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炸裂

お待たせしました

「……小癪(こしゃく)…■(しゃく)に触る■…!」


 腕を払われ、またも厄災の子達を殺す機を失ってしまった来訪者。その忌々しさと(わずら)わしさに拳を握り、歯を喰い縛って怒りの表情を(あら)わにさせる。


 いくら厄災の子達と言えど相手はガキ。それも自分に匹敵するような力など全く持たない存在。侮れない、みくびることは出来ないと思っていても、やはりその気になれば何時でも殺せると確信していた存在にこうも手間取るとなるとストレスは溜まってしまう。


 ましてや出会った時と、こうして再び相見(あいまみ)えた時と比べて明らかに強くなっている、力を付けて戦いに臨めるようになりつつある。


「…■む……もういい■……遊ぶのは終わりだ。そう、もう終わり。終わりにしてやる」


 ギュギ■■…ギギギ!!!!


 さっさと殺さねばより厄介な存在になる、少なくとも今よりも倒すことが難しくなるのは確実だと来訪者は少々焦りを感じつつ、この戦いに幕を閉じようと全身に力を込め始めた。すると混沌に歪んだ体はより攻撃的かつ他を傷付けることに特化した形へと変貌していく。



彼奴(あやつ)、此処から来るぞ。この戦いに終幕をもたらす気よ。余達(よたち)の死を(もっ)てな」

「ならこっちも負けられないんってわけぇね。どうするどうするど、う、す、る? 漢妖歌(かんよう)てゃんはどうする? 浮かんだ策のお披露目中、水浘愛(めみあ)は邪魔しないほーがいい?」



 その光景を前に漢妖歌(かんよう)水浘愛(めみあ)も戦いの終わりを感じ取り、自分達の手で終わらせてやろうと意気込む。両者共まだまだ力不足ながらも格上の力を持つ来訪者を倒せる可能性を秘めた策を若き体に秘めて。



「いんにゃ、其方(そち)其方(そち)の好きにやれぃ。それで()の策が歪むよなこたぁない。むしろ()其方(そち)の邪魔になっちまうってこたないか? 邪魔だと言うんならば手を引くが…」

「にゅお〜、そうなのかぁ。水浘愛(めみあ)の策も別に漢妖歌(かんよう)てゃんが邪魔ってわけじゃあないもんなぁ」


 ズル…


「そうか、じゃあ各々で」


 にゅるり…


「おっけ」


 

 瞬間、漢妖歌(かんよう)水浘愛(めみあ)はそれぞれが秘めたる策で自分達の的である来訪者を撃破しようと構えた。



(あらかじ)め謝っておこう。其方(そち)の作品を()の手が邪魔するやもしれんからな」

「それなら水浘愛(めみあ)も謝っとこっかなー。もしかしたら水浘愛(めみあ)の秘策でアイツごと漢妖歌(かんよう)てゃんをやっつけちゃうかもだからねぇん」



 ザギュッ…! ■■…ッ!!!!



 そして来訪者が自らの体から刃を生やすのと同時に、



 トンッ!



 漢妖歌(かんよう)は勢いよく走り出す。これでもかと言う程に真っ直ぐ、一直線に来訪者へと駆けて行って。


(よくて相打ち、下手すりゃ死ぬかねぇ。だが、決断は()うに済ませた)


 最早漢妖歌(かんよう)は玉砕覚悟、無傷で済むとは微塵(みじん)も思っていないようだ。しかし漢妖歌(かんよう)はそれを全くと恐れておらず、とっくに済ませた決意と背後から生やした無数の腕と共に来訪者へ立ち向かっていく。



 ボゴォ■■オオオ!!!!



「…ぐっ」



 次の瞬間、漢妖歌(かんよう)の体は来訪者の放った熱線、それこそ空を焦がし、気を焼き尽くし、漢妖歌(かんよう)の体を炎に包む。先程以上の火力は瞬く間に漢妖歌(かんよう)の体に焦げ跡を作っていくが、


「……ッ!」


 ブス…ボロ…!


