REBIRTH and COME BACK
お待たせしました
グチ……ニチ……
ズグチュッ
荒れ果てた地、戦いの傷跡が今尚残る荒地、その中で小さく、されど力強く躍動するモノが1つ。
よく見ればそれは焦げ付いた肉片、真黒になり、ところどころ痛々しく炭化した肉の破片であった。すでにバラバラの屍。切り裂かれ、焼かれ、無惨に捨てられた肉片は一切の生気が感じられない。
が、その筈の肉片の1つがドクリドクリと音を立てて動いている。まるで鼓動、生命の躍動と言わざるを得ない音。
モゴッ…グググ……
すると次の瞬間、動いていた肉片は突然大きく膨れ上がったかと思えば
ズリュン……ズル……
「……」
断面部分からぬるぬると体液に塗れながら腕が伸び、角を生やした頭が見え、体が現れる。
スルルルル……
「……ハッ……ハッ……ンンゥ……!」
…ぐちゅぽっ!
そして最後にしかと足を付きながら翼と尻尾を引き抜き、荒れ果てた大地に立つ。荒く息を吐きつつ瞼をゆっくりと開き、体液に濡れる自身の体をペタペタと触りながらその者は、
「……生き…てる……?」
と呟いた。何しろ意識せずともその者が思い出すのは自身が死ぬる瞬間、敵達によって殺される時なのだから。死力を尽くした、大切な家族を守る為に全力を果たした。されど敵わず、自身は敗北し、殺された。
筈だった、にも関わらず生きている、しかとこうして立っている。
何故、何故、自身は生きているのだ。いや確かに死にたかったわけでもなければ、全く未練がなかったわけでもない。むしろ未練は積もる程ある、死にたいなど微塵も思っていない。だからこうして生きているのは本来喜ぶべきことの筈なのに、普通なら生きていてよかったと喜んでいるだろうに、今だけは疑問が頭の中を駆け巡り、貼り付くせいで喜びよりも困惑が勝ってしまう。
しかも
「……? 何だか……景色が違う」
自身が前まで見ていた景色が若干異なるのだ。ほんの少し高いところから見ているような、それこそ母親に抱き抱えられた時の目線でいるような感じだ。しかし今此処に母親はいなければ、抱き抱えられてすらいない。
「……大きくなってる…私……前よりずっと……」
長くなった脚で立って、大きくなった体を持って、自身は今この景色を見ているのだと、淫夢巫は悟った。
だがどうして急にこんなにも大きくなっているのか、そして、
グググ……ッ!!
「感じる…前より遥かに強くなってる…」
以前よりも力が増しているのか、限界と思っていた力を優に超えているのかと疑問は止まらない。そうして辺りを見回していると、すぐさま淫夢巫の目には足元に散らばる肉片が目に入る。
それは淫夢巫の屍、つい先程まで魂が込められ、生きていた体だ。されど今は生きてもいなければ魂も空っぽ。新たな体にその魂は入っているのだ。
「生まれ変わった…? でもどうやって…」
淫夢巫は自身が新たな体を持って生まれ変わったのかと考えるが、しかしどうやったのかなど全くと覚えていなかった。気が付けば目を覚まし、気が付けば周りを温かい肉が覆っていたので、何とか出口を目指してもがき、再びこの世界に降り立ったのだから。
「……っと、悩んでる場合じゃあない。欄照華達を探さないと…。まぁ欄照華や水浘愛は生きてるだろうし……漢妖歌の心配だけしよ」
しかし自身が今すべきことは能天気に悩んでいることでも、この謎を解き明かそうとすることでもない。
家族の生命を脅かす敵達を倒す、今度こそ家族を守り抜く。
そう決意した淫夢巫は前を向き、翼を広げ、何処かにいる筈の敵達の元へ飛び立とうとする。
次の瞬間、
ゾッ……!
