魔快黎様=
お待たせしました
「……⬛︎」
純白にして何の含みもない純粋なる塊を産み落としてからしばらく経ち、⬛︎⬛︎⬛︎は未だに動かずにいた。大きくなっていても腹の中に抱え続けているため動けなかった時とは違い、すでに産んで体外に出しているので全く動けないわけじゃあない。
ならば何故⬛︎⬛︎⬛︎は今尚動かないでいるのか。
理由は単純、⬛︎⬛︎⬛︎の手の中には今、生まれたばかりの純粋無垢な真白の塊がいるからだ。⬛︎⬛︎⬛︎が1つの塊であったものを自身の腕を持って4つに分かち、8本ある腕を2本ずつ用いて優しく包み込んでいるのである。
自分が下手に動けばこの手の中にいる者達は大変な目に遭ってしまう。この者達のことを守るのは自分しかいない、自分がこうして守るしかない。
よくは分からないがそんな気がする、そう⬛︎⬛︎⬛︎は思考してしまう。
今までこのようなことなどなかった、いや考えると言うこと自体なかった筈なのに。
されど純粋無垢な塊の力は産まれて尚健在であり、
ムクムク…ッ! グングン…ッ!
「…⬛︎!」
⬛︎⬛︎⬛︎の手の中で包まれていようとも、お構いなしにどんどん大きくなって行く。まさに成長、純粋無垢な塊は今親の手の中で育っているのである。よもや自身の体外に出て尚大きくなるのか、包み込んでいる自身の手さえ超える力をこの者達は持っているのかと⬛︎⬛︎⬛︎は驚いてしまう。
が、それでも守らなくちゃあない、何からその者達を守ると心得ているわけじゃあないが、とにかく自分がしなければならないと⬛︎⬛︎⬛︎は自身の手を持って産んだものを包み続ける。
もそもそ…!! どんどん…!!
「……⬛︎⬛︎!!」
けれども産んだ者達の成長力は到底⬛︎⬛︎⬛︎の手の中に収まるものではなく、
ぐぐぐぐ……
外へ出ようとその手を退け始めていた。その力に⬛︎⬛︎⬛︎は、一体何処からこれ程までの力を得ているのだと、外との繋がりを隔てるように2本の腕で包んでいる筈なのにと更に驚いてしまう。
けれどもこれ以上力を込めてはその者達のことを⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ッと潰してしまい兼ねない。無理に手のひらの中に抱え込もうとすればこの者達によくないことが起こってしまうと⬛︎⬛︎⬛︎は直感的に察した。
そしてもう完全に自身の手の中に収まらない程の力をその者達が持つようになると、
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎…
「…⬛︎⬛︎…」
ズズッと静かに⬛︎⬛︎⬛︎はそれ以上腕に力を込めず、静かに地面に近いところへと持って行く。何となくだが腕を持ち上げたままでいるとよくない気がする、万が一その者達が手の中から落下するようなことが起きてしまったらただでは済まない予感がすると感じたからだ。
すると、
メキメキメキメキ……
ある者は成長で得た体の力のみで自身を覆っていた手を退け、
ググググ……
ある者は幾つもの腕と尾で隙間を作ってそこから這い出て、
ニュルルルル……
ある者は形の定まっていない体で流水の如く飛び出し、
グゴゴゴゴ……
ある者は体の力ではなく念力によって手を持ち上げて出て来る。
メキキッ
スルリッ
ベニョッ
テトトッ
そうして純粋無垢にして真白、1つであったものを切り分けられて4つの塊であった者達は、ついに混沌の世界に降り立った。されど元々同じ真白の塊であった筈のその者達は各々で全く異なる形を成しており、何1つとて同じではない。
されど最初にすることは皆同じであるようで、産まれた者達はキョロキョロと辺りを見回し始めた。
まさにそれは幼子が最初にする行動。簡単に言えば、親探しである。自身を産んだ親が何処にいるのかと、その瞳で見ると言う行動だ。そして最初に見た者を本能的に自身の親として判断する。それは今こうして混沌の中に産まれて来た者達でも同じのようで、懸命に辺りを見回して自身の親を見つける。
だがこの世界には生まれて来た者達と、厄災そのものである⬛︎⬛︎⬛︎しかいないため、その者達が自身の親を見間違えると言うことは起こらなかった。
しかし、
「……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
⬛︎⬛︎⬛︎は知らなかった。
自分が周りからどのような存在として見られているのかを。
そして厄災そのものである禍々しい姿が如何に恐ろしいものであるかを。
どれ程並行世界を覗く目を持っていたとしても、次元を一瞬で超えて異世界を渡り歩くことが出来たとしても、自分自身がどんな存在であるか、自分自身が何たるかを知ることはなかった。と言うよりもそんなことをすること自体⬛︎⬛︎⬛︎はしなかった、しようとも思わなかったのだ。
故に、
「「「「……」」」」
「……⬛︎⬛︎?」
――
