撃破の策
お待たせしました
「…ほう■大したもんだな。まさか…■失った腕をあたらしく付けられるとは…」
大百足の体から失った部分を取り戻し、再生した漢妖歌、そして頭を吹き飛ばされようとも並の生命体とは異なる体の構造をしている水浘愛を前に来訪者は侮れないガキ共と警戒心を高める。決して両者共々強大な力を顕著に現しているわけではないが、⬛︎⬛︎⬛︎こと厄災そのものの子達であるため、何時その力が表に出るかは分からない。
「さぁて、しかしどう■してやろうか。ガキ共の再生能力がどれだけのものか、■だまだ未知数過ぎるから…な」
ただ撃破するだけでは駄目だ、しっかり殺しておかねば両者共また何度でも蘇って来る。先の再生から来訪者は漢妖歌と水浘愛をどのように始末しようかと考え出す。何しろ今の来訪者の体は猛毒を取り除いたために大きく傷付き、決して本調子とは呼ばない状態だからだ。
加えて一度完全に始末したと思っていた漢妖歌がこうして万全の状態で自分の前にやって来たことも思うと、ガキと言えど想像以上に油断ならない存在であると来訪者は考えざるを得なかった。
「さぁて、どうするよ水浘愛。余の腕と引き換えに打ち込んだ毒も弾き飛ばされてしまった」
「ん゛〜…何か次の策は?」
「ないっ。彼奴に毒を喰らわせ、後は死ぬるまで耐え抜くだけであったんだが…計算が歪んでしもうたわぃ」
されどその漢妖歌と水浘愛もまた次なる攻撃の手に四苦八苦しているようだ。闘志は全くと消えていないものの、漢妖歌が自らの片腕と引き換えに喰らわせた猛毒も肉片ごと来訪者に弾き飛ばされてしまった。格上の来訪者相手に勝てる可能性を秘めたせっかくの策も破られたとなると、次なる手はそうそう浮かばない。
「ぐぇ〜、なら仕方ない…水浘愛が一泡吹かせて来るからその隙にいいの考えといてよん」
にゅるる
「はっ…? 水浘愛、其方…」
「へへっ、まぁ見てな。水浘愛だって何も考えてないわけじゃあないんだぜっ」
と、その時、水浘愛はそう言いながら来訪者に向かって歩き出す。
漢妖歌が次なる策を練るまでの間は自分が稼ぐと言い放って。
自分にだって無策で来訪者に挑むわけじゃあないと言い放って。
「無茶だ…っ」
「どうかな? やってみなくちゃ分かんない…かもよ?」
「かも…てっ」
どりゅんっ!
次の瞬間、漢妖歌の静止を振り切り、水浘愛は身構える来訪者に向かって走り出す。漢妖歌は不安が胸の内の大半を占めるものの、まさか水浘愛には本当にあの来訪者に一泡吹かせ、時を稼ぐだけの算段があるのかもしれぬとも考えてしまう。何しろ普段何も考えてなさそうな、いつもちゃらけまくってるだけの水浘愛がああも自信たっぷりに言い放つのだから。
もしかしたら水浘愛ならやってくれるかもしれない、此処ぞという時に大活躍をしてくれるかもしれない。
不安を抱きつつもそう期待しながら漢妖歌は水浘愛のことを見守った。
そして、
(躊躇わない…ッ、出し惜しみしないッ。水浘愛が今しなくちゃいけないのは、この技で時間を稼ぐことッ)
決意を固めながら水浘愛は来訪者へと突っ込んでいき、素早く体を捻りながら秘策の発動態勢に入る。
にゅるるるるっ!!
「■■!」
ビシッ!
「降参ですッ!」
土下座の姿勢で来訪者に降参した。
「……」
「…■■…」
その光景に漢妖歌も来訪者も思わず止まってしまい、水浘愛の土下座を見ていることしか出来なくなってしまう。
にゅるふっ…
(完璧…ッ)
対して水浘愛は額を地面に擦り付けながらこれは決まったなと口角をニマリと上げていた。
■■…ッ!!!
「■■……ふざけんなこのゴミ共!!」
ゴォオ■■!!!!
