覚悟に賭ける
お待たせしました
ミシミシミシ…ッ!!
理想を語り、実現すべく拳を硬く握る欄照華。顔にはとても小さな子が浮かべるものとは思えぬ険しさが、そして自分の理想の邪魔となる目の前の敵を討つという決意が脈々と表れている。
「……随分と大口を叩くじゃあないか…どうやら本気で■んな世界が実現出来ると思ってるらしい…な」
「…」
そんな欄照華の本気をその姿から見出した来訪者はやれやれと呆れるように首を振ると、
「だが…■、それは不可能だ。そんな世界、実現しない」
変わらず欄照華の世界など実現出来ないと言い放つ。
「■が貴様を殺すからだ。いや、殺すんじゃあない。跡形もなく、チリ1つとて残さず、根っこの先端とて余すことなく、完全に消し去る。そうすれば貴様はもう二度と再生出来ない、今後俺が貴様を見ることは絶対にないだろう?」
「……かも、な」
更に来訪者は目の前の欄照華を、厄災の子をただ殺すのではなく完全に存在を消し去るとまで言った。何しろ確実に焼き殺したと思っていた欄照華は再び自分の目の前に現れ、しかも全身を木々に貫かれようともピンピンしているのだから。
やはりどんなに小さくとも、幼くともこのガキは厄災の子。体の一部が残っていれば何度でも再生出来てしまうのだ、と来訪者は考えていた。
だからこそ確実な方法、肉体を完全に消し去って始末することにしたのである。
(完全に消える…か。たしかにそれなら此方ももう復活出来ない…かもしれない。けど…)
その言葉と来訪者の本気具合に欄照華も次はないと、もしこの戦いに敗北すれば今度こそ蘇ることは出来ないと悟った。しかしそれと同時に、
(全て消しさえすれば…消し去ってしまえば…此奴も体の再生は出来ない…! そうすればこの…水浘愛達の敵も完全に無くすことが出来る…!)
ビシッ…ッ!
(やられるくらいなら……やってやる…!)
グッ……ッ!! ブシゥ…!
完全に消してさえしまえば二度と再生出来ないのは来訪者も同じことだと気が付き、そして消されるくらいならば逆に消し去り返してやると手のひらの皮を指先が突き破らんとする程に硬く拳を握って睨み返す。来訪者とは違ってその術を見つけたわけじゃあないが、やらねばどっちみち殺られるとすでに悟っている欄照華の決意は硬い。
「消えて無くなれ、⬛︎⬛︎⬛︎の子」
「消えて無くなるのは…汝の方だ…! 此方がくたばろうとも…この体が朽ちても…汝だけは倒す…絶対に…!」
来訪者と欄照華、お互いがお互いに啖呵を切った瞬間、
ドァッ!!
同時に駆け出し、同時に間合いを詰め、同時に体を捻り、同時に拳を繰り出した。
バグシャ■ッ!!!
そして繰り出された拳は鈍い音を辺りに響かせ、
ズグシャアンッ!!
次には勢いよく地面に叩き伏せられる音を轟かせる。
「グォボ…っ」
「呆気なかった…な■!」
そこには来訪者の拳に顔面を叩き潰され、かち割られ、ビチャビチャと体液を吹いている欄照華の姿があった。
ビクッ……ビクッ……
虚しくも欄照華の小さな拳は来訪者に届くことなく、空を切るどころか放つことさえ叶わなかったのだ。そうして雑草の如く潰された欄照華は小刻みに痙攣しながら体液を吐き続けている。
「じゃあ、■ね」
そんな欄照華に来訪者は容赦なくトドメを刺そうと自分の手に力を込めた。
ブバッ
「ゔぐぅ■…!?」
その時、
ボチャボチャボチャ…ッ
「ゔ…な゛…!? ごっ…■…なん゛…!?」
突如として来訪者の口から血が大量に吹き出し、思わずその場に突っ伏してしまう。だがどんなに口を抑えても血は絶えず流れ続け、地面に降り注ぎ続ける。
まさしく喉が焼けるような感覚、いや焼けるのではなく言葉通り腐り落ちていた。指で強く押せば容易く突き破ってしまえそうな程に皮も肉も次々に腐っていく。しかもその範囲はじわじわと広がっていき、顎下や首元にまで伸びようとしていた。
ドブドッ…ドブォ…ッ
「ぎ…ぎざま゛……! ご■な…!」
突如として起きた自分の体の異常。それがすぐ目下に潰れている子によって起こされているものだと来訪者が即座に理解すると、
ズリュリ…
「そぅ……ご…れ゛…ばッ……此方の…毒…!」
同時に欄照華は潰れた顔のまま立ち上がり、睨み付ける。
ブヂュッ…!
