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Go and GO

お待たせしました

「…うぅむ」


 自分の、そして相方の能力(ちから)でさえも不発に終わった。⬛︎⬛︎⬛︎にはほとんどダメージと呼べるだけのものが入っていない。


(聞いていた話と違うな…此処まで硬いとは)


 この世界に来た同胞から聞いた話とはかなり違う、此処までの強さは持っていなかった筈だとウェアは自分の傷を見ながら思っていた。以前この世界へ来て⬛︎⬛︎⬛︎をかなり追い詰めた同胞がいたが、その者は自分にとって下の存在、自分からすれば『弱い』と呼ぶべき存在だった。

 しかし今、自分はその『弱い』筈である者よりもダメージを与えられていない。果たして自分が弱くなってしまったのか。


 否、⬛︎⬛︎⬛︎の強さが上がっているのだ。とっくに完成していた、これ以上はないように思えた⬛︎⬛︎⬛︎は確実に強くなっている。


「ふぅむ」


 先程貰った一撃で嫌でも分かった。自分らが今の⬛︎⬛︎⬛︎に勝つことはかなり難しい、と。少なくともこのまま自分が何もしなければ標的となっている相方は死ぬ。相方の能力(ちから)じゃあ勝てない。

 そうウェアは考えつつ、撤退も含めた策を練り始める。一度退()いて体勢を整える必要もある、強くなった厄災相手に状況を整えなければならない、と。


 されどフーは今尚止まらない怒りを燃やしながら魔快黎(まより)様を睨み付けていた。自分達が負ける筈がない、ウェアと共にいる自分が敗北を知るわけがない。


 世界から、生命から、化物と恐れられ、恐怖されて来たこの■が、


(認めねぇ認めねぇ、■が…コイツに…ビビッてるなんて!!)


 恐怖しているなどと、化物だと恐れているなど、あってはならない。


「クッ……ソッタレがぁあ!」


 ギュウアッ!!! ギャラバババッッ!!!


 瞬間、フーは大きく腕を振りながら能力(ちから)を放ちまくった。当たらないのならば当てればいい、避けられてしまうのならばそれを前提に放てばいい。


 数打てば当たる筈、当たりさえすれば勝てる。闇雲でいい、やたらめったらで構わない。


 よもやフーは思考を捨て、ガムシャラに空を切り刻む。魔快黎(まより)様がいる位置から全く見当違いの方向まで、とにかく能力(ちから)を使いまくる。


「…」

(考えろ、考え続けろ。出来る、出来ると思い続けろッ)


 それを、斬撃の嵐を魔快黎(まより)様は幾多の目で目視し、軌道を読み解き、回避し続ける。

 かつてはこの体なんて幾らでも傷付いて構わないと思っていた、いや今でもきっと思っている。我が子を守る為ならば幾らでも犠牲に出来た。


 けれども違った、そうじゃあなかったのだ。例え自分が平気であっても、自分が傷付けば悲しむ存在がいる。自分が傷付くと言う重い代償を、自分だけが背負うわけではないと。


 だからかわせる、わざわざ玉砕覚悟で突っ込んだりはしない。かわせる攻撃は極力かわし続けた。


「くっそ…んなろ…当たりさえすれば…お前なんか…」


 そして自分の攻撃が当たらない、掠りもしないことに焦りを覚えてしまっているフーはガリガリと歯を鳴らしながら魔快黎(まより)様を捉え続ける。だがその怒りと反対に体の方はジワジワと疲労が溜まり、浮き彫りになり始めていた。


 だがそれでも、目の前の敵を殺す。自分ならば()れる筈なのだ、この何者をも寄せ付けぬ無敵の能力(ちから)で必ず厄災を殺す。当たれば必ず殺せるのだ。

 自分ならば、自分達ならばそれが出来るとフーは本気で信じ、尚も斬撃を繰り出し続ける。今は当たらなくとも、必ず当たる時が来る、自分が厄災を殺せる時が来ると信じて。


「……」

(凄い攻撃の嵐だな。待ってれば疲れて潰れてくれるだろうけど、それまではほとんど隙がないし手も出せない…なるほど…こう言う()()()もあるのか)


