が震えている。


「具合悪いのか?」


「いえ!係長!だい…」


ここまで言い掛けた詔子はやおら車を飛び出し、側溝に吐き戻した。


深酒か?…


昨日の夜…谷合(たにあい)と連れ立って帰って行った情景が私の脳裏に浮かび、僅かだけど私の胸を焦がす。



いやいやそれどころではない! 酒のニオイはしなかったが…いずれにしても運転は代わってやらねば…


詔子の背中をさすりながらそんな事を考えていると嗚咽が漏れ聞こえた。


「そんなに辛いんだったら何で言わない?!」


後ろからそっと肩を抱いて諫めると詔子は感極まって泣き出してしまった。




詔子と…谷合…くんは私が手塩に掛けて育て上げた部下だ。


“あの日”の…偽装妊娠とその偽装流産の後、私は自ら進んで“ブラック”の中に身を沈めた。


狂った様に仕事にのめり込む様はブラックの元凶たる当時のオーナーもドン引きするくらいだった。


きっと私は壊れたかったんだ。


そう過労死!


でも生来の頑丈さと妙なところが折り目正しい性格が幸い?災い?して

死ねなかった。


オーナーの方が先に逝く始末!


親族が後を引き継いで…


私の待遇も少しはマシになり


いつの間にか係長になっていて…


下に人も入った。


ただ、新人は入っては辞め入っては辞めが続いたのだけれど…


センスと体力の両方ある谷合くんと…企画力と頑張りがピカ一の詔子が同期で入社し…二人はライバルだけど仲良しになった。


私は意地悪だから…

二人が私を慕ってくれるのを良い事に…

随分と()()()()()二人をライバルとして戦わせたのだけど

“勝負”の付いたその晩は、私の自腹で出した報奨金のポチ袋を言い訳にして

二人仲良く飲みに出かけた。


「まったく!これじゃあどっちに上げても同じじゃない!」って言ってやると…


「奢られた最初の一杯の悔しさをバネに、奢った最初の一杯の美酒の味をバネに、次の勝負の糧にする」と二人に言われた。


弟や妹の様に可愛く思える二人の…そんな関係はとても羨ましかったし…ちょっぴりヤキモチも焼いた。心のどこかで…谷合くんを想っていたから



そんな大切な二人に何があったのか?


昨日は…

大して飲んでも居ないはずなのに


酷い喧嘩でもしてしまったのだろうか?…



「係長は…気付いてらしたんですね?」


「いや…何を?」


「私のお腹に…カレの赤ちゃんが居る事…」


「えーっ??!!」


思わず叫んでしまった!!


私は()()()()()()はからきしダメで…


今だに“子作り”に関する行為すら、した事が無い…


「申し訳ございません。仕事が一段落したら1日、休みます」


「1日って…検査か?」


「いえ、検査はもう済ませました。次の日には大丈夫です!」


「次の日は大丈夫って、まさか…」


「これ以上、係長に迷惑は掛けられません」


「バカ! 仕事なんかより遥かに重要な事だろう!」


詔子は激しく首を振った。


「係長のお気持ちに対して申し訳なくて…こんなにも可愛がっていただいているのに、それを裏切って…カレと…カレの子供を…」


私は大きくため息をついた。


「お腹のベビーの父親は誰?」


詔子は大粒の涙を夕立の様に落としてしゃくり上げた。


「誠二くんです…」


「谷合か… 安心したよ! アイツなら…ま、ウチの給料だから()()()()生活にはなるんだろうけど…間違いなく詔子を幸せにしてくれる。よかった!本当に良かった!!」


そう言ってやると詔子は私の胸の中でワンワン泣いた。


きっと私の心の中の…谷合くんへの恋心を見つけてしまっていたのだろう…可哀想な事をした。



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本当は写真だけで済まそうかなって思っていたのに…


こんなに大掛かりになってしまった。


「我が社の屋台骨を背負っている佐々木次長の結婚式だ! 『社葬』があるんなら社を挙げての結婚式!『社挙式』もありだろ!」


こんな悪ノリで社長以下、社員一丸となっての()()()()に私と()()()()は乗っかる事となった。


題して!


『おめでとう!!佐々木次長&谷合副部長(予定)!! で、どっちが偉いの? お家じゃ佐々木次長だよね(笑)』


「何? この長~い垂れ幕!」


プライズルームにまで提げられた垂れ幕はこひまりちゃん”に大ウケだ。


「で、次長と副部長ってどっちが偉いの?」


この“こひまりちゃん”の素直な質問に私は苦笑いする。


「諸説あるからねえ~『副部長』はウチの会社では初めて作った役職だから…まさしく垂れ幕通りのノリ! でもね!誠二くん…お父さんが次の部長だよ」


「へえ~! あのヘタレお父さんが? 会社大丈夫? こりゃ、お母さん!いつまで経っても会社辞められないね! あ、ごめん! 大姉ちゃん!フライングしちゃった!」


「えっ~!!もう、お母さんって呼んでよぉ~! あと、お父さんね、会社じゃ頼もしいんだから! だって私が惚れるんだよ!」


「えっ?! どうしよ!家でもちゃんとしてもらわなきゃ!! お母さんから愛想尽かされたらた大変だもん!!」


「アハハハハ 大丈夫だよ!」


こひまりちゃんは満面の笑みで…椅子に座った私に寄り添ってくれる。


「こんな綺麗なお母さん!自慢だなあ!! ねっ!写真撮ってL●NEしていい?」


「えー?! だったらもっと胸かさ上げするんだった!」


こんな冗談でケラケラ笑った後、こひまりちゃんがしみじみと言った。


「私とお母さん! もうすぐ同性同名!私は谷合陽葵ジュニア?二世?」


「ふふふ、私は会社じゃ“佐々木”のままだけどね」


私が笑顔で言葉を返すとこひまりちゃんは急に真顔になった。


「あのね、ママが言ってたの…『私には二人お母さんが居るんだよ』って!

 ちょうど私が…『おしべとめしべのたとえ話』を学校で聞いた頃だったから…

話してくれたんだと思う。

ママはお腹に出来た私を産むかどうか一瞬迷ったんだって! 

お父さんとは結婚の約束すらしていなかったし…

その時、お父さんとママの両方が尊敬しているとっても素敵な女性に背中を押してもらって…

結婚もできたし、私も産めた。

そして、二人の心からの感謝を添えて…大切なその人の名前を貰い

私を『陽葵』って名付けたって! 


だから…私と同じ名前のその人も…私のお母さんなんだよって! 


いつかは陽葵に会いに来てくれる日が来るだろうから、その時はちゃんとお礼を言いなさい!って 


だけど初めて会いに来てくれたのが…

ママが亡くなってしまった時だったから…


結局、こんなに後になってしまったけど… 


お母さん! 私を産んでくれて、本当に本当にありがとう!」



私は…私はその言葉に涙がどっと溢れて…



こひまりちゃんは腕まくりした素敵なメイクさんを連れて来てくれた。




 

                                 幸せは

                                 まだまだこれから





今朝の通勤前…ストッキングを履いていた時に、突然思い付きました。


昨夜から…そして目が覚めても

ずっと別のお話の事を考えていたのに…


不思議です。(^^;)


あんまり不思議だから、このお話を優先させました。




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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