消えぬ闘志
お待たせしました
グリリ…!!
「…■■!」
「やっとこさ、かの」
…ズブッ!!
ふと来訪者が視線を落とせば、そこには大百足の毒顎が深々と自分の腹に突き刺さっている光景。当然顎からは猛毒がジワジワと染み出しては内から来訪者の体を獰猛に蝕んでいく。
猛毒が来訪者の体をズタズタに喰い荒らし、喰らった箇所から破壊していく様はよく見ずとも顕著に現れ、毒が広がっていくのと同時にその組織が壊死していくのが見て取れる。
その光景に漢妖歌は吹き飛んだ箇所から体液を吹きながらも、やっと一撃かますことが出来た、此処までやるのに随分苦労してしまったなぁと他者事のようにあっけらかんとした表情を浮かべていた。
「ぐ…ぬっ■! こ■ガキ!」
バギ■!!!
「ぶぬぁっ!!」
が、次の瞬間怒り任せの来訪者の手によって漢妖歌は薙ぎ払われ、吹き飛ばされてしまう。当然れと同時に突き刺していた毒顎も引き抜かれ、大百足は再び側の世界へと引っ込んでしまう。
ブバ■! ボタボタ…!
「■■……! グ、ガ……こ、これは…毒……かヴァッ…!」
しかし来訪者とて被害甚大。打ち込まれ、注入された猛毒は今尚来訪者の肉体を内側から破壊している。しかも毒が回る速度はかなり早く、すでに胸の下、更には内臓の奥深くまで及ぼうとしていた。
「クソ…が…■。だが……■がこの程度で…!」
ズブッ…■!!
と、猛毒が今にも内臓に毒の手が届こうとした次の瞬間、来訪者は自分の体に爪を突き立て、
「ぬぁあ■! ガ■!!」
■ドバッ!!!
力任せに肉を抉り、毒に侵された箇所を吹き飛ばした。全身に行き届く前に、毒の牙が自分の体を蝕み尽くしてしまう前に。解毒が出来る薬や毒の増殖を止める作戦、今すぐに毒に勝るだけの治癒能力を得る方法など来訪者にはない為、こうして毒そのものを正常な体から切り落とす他なかった。
ブシシュ…■! ブッ…■…!
「…■…ふ…ふん■…この程度で……!」
そうして自分の体から毒を抉り飛ばした来訪者。その部分からは大量の体液が吹き出すも、毒を全て切り離せた為か、それ以上に肉体が破壊されない。しかし来訪者が自らの手で自らの体を大きく傷付けたのは紛れもない事実。
ギリギリと歯を食い縛り、全身を巡る激痛に苦悶の表情を浮かべながらも、⬛︎⬛︎⬛︎に歪められたことで得た力でなんとか肉体の再生を試みていた。
と、その最中、吹き飛ばされた漢妖歌はしばらく地面を転がった後に立ち上がると、すぐさま再生途中の水浘愛の元へ向かう。ある程度は元の形には戻って来ているものの、まだ完全でない水浘愛はにょんにょんと体を揺すっている。
そんな水浘愛へ漢妖歌は体液吹き出す自分の体を向けると、
グギュウウ……!!