 対する魔快黎(まより)様も考え続けながら回避に徹しているとは言え、隙のない攻撃の連打に手が出せないでいた。多少無理をすれば自分の手を伸ばして反撃出来るかもしれないが、この嵐の中を負傷無しで突き進んでいくのは少々難しそうだ。

 言うなれば稼働中のミキサーに手を突っ込んで、ペーストと化した食べ物を掴み取るようなもの。

 もう少し思考と腕を磨けば出来るかもしれない、やってみたら案外出来るかもしれないと魔快黎(まより)様は一瞬思うも、



(いや…むしろ逆に…)



 と、切られることを恐れて攻撃に転じられないのなら、逆転すればいいと思い付く。



 次の瞬間、



 ドパッッ!!!!


「ッ…」


「ッ!!」



 魔快黎(まより)様の御体の一部、右の指から肘にかけて抉り取られるように吹き飛ぶ。断面から吹き出す体液が肉片と共に宙を舞う。


(やった…!)


 その光景にフーは喜び、ついに自分の攻撃が届いたと笑みを浮かべる。やっと⬛︎⬛︎⬛︎に一撃喰らわせた、やはり自分の能力(ちから)は厄災をも殺せるのだ。



 しかし、



「……?」



ズル……



「……!」



 次の瞬間、フーは後悔する。



 自分は切ったのではない、と。



 ⬛︎⬛︎⬛︎によって()()()()()()()、と。



(これは……()()()だ)



 ペリッ…



 『袋綴(ふくろと)じ』

 魔快黎(まより)様は自身の体に厄災を詰め込み、外からは分からぬように()じて放った。


 フーが切ってしまったのはソレだ。魔快黎(まより)様は斬撃の嵐の中にわざと腕を入れ、切らせることで攻撃に転じたのである。



 パリッ……



 開けて嬉しいものなど何1つとて入っていない。


 入っているのは、『災厄』だ。



 それを自分の手で、自分の能力(ちから)で開けてしまったことをフーは即座に理解し、


(ヤバイッ……)


 バッ……


 超速でその場から離れようと後方に飛ぶ。けれども既に厄災の魔の手はフーに迫っており、袋綴(ふくろと)じの中に詰まっていた()()がそれよりも早くフーの片腕に巻き付いた。


 ズルギュグルルルッ!!!!


「うぉおおお!」


 瞬間、その厄災はフーの腕を潰し、砕き、噛み、破壊していく。更に厄災の塊は生き物のように(うごめ)き、うねりながら恐ろしい速度でフーの手先から胴体を目指して動き出した。

 即座にフーは、この厄災は自分を殺す。このままにしておけば自分は殺されると理解し、



「ガァアアアア!! チクショオオオオオ!」


 ズブババババッッ!!!


「ナメルナァアアアアア!!!」



 厄災が胴体に届くよりも早く、自分の腕をズタズタに切り裂いた。


「ハァー! ハァー! ナンテコトォヲォオ……だ、だがこれで勝ち誇ってんじゃあ…ねぇ……! この程度ォ……この程度ォオオ…!」


 そうして魔快黎(まより)様の厄災を完全に受けることはなかったものの、片腕を失ったフーは明らかに弱っている。まだ強い言葉を放っているものの、片腕を失った痛みには耐えれていないようだ。


「…」


「ケッ…片腕を失ったか程度で…■は参らねぇぜ…? まだもう片方腕はあるんだからな……? それに■とウェアがいれば…お前なんざ……お前なんざ…!」


 ヒュオッ……!


「オマエナンカァァアアアア!!」


 ビビビュアアアア!!!