「アヂャアアア!!」
が、当然と言えば当然のことだが、その程度のことで来訪者が戦いを止めるわけもなければ、それで両者のことを許すわけもなく、勢いよく口から大火の如き熱線を放つ。土下座の体勢であった水浘愛の体は瞬く間に炎に包まれ、液状の体はたちまち崩壊を始める。水浘愛はその中で悶えつつ何とか炎の中から脱すると、
「くっそぅ! 謝って油断した隙を突く完璧な作戦がァン!」
バババッと体に付いた火を手で払いながら怒り混じりの声でそう言った。どうやら水浘愛の作戦としては、降参だと謝ったフリをして来訪者を油断させ、その不意を突くようだったが、来訪者には全くと効果がなかったようだ。
と言うよりも、どうしてこれが通用すると水浘愛は思ったのだろうか。殺気立った敵をわざわざ逆撫でるようなことをしておきながら不意打ちなんぞ出来るわけがないと何故気が付かなんだ。
「だぁあもうっ、言わんこっちゃないわ! 変に期待した余の考えが甘過ぎたわぃッ」
漢妖歌はガシガシと髪を掻いて呆れながら煤塗れになった水浘愛の元へ一目散に駆けて行く。当然来訪者を倒せるような策なんぞ浮かんでいない、ましてやそれを考えられるだけの余裕も猶予も水浘愛は全くと作ってくれなかった。
「ぬがぁあ! くたばれぃい!」
「■! また毒を喰らわせるつもりかっ■! だが、今度はそうもいかんぞ!」
大声を出し、大百足の体の一部を覗かせ、大きく腕を振り被りながら漢妖歌は来訪者に飛び掛かる。もちろんこの攻撃が来訪者に当たると漢妖歌は微塵も思っていない。全ては来訪者の意識を自分へと向け、水浘愛のことをその側から引き剥がすためだ。
(また何本か腕が消える…か)
スバババッ
飛び掛かりつつ漢妖歌は業火の中に自分の腕を生やし、その中で身を捩る水浘愛を引っ張り出そうとする。
グァ■!! ガ■ッ!!
「……!」
「…気が付いていない…■、そう思っていたのか? ■…ふん、馬鹿なガキだ」
しかし何とかその炎の中にいる水浘愛のことを掴んだ漢妖歌の腕を、来訪者はグシャリと踏み躙った。
分かっていた、来訪者は気が付いていたのだ。漢妖歌が自らを囮に水浘愛を救おうとしていたことなど。わざと大きな掛け声と大振りな攻撃も自分の意識を逸らすためのものだということなど。
そんな浅はかで稚拙な発想に気が付かないわけがないだろうと来訪者は余裕綽々な態度で漢妖歌の攻撃を受け止め、そして、
「うぐぉっ…」
メギッ! ■■ギギ……!!!
「ガッ…!」
片手で首を鷲掴み、絞め上げる。来訪者の腕力は漢妖歌の体を軽々と持ち上げ、圧倒的な握力で喉を潰す。
「…!」
(ごの゛…!)
ズズズズッ!
漢妖歌は何とかこの手を振り解かんと消え入りそうな意識の中で大百足を動かし、自分を掴み上げる来訪者の側へ何本か手を出現させる。そしてその日で来訪者の腕を振り解こうと持てる力で抵抗するが、息も絶え絶えの状態にされている漢妖歌が振るう手はあまりにも弱い。
ならば毒尾だ、毒顎だと、腕が通じないと見るや漢妖歌は大百足の体を出現させようとするものの、すでに意識が朦朧としているためか動きは非常にとろく、これでは放ってもかわされてしまう、当たったとしても先程のように突き刺せないと分かってしまった。
「終わり■、死ね■!」
そして来訪者の手の力が更に強まり、本格的に喉を潰し、首の骨をへし折ろうとし始める。
にゅぶるぅん!
「ふ、い、う、ち」
「■■?」
「あたーっく!」
ぬばぁ!!
瞬間、炎の中で身を捩っていた筈の水浘愛がそう言いながら来訪者に向かって伸び上がる。その速さは先程土下座のために走っていた時以上であり、握った拳が向かう先は来訪者の下顎であった。
しかし喰らわせる前にわざわざ不意打ちと口に出してしまったため、来訪者はすかさずその攻撃に気がついてしまい、
「はっ、■■バカが」
ヒョイと容易くかわされてしまう。
「本命こっち!」
プァッ!!
ビヂュッ!!
が、それと同時に水浘愛はぷくっと頬を膨らませると、口から鉄砲の如く唾…水を打ち出した。
まさにそれこそ不意を突く攻撃。先程の土下座や投石といい、水浘愛の技には必ず初動がある、事前に何か言う阿呆なところがあると言う刷り込みを、観念を、水浘愛は来訪者に染み込ませていたのだ。
その不意打ちなる水によって生じた来訪者の一瞬の隙を水浘愛は逃さず、
「おるゃあ!」
ドゴォンッ!!
勢いよく漢妖歌の首を絞め上げている腕をぶん殴る。瞬間、来訪者の手から漢妖歌の首が離れ、解放された。水浘愛は炎の中に落ちる前にすかさず漢妖歌のことを抱き抱えると、自分の体の一部を切り離しながら炎からの脱出を成し遂げる。
「大丈夫ぃ?」
「ゴホッ! ゴホッ! ゴフオ…ほぉ…酷い目に遭ったわぃ」
「不意打ち失敗てへぺろろろろ」
「ぅたく…こんのアホめぇ…」
そして来訪者と間合いを取りつつ、水浘愛は漢妖歌に意識を取り戻せさせ、何とか立たせる。
「だが…1つ浮かんだぞ、策がな」
「奴を倒す策?」
「ああ…まぁ、な…」
「お〜、漢妖歌てゃんさっすが〜。ついでに水浘愛にも1個浮かんだよ」
次回の投稿もお楽しみに
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