「水浘愛ッ、これを」
ボタタタッ…
「んぇ…えぇ!?」
ギチギチと締め上げ、体液を絞り出しては再生途中の体に滴らせていく。液状に近い体をしている水浘愛が自分の体を再生するには、同じ液状のものを摂取するのが最も早い方法なのだが、しかしまさか漢妖歌が自らの意思で自らの体を絞り、体液を吐き出して自分の体に滴らせるとは思っていなかった水浘愛は思わず驚き、困惑の声を上げてしまう。
「ちょちょちょい! 待っち待っち! 何してんねん!?」
「え…んにゃそらぁ…水浘愛ん体を回復させよと…」
「いやいやいやいや! 漢妖歌てゃん!? 漢妖歌てゃんの体が!」
けれども漢妖歌は何処吹く風と言った様子で自らの体を絞り続け、トクトクと体液を注ぎ続ける。
「よいよい、余の体や血なんぞ、な」
「駄目でしょ普通! だって腕が…! 血が…!」
「案ずるな、早う回復に努めぃ。彼奴を撃破するにゃあ其方の力が必要不可欠よ」
自分に注がれる体液を吸い取ることなく水浘愛は問い掛けるが、漢妖歌は尚も気にも留めずにいた。自分の体などどうでもいいから、水浘愛は早く回復に努め、万全の状態へ戻れ、と。
「えぇ…いやでもだって…」
「早うしろ。でなければ全員くたばるぞな」
その言葉に水浘愛は尚も困惑しながらでもだってを繰り返すものの、漢妖歌は一切下がることなく早く水浘愛が万全の状態になることを優先していた。
「ど…ど…どうなっても知らないよ! 水浘愛は!」
「うむ」
それから間も無く、困惑していた水浘愛はいよいよ覚悟を決め、漢妖歌の体液を飲み始める。
すると、取り込んだものが液状であり、更に両者共々魔快黎様の子供と言う同じ立場でもあるこど相まり、水浘愛の体は先程以上の速度で回復していく。
だが漢妖歌は反対に体液の出し過ぎで弱っていっているように見える。ただでさえ来訪者との戦いで大きなダメージを負っているのに、そこへ大量に体液を吹き出しているのだから無理もないだろう。しかし当の漢妖歌は体に大惨事が起きているにも関わらず、水浘愛の体の回復に努めている。
「…っ」
どりゅん!
「…どうかの?」
「一応漢妖歌てゃんのおかげで完全復活水浘愛だけどぅさーにしてもなー。漢妖歌
それから間も無く完全再生を終えた水浘愛は来訪者のことを睨み付けるも、それ以上に自分を再生させる為だけに体液と肉片を与え続けた漢妖歌の方が辛そうに見えてしまう。
だが、
「もうよいか? ならさっさと縫合してしまおう」
漢妖歌は呆れ、気だるそうに側にある世界の中を這い回る大百足を自分の側に呼び寄せる。そして、
シュルルルルル
「案ずるな、腕はまだまだあるからの」
「えっ…えっ…」
「この腕にするか」
バキッ!!
キチキチ…ギチ…
大百足の中の腕を1本、吹き飛んだ箇所の腕を1本選び、音を立ててへし折った。そしてその腕を他の無数の腕を使って運び、失った部分へピタリと合わせる。
キチキチチチ…
するとその腕の断面と漢妖歌の体の断面が手を繋ぎ合い、絡み合うように結合を始め、瞬く間にガチリとくっ付く。縫い目の跡のようにその結合部分はくっきり残っているが、それでも吹き出していた体液は止まり、
ヒヒュンッ! ヒュフヒュルル!
「うむ、問題ない」
漢妖歌の体は失った腕とその感覚を振り回しながら取り戻し、確認している。
「そ、それは…? 漢妖歌てゃん…」
その光景に水浘愛は恐る恐る尋ねると、
「これかぃ? こりゃあ余の体の一部……いんにや、余がこの巨体の一部と言うた方がええか。余にもまだ詳しいこたぁ分かっておらぬが、とかくこりゃあ余の体であり、余達の味方よ」
漢妖歌は尚もあっけらかんとした表情でそう答えた。自分の体の一部を切り落とし、失った部分と縫合するという大それたことをしていると言うのに。
されどあまりにも漢妖歌がさも当然のことであるかのように話すので水浘愛はそんなものなのかと変に納得してしまい、傷口が塞がった漢妖歌の体とその背後で蠢く大百足の体を行ったり来たりするしか出来なかった。
そんな水浘愛を前に漢妖歌はヒュンヒュルンッと縫合したばかりの腕を付け根から振り回すと、
「うむ、何も問題はないな。されど腕を1本失ったんは些か不便。いずれ生えて来るだろうが、彼奴のを欲し、手に入れる方が早そうだ」
失った分の腕は目の前の来訪者から貰うことにしようと意気込み始める。
その様子に水浘愛は、漢妖歌てゃんはこんな性格をしていたのかと驚くも、今は共に戦って目の前の敵を倒すことが先決だと思考を切り替え、共に佇む。
「再生は終わったか、水浘愛。それならば余と共に戦ってくれ」
「もちろん、やってやるよ!」
次回の投稿もお楽しみに
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