「……!」
遥か彼方、此処ではないずっと遠くに、絶大にして圧倒的な力が、されど何処か懐かしく感じられる存在が現れた。けれども反射的にその力が感じられる方向を振り向くものの淫夢巫の目には映らない。余りに遠過ぎる故、今の自身の目では見られないからだ。
「……まさか……何とか…見る方法…」
淫夢巫は何とか出来ないか、早急にあそこで起きている状況を確認する為の術を、この場から見れる方法を考える。成長した今の淫夢巫ならばその力があるところへ瞬間移動することなど造作もないものの、しかし感じる強大な力はその成長した淫夢巫を超えていたのだ。
幾ら懐かしさを感じるとは言え、自身を大きく超える力の持ち主がいる場所に転移するのは淫夢巫も躊躇ってしまう。故に何とかこの場から力がある場所の状況を確認する術はないかと淫夢巫は模索し、考える。
すると
ポッ
「ん?」
そんな淫夢巫の目の前に半透明よ物体が、角ばった水晶のようなものが突然現れた。形は正八面体でふわりふわりと宙に浮き、ゆっっくりと回転しているその物体を淫夢巫は静かに見やり、見回す。宙に浮く物体の周りはふわりふわりとした気が覆っており、
「…これは……私がやってる…みたいね」
それを生み出したのも、感じられる力も全て自身のものによると淫夢巫は感じ取った。同時にこれが自身の願いによって生み出されたものならば、この力が自身のものならば、と淫夢巫はその物体の周りを両手で覆い、静かに念じ始める。するとその想いに呼応するかの如く物体は輝き始め、
パァアア……
「……! まさか……!」
強大な力の持ち主を、そこにいる存在を8面にそれぞれ映し出す。そしてそこに映った光景に淫夢巫は目を開きながら言葉を失い、その場にぺたんと座り込んでしまう。
まさか、そんなまさか。信じられないと言った表情。
たしかに『いつか』はその光景が見られると信じていた、さっきまでそうだと信じるしかなかった。
だが、だが、だけども、まさかその『いつか』が、『今』訪れるなんて思ってはいなかった。
呼吸が荒れる、しかし大きく吐き、吸っている筈なのにその音は聞こえない。
何しろ淫夢巫の耳は、いや耳だけじゃあなく全ての感覚がその物体に、映し出される光景に向けられているのだから。
「……ッ! ……ハァ…! ハァ……! フッ……グゥ……ァァ……ア…」
気が付けば淫夢巫のから涙が出て止まらない、喉が詰まって嗚咽さえしてしまう。口も体も震え、先程まで飛ぼうと広げていた翼は気が付けばぺちゃりと地面に垂れている。
そんな淫夢巫はしかと自身が生み出した物体を両手で包み込み、映し出される光景を見ては大泣きしながらぎゅうと力強く抱き寄せた。
何しろそこにいたのは、半透明な面に映し出されているのは、
「マ…マ……ママ…ママ……! ママァ……」
ずっと求めていた存在、帰りを信じて待ち望んでいた者、根拠もないがまた会えると思っていた母親、魔快黎様だったからだ。まるで駄々をこねる子供、いやかつての甘えたがりだった時と同じように淫夢巫は自身の母親を呼び続ける。
あの時別れてからずっと、戦えない自身らを守る為にお母さんだけが戦いに行ってから今まで、ひたすら会えることを望んでいた。
けれども何処か心の奥底で思っていた。もうお母さんは帰って来ない、守ってくれる存在はいないのだ、と。
お母さんが戻って来る時なんて二度と来ない、と。
しかしそうじゃあなかった。
その時がついに、やっと来たのだ。
「……遅いよ……ママ…」
ボロボロと涙を流しながら捻り出すように淫夢巫は呟き、ぐちゃぐちゃになった笑顔を浮かべながら母親の姿を見続ける。
――
そして、
「ハァーっ! ハァーっ! くっそぅ…■のクソッタレめェ……ッ」
ズ……ズルリ……ズルリ……
「信じられねぇぜ……まさか…■がウェアの野郎に裏切……られるなんてぇ……。いや……確かに…あの元・放火魔がぁ……まともとは…思っちゃあ……いなかったがよォ……解体屋バラシやのォ……オ…レよりかはぁ…よぉ……まだマシな部類と……思っていたが……」
ズル…ズルリ……ズルリ……
(ママ……すぐに会いに行きたい…また…抱きしめて欲しい…)
トッ……トンッ……トンッ……
立ち上がった淫夢巫は、
「ちくしょぉ……覚えていやがれ……元の世界に戻ったら……アイツらにも…言いふらして…やるからな……ウェア…テメェのヤバさを……よぉ……。だ…ぎ……その前に……■の…頭のォ……悪さをぉ……反省しねぇと……なぁ……クソがぁ……」
トッ…トッ…トッ…
「ん……がっ……! ぁ…? て、テメェ……はぁ……」
(でも、ちょっと寄り道してくね。待っててよ、お母さん)
かつて超えられなかった強敵と対峙する。
次回の投稿もお楽しみに
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