 次の瞬間、フーは怒声を上げながら片腕で能力(ちから)を振るう。


「アタレ…当たれ……当たれェエエ!!」


 が、最初のようなキレのあった腕の動きは次第に慣性を止められなくなり出し、振り切るようになる。整っていた息は少しずつ切れ始め、怒りのまま投げ付ける言葉をぶつ切りにしていく。当然体力も底をついており、既に足は小刻みに震えている。


「ハァーッ、ハァーッ…」


「…」


「ゥ…」


 だが最もの疲労の原因は、呼吸が荒くなっている理由は、体が震えているわけは、フーの中にある()()であった。

 とっくに捨て去っていた筈の感情、この姿になってから失われていたと思っていたモノ、遥か昔に無くしていた想い。厄災に睨まれ、見下されることで封じられていたそれらが今フーの中に沸き立ち、巻き付き、(まと)わり付機始めているのだ。


 もっとも、それを、その存在をフーはまだ理解していないが。


(このままじゃあ無理そうだな)


 そしてその光景にウェアも諦めと現状の回復が見込めそうにないと判断し、この場からの撤退と立て直しを決定する。フーの周りを多くの視線が取り囲んでいるのと同様、自分も多くの目が取り囲んでいた。恐らく今のまま逃亡したところで逃げ切ることは不可能。


 しかしこのまま戦ったとしても勝ち目は薄い。

 どうしたものかとウェアはフーと魔快黎(まより)様の戦いを見ながら考え続ける。



 と、次の瞬間、



 グアッ!!!


「ッ!」

(ヤッ…)



 魔快黎(まより)様の手が嵐の中を抜けてフーの首を鷲掴(わしづか)み、そのまま勢いよく持ち上げる。そして有無を言わさず、力強く地面に、



 ゥッ……!!!


(ヤバイ、死ぬ。喰らったら死ぬ、マジで死……)


 ギュッ…!!!!


(いや、待て。気を強く持て。こんなんじゃあ死なない。死なない筈だ。この体は頑丈、大丈夫耐えれる耐えれる弱気になるな、絶対耐えれる、痛いだろうが我慢だ。我慢して、耐えて、次、反撃。大丈夫、ウェアもいる。勝てる筈だ、耐えて、マジで耐えてくれ、耐えて耐えて、耐え……れるよな?)

 ゴシャンッ!!!!!



 叩き伏せた。


 首をへし折らんとするその勢いはフーの頭を地面にめり込ませ、完全に叩き潰す。



「……やったか…」



 魔快黎(まより)様はゆっくりと手を離し、地面から引き抜くとそこには、



「……」



 完全に沈黙したフーの体が、



 ピクッ……ピクッ……


「……!」



 わずかに脈打ち、痙攣(けいれん)を繰り返していた。その姿にまだ終わっていない、この者は立ち上がって来るかもしれないと魔快黎(まより)様はトドメを刺そうと構える。



「ん…?」



 次の瞬間、魔快黎(まより)様の目がウェアの動きを捉えた。今度は何をする気かと先程まで動きがなかったウェアの方を魔快黎(まより)様は注目する。



「…ふん」


 グボッ…!!



 が、ウェアがニッと笑うと同時に魔快黎(まより)様の足元で何かが(うごめ)く音がした。



 ボグォオオオ!!!


「ギッ……ガァアア!!?」



 瞬間、フーの体が内からも外からも燃え始める。気絶していたフーはその苦しみに(もだ)え、身を(よじ)りながら、自分を焼く炎を生み出した者を睨み付けた。その目線の先には当然ウェアがいる。



「オ……オマ……? ナ、ナニヲ……ヤッテンダァアアッ!!?」


「取り敢えず体勢を立て直すことにした。フー、お前とは別れる。くたばれ」


「ナ……ナ……? ナ…ナンデ……? ■達……は…友達じゃあ……お前だけは……オ…レ……の……」


「お前だけだ。そう思ってんのはな。昔も今も変わらん」



 そして魔快黎(まより)様は次に何が起きるのか悟り、身構えた。



「お…お前……とは……昔か…ら……のクサ…レ縁…だと……思ってい……た…のに……信じ…てた……オ……レ……が……バカだった……のか……」

次回の投稿もお楽しみに



評価、ブクマ、感想、レビュー、待ってますッ!

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