「ごの…毒ばッ……此方が集め゛…ッだ…毒…猛毒…! 汝のこどを゛…殺ず…だめの…! 此方…も゛ろ゛と゛も゛…!」
潰れた欄照華の体から吹き出す体液、そしてその体液が気化したもの。それらはかつて欄照華が厄災によって犯された大地を癒すべく自らの体を持って取り込んだ猛毒であった。大地に根を張り巡らせて取り込んだ厄災の猛毒は欄照華の体の中で完全に解毒されることなく、むしろ凝縮され、その威力を増していっていたのだ。
更に生まれた毒は体を腐らせるのと同時にその生命力を蝕んで増殖しては、また体を壊死させていく。
しかし此処までの猛毒となったのは、ただ毒を取り込み過ぎたというだけではない。
むしろその猛毒を持って自分の大切な者達の敵を滅する、自分諸共消滅させるという欄照華の、厄災の子の強い願いによるものであった。
欄照華の願った、目の前の敵を討ち滅ぼし、消滅させる力。
その願いは猛毒の体液という形で叶い、今まさにそれを浴び、吸った目の前の敵を滅ぼそうとしている。
だがその猛毒は、
「グブッ……! ゲボッ! ゴボッ!」
ビチャッ
「……アグァ…バ……」
(……此方も…か)
欄照華の体さえも蝕み、腐らせ、破壊し、殺していく。来訪者同様欄照華もすぐさま片膝を突き、口を抑えながらもゲボゲボと腐り落ちた肉片を吐き出してしまう。
(けど…これでいい…皆を守れるのなら…!)
だが欄照華は完全に崩れ落ちることなく、まだ膝を突いていない方の足にメキメキと力を込めて再び立ち上がると、
「言っだ…ばず…ら゛…! ぐだばっで…も゛…ッ! 朽ぢで…も……! 汝は絶対に゛…! 倒ず…!」
グバッと口を空けて抑えていた手を中に突っ込む。そして腐って脆くなっている口の中の肉を指先で引き裂くと、
ズブァ…!
(覚悟は出来てる…!)
ヴッ…ゥウウウウ!!
喉の肉片ごと猛毒の体液を来訪者に噴き掛けた。裂いた箇所から吹き出した大量の体液と肉片は勢いよく来訪者の顔に降り注ぎ、
ブジュヂュブゥウウウ!!!
「グッ…バ■ァッアアアアアギャアアアァア!!」
勢いを増してその体を殺しに掛かる。堪らず来訪者はのたうつも、すでに目や口の組織はズタズタに崩れており、手足もジワジワと腐っていく。その痛みに悶え、暴れれば、脆くなった組織は衝撃で更に壊れていった。
「ギ…バ…■ガ…!」
ブヂャ……グチャァ…
「ごれで…い゛…い゛……此方どどもに……死ね゛…! ブッ…ヴッ…!」
そんな来訪者に欄照華は更に追い討ちを掛けるかの如く喉奥に指を突っ込み、自らの肉を引き裂いて体液を吹き出し続ける。当然欄照華の体も急速に死んでいき、今にも腐って死んでしまいそうだが、欄照華にとってそんなことは問題ではない。
今此処で敵を倒す。死んでも倒す。絶対に倒す。
例え死んでもこの体から吹き出す猛毒が敵を殺してくれる。そう確信しているからこそ、欄照華は死ぬ気で来訪者を殺しに掛かった。
「グギギ…■…ン゛…ガァアア!!」
ビァッ!!
「ッ!」
ドギャンッ!!
けれどもその時、来訪者は死力を振り絞って動く気配のなかなかった拳を振るう。自分に拳が振るわれると気が付いたその時にはもう欄照華は殴られ、体は宙を舞っていた。
ドチャッ!
「グヴ…」
「ぞの゛…体…毒ごど…燃やし■…で…尽ぐぜば…!」
ズッ…!!!
大きく距離を離され、地面に叩きつけられてしまった欄照華に向かって来訪者は震えながら手を伸ばすと、猛毒ごと完全に体を燃やし尽くそうと最後の力て熱線を放とうとする。
噴き出す体液は言わずもがな、気化した毒さえも届かない距離。しかし来訪者が死力を振り絞って放つ技は確実に自分を焼き尽くす。
対して自分の猛毒に犯され尽くした欄照華の体はもう動かせず、立ち上がることさえ出来ない。
「グ……」
(体が…もう…)
その状況でも欄照華は必死に動かぬ体に力を込め続け、大切な者達を守るために戦おうとし続ける。
ズァッ……!
「終わり…■…終わり…ダァアア!!」
そして来訪者の手から最後の熱線が動かない欄照華目掛けて放たれる
ヒュッ
タンッ
「……ッ?」
「くっ……うぉあああああああ!!」
ズリュンッ!!
ドガガ!!
「だぁああああああッ!!」
ヴッッ!!!
「■……」
ジュアッ……
よりも早く、瞬間移動して来た存在が放つ光波熱線が来訪者の体を消し去った。
次回の投稿もお楽しみに
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