 自らの腕を全身に巻き付け、その炎を耐えながら漢妖歌(かんよう)は怯まず来訪者との距離を詰めていった。幾ら腕を使っても防げるのはせいぜい3割程度、何時までは決して耐えられない。


 しかし漢妖歌(かんよう)は怯まず、むしろその炎の中に飛び込んでいくかのように前進しながら、



(これでも…)



 パキッ



(喰らえ…ッ!!)



 口の中で、奥歯で何かを噛み砕く。そして、



 ブゥウウウウッ!



「■ッ! 貴様…■」



 炎の中から顔を引き抜くと同時に勢いよく来訪者目掛けて吹き付けた。見れば漢妖歌(かんよう)の口の中には噛み砕いた破片が転がり、今吹き付けたものと同じものがその破片から滲み出ている。


 それは小さな毒牙、百足の毒牙であった。


 漢妖歌(かんよう)は自らの口に毒牙を仕込み、砕いて滲み出て来た猛毒を来訪者に吹き付ける。大百足の毒顎をそのまま用いても来訪者に同じ手は二度と通じないだろう。

 故に自らの口の中に毒を隠し、確実に喰らう攻撃の最中反撃に転じたのである。



「■…馬鹿な…■」



 来訪者の体には吹き出た毒が付着するが、



「ゴボッ…! ゴホッ…! ゲブァッ……」



 最もその毒を喰らったのは口でそれを噛み砕いた漢妖歌(かんよう)だ。口内の肉に付着した百足の毒は容赦なく漢妖歌(かんよう)の体を犯し、組織を破壊し、体液を吐き出させる。


 そして、



 ドロ…



 来訪者の体は毒が付着した箇所が僅かに溶けるであった。



「どうやら毒で■を殺す気だったようだが…■…喰らったのは貴様の方だったようだな」


 ビチャビチャビチャ…


「ガバッ…! ゴブォ…っ」


「それと■、さっき■は少し驚いて()鹿()()って言っちったけど、訂正しておこう。()鹿()()、ってな。俺に喰らわせる筈だった毒を貴様が喰らってるんだから。自分の毒で自分が死ぬのか、手間が省けて助かる」


「…っ」


 ド■■!!



 そして自らの毒に(もだ)える漢妖歌(かんよう)のことを来訪者は乱暴に踏みつけた。自らの体を犠牲に放った漢妖歌(かんよう)の毒は先程の炎が焦がした空の熱で大半が死滅してしまい、結果的に漢妖歌(かんよう)だけが喰らってしまっている。


(やはり…一筋縄でいかんか…)


「■■…では、死ねッ」


 来訪者は結果的に自爆してしまった漢妖歌(かんよう)を踏み付けて抑えながら首を刎ね飛ばそうと刃を振るった。



「やめろおお!」


 びゅるぁっ!



 その時、漢妖歌(かんよう)と来訪者の間に水浘愛(めみあ)が飛び込んで来る。



 ■バン■ッ!!!!



 が、それと同時に来訪者の払った腕が一撃で水浘愛(めみあ)の体を弾き飛ばし、大半を粉々にしてしまう。地面には無数の破片となった水浘愛(めみあ)が散らばるも、


「うにゅ…に…」


 グニグニと互いに体を伸ばし合い、繋がり合おうとしつつ何とか再生を試みる。



「っと■、貴様もなかなかくたばらないんだった■。ちゃんと殺しておかねばな」



 と、その時、来訪者はフゥッと漢妖歌(かんよう)に放ったのと同じ熱線を放ち、辺りを火の海にしてしまう。さすれば細かな破片になっている水浘愛(めみあ)の体は次々に焼かれ、再生する暇もなく消滅していく。


「さて、次■。順番待ち■」


 そして今度こそ漢妖歌(かんよう)を始末しようと来訪者は刃を振り被った。



 ドバッ!!!