⬛︎⬛︎⬛︎の禍々しく恐ろしい姿を見た瞬間、その者達は皆を目を丸くしてし、硬直してしまう。そんな反応に⬛︎⬛︎⬛︎もどうすりゃいいのかと少し戸惑い、止まってしまう。
が、
「……はぷ!」
流水のような体で手の中から出て来た子は自由奔放な様子でその姿を楽しみながら、にゅるにゅると⬛︎⬛︎⬛︎の体によじ登って乳のような形をした丸く柔らかいものにはぷっとむしゃぶり付き、
「……ふ…ふ…びぇええええ!!」
念力によって手の中から出て来た者は戦々恐々とした様子で哀しみ、その恐ろしい姿に大粒の涙をボロボロと流し、大声を出して泣き喚き、
「……ぎっ! ぐぅうう!」
強大な腕力のみで手の中から出て来た者は張眉怒目とした様子で怒り、五月蝿いっと言わんばかりに大声を出して泣くこの子の顔を引っ叩き、髪や肌をむぎぃっと抓り、
「……ぉぉおお!」
無数の手と尻尾を使って手の中から出て来た者は興味津々な様子で⬛︎⬛︎⬛︎の姿を見ては、泣き喚く子や怒りを露わにする子そっちのけで喜び、その体を楽しんでいる子同様自身も腕を使ってその体によじ登っては、尻尾のようなものに引っ付いた。
「……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎っ!!?」
そんな状況を前に⬛︎⬛︎⬛︎は激しく動揺し、楽哀怒喜の感情を見せるこの子達のことを何とかしなくちゃあならない、少なくとも自分の姿を怖がっている子とそれに対して怒っている子のことを落ち着かせなくてはならないと、
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ュルル⬛︎⬛︎ュル…
「……⬛︎⬛︎っ!?」
「びえええええ!」
「うぅうう! るるるるる!!!」
「ぶー…はぷー!」
「きゃっきゃっ!」
自身の体をギュルギュルグチュルと音を立てて変形させ、変身し始める。同時に8本の腕で怒る子と泣く子を優しく引き剥がして。
しかし1回の変身ではまだ完全に禍々しさは抜け切らないようで、まだ泣く子の涙は止まらない。その体を楽しんでいた子は変身によって少し縮んでしまった体に対してぶ〜っと少し不機嫌そうな表情となるも、すぐさま残っている乳の形をしている者に噛み付く。対してその体を興味津々で見ていた者は、変身も出来るのかと更にきゃっきゃっと更に喜んでいた。
けれどもまずは泣く子の涙を止めなくてはならない。喜んでいたり楽しんでいる子には少し悪いが、更に変身を重ねなくてはならないと魔⬛︎⬛︎は再度変形を開始する。
グジュルル⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎…ニチュッ…⬛︎⬛︎…グチュルッ
「……これ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!?」
「…ッ、びぇええええん!!」
「…うるさぁあ!」
「ぷひゅ〜、よちよち」
「みゅ〜」
そうして2回目の変身を終え、更に禍々しさを抜いた姿となった。だがそれでも泣く子は涙を流し続け、怒る子は五月蝿いと叫びながら自身を遮る手を乗り越えて黙らせようとしている。しかしどんどん縮んで行く体に楽しんでいた子はにゅるんっと離れると、泣く子の元へ近づき、その涙を指でなぞるように拭ってあげながらよしよしと落ち着かせようとし始めた。それを見て喜んでいた子はみゅ〜っと口を尖らせながら、変身してしまうのならば自分ももっと体を堪能しておくべきだったと後悔する。
しかし泣き止まないのならばまた変身しなくてはならないと、魔快⬛︎は思い、
ぐぐぐ⬛︎ぬ…グリュ⬛︎…チュルパッ
「これでどう!?」
「……ぅっ」
「…む…」
「……んぉお」
「わぁあ!」
ついに3回目の変身を見せる。
するとその姿にようやく涙を流していた子はまだ少し噦り上げながらもようやく泣き止んだ。それに対して怒っていた子もやっと静かになったかと乗り越えようとしていた手であった部分から離れる。そして楽しんでいた子と喜んでいた子は3段階の変身を見ておおっと興奮気味に目を丸くしていた。
そうして厄災そのものであった⬛︎⬛︎⬛︎は変身を重ねることでようやく生まれて来た子達のことを止めることが出来、一先ずはこれで大丈夫かと光球輝く胸を撫で下ろす。
と、その時、落ち着いた子達はわらわらと足元に近づいて来た。甘えるように、興味を持つように、安心するように、楽しむように。
そんな子達のことを⬛︎⬛︎⬛︎であった者は順番に2本になった手で撫でてやると、
「ママ」
「…ママ」
「……ママァ……」
「ママッ」
子供達はママと言いながら、ぎゅうとその体に抱き付いて来た。
そして魔快黎様はその子供達のお母さんになる。
次回の投稿もお楽しみに
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