「……」



 瞬間、



「……ほぅ」



 来訪者の刃が、



「やりぃ」



 勢いよく地面を突き破って出て来た激流の塊によって粉砕される。



「な…■!? な■……!?」



 それを放ったのは上半身の大半を吹き飛ばされ、細かな破片となった水浘愛(めみあ)であった。その1つである水浘愛(めみあ)はしてやったりという表情で自分の攻撃の成功を見届ける。



「まさか…其方(そち)…さっき…」

「何も考えてないわけじゃあないって言ったじゃん?」

「…やるのぅ」



 倒されている漢妖歌(かんよう)の目の前で小さくなった水浘愛(めみあ)はにゃっと笑いながら自分の策が完璧に決まったと胸を張っていた。


 今の攻撃の発端は先程の土下座。絶対に許してくれない相手に許しを乞い、地面に勢いよく額を(こす)り付ける。その隙に水浘愛(めみあ)は体の一部を地面に染み込ませ、炎が届かない場所で地下水を吸い上げ、蓄えながら攻撃の機を伺っていたのだ。


 そして来訪者が漢妖歌(かんよう)を攻撃するという絶好のタイミングで、水浘愛(めみあ)は反撃に転じたのである。



「ギッ…■…貴様ら…■くもっ…よくも……!!」



 しかし刃を弾き飛ばしただけで来訪者は倒れない。むしろ更に怒りを湧き立たせながら他の刃で両者を狙う。



 バジュッ!!!


「1発だけじゃあないぜッ。たっぷり染み込ませたからな」



 が、その刃も次なる水浘愛(めみあ)の激流が弾き飛ばした。



 ドバババババ!!!


「ぐっ…! こんな…こ■…水程度…■!」


 バズンッ!!!


「■■ガァ!」


 

 来訪者の体を次々に襲い、抉る激流の塊。予め来ると分かっていればかわせる速度であるものの、中には何発か発射の素振りを見せるだけのものもあるため、完全に予測は出来ていない。

 何しろ水浘愛(めみあ)は来訪者が自分を弾き飛ばすのも計算済みだからだ。辺りにわざと自分の体を散らばせ、完全に炎に焼かれない内に地面へと染み込み、フェイントも織り交ぜさせる。ただでさえ炎の中で(もだ)えているのは自分を倒したと思わせる囮であり、実際に焼失したのは全体の半分程度。

 残りの半分は全てこの反撃のために費やしているのである。


 来訪者の強固な体を打ち砕き、勝利をもたらす反撃の激流。



 されど放てる数には当然有限。次第に弾切れの予兆が見えて来る。



 むくり


「上出来だ、水浘愛(めみあ)()も準備万全よ」



 しかしそれと同時に、漢妖歌(かんよう)も来訪者が怯んだ隙を見計らって自分を踏みつけている脚を退()け、立ち上がった。そして、



「大量消費になるが…命を落とすよかマシか」


 ズルルルルル…



 すぐ側の世界にいる大百足を来訪者の周りを取り囲むように這わせる。瞬間、



「感謝するぞ、水浘愛(めみあ)其方(そち)のお陰で()の策が確実なものに出来た」

「どいたまー、やったれー!」



 怯んでいる来訪者の周りの空間が破れ、そこから無数の腕が、拳が飛び出した。しかもその腕は全て毒々しく、下手に触れれば明らかに害がある色合いをしている。それもその筈、漢妖歌(かんよう)は自らの手を大百足の毒で犯し、毒手として新たに作り出したのだ。


 その手で触れられでもすれば大百足の猛毒に犯されるだろう。


 もし仮に殴られでもすれば、きっとただでは済まない。



「喰らえっ。()の腕、くれてやるッ」



 ズババババババババババババババ!!!



 瞬間、漢妖歌(かんよう)の無数の毒手が、毒の拳が、来訪者の体に炸裂した。炸裂と同時に毒に(まみ)れた漢妖歌(かんよう)の腕は崩れ、中から更なる猛毒が吹き出した。目の前で毒が詰まった爆弾が破裂するかのように。

 その毒は来訪者の全身の穴だけでなく水浘愛(めみあ)の付けた傷口からも侵入し、次々にその組織を犯していく。先程の大百足の毒顎も相当だが、今度の拳の豪雨は来訪者に毒を弾き飛ばす猶予さえ与えず、瞬く間に全身を腐らせるように破壊する。



 そして、


 ベシャアッ!!!


 トドメの一撃にして最後の拳が腐りかけた来訪者の顔面を貫き、



「……■…カッ……ば…か……な…■…」



 ドジャアンッ!!!



 ついに漢妖歌(かんよう)水浘愛(めみあ)は自分達の敵を撃破した。

次回の投稿もお楽しみに



評価、ブクマ、感想、レビュー、待ってますッ!

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