崩壊
お待たせしました
ズギャオッッ!!!!!
次の瞬間、来訪者は倒れる幼子目掛けて容赦無く破壊熱線を打ち込んだ。生えていた腕のほとんどを捥ぎ取り、ビクビクと痙攣しながら悶える漢妖歌は何も出来ぬままたちまち来訪者の熱熱線に呑み込まれてしまう。
ブス…ブスブス…
「これで奴は消えたか。チョロいもんだな」
その後、来訪者の目の前には抉れ、焦げ付いた地面が音を立てて煙を吹いており、そこに漢妖歌の姿はない。来訪者は何もいない光景から自分の熱線によって厄災の子を始末出来たと確信すると、次の標的へと振り向く。
「次は貴様だ。奴と同じくちゃんと消しておかないとな」
口元に僅か笑みを浮かべながら言う来訪者。そこから少し離れたところには先程来訪者の放った熱線によって撃ち落とされ、吹き飛ばされた淫夢巫の姿がある。しかし淫夢巫は来訪者が1歩1歩と近づいていながらも動けず、ブルブルと体を震わせているばかりだった。漢妖歌に放たれたものと比べて威力が控えめだったため、淫夢巫は熱線に全身を呑まれど焼失されるまでには至らず、撃ち落とされただけで済んだのである。しかし負った傷も決して小さくはなく、
「……」
「まだ息があるとは。しぶといのか、それとも何かしらの方法で防いだのか…」
ひゅうひゅうと小さく息を吐き、今にも焼け落ちそうになっている翼の激痛に耐えながら地面に横たわっていた。そんな淫夢巫に対し来訪者は手加減していたとは言えどうやって耐え抜いたのだ、まさか防いだのかと訝しみつつも、特に大したことではないと思い。手のひらを向ける。そして、
「まぁいい。ガキの力などたかが知れている。どうせ力ももう残っていないんだろう。抵抗などしなければ先程の1発で楽に逝けたと言うのに、苦しまずに済んだのになぁ」
「…ッ」
自分の手に力を込め、破壊熱線を放つ用意を始めた。瞬間、ブゥンッと鈍くも力強い音を立ててエネルギーが充填されて行き、すでに動けない淫夢巫目掛けて放たれようとしている。当然今の淫夢巫にはそれをかわせるだけの余力は疎か、指先を微かに動かす力さえも残っていなかった。故に自分の頭上で自分を殺せる力が徐々に完成しつつあることを感じつつも、自分に力はもう残されていない事実に歯を食いしばりながら悔しがるしか出来ない。
「今楽にしてやる」
ギャウッ!!!!!
「…」
(ママ…)
瞬間、来訪者は一切の同情や躊躇などなく、むしろ純粋な殺意と憎悪のみを込めて熱線を放つ。たちまち動けない淫夢巫は再度来訪者の熱線に呑み込まれ、
「……」
ズンッ!!!!!
辺りは大爆発し、爆炎に包まれた。もうもうと立ち込める黒煙の中、立っているのは来訪者のみであった。地面は漢妖歌に放った時と同じように抉られ、ブスブスと焦げた音が響き渡る。
「これで、ガキ共は完全に消えてなくなった、と。⬛︎⬛︎⬛︎の同じように多少は苦戦すると思っていたが…厄災の子でも所詮はガキか。考えすぎだったな」
自らの力によって厄災の子は死んだ、消えてなくなった。厄災の子の腕を引き千切り、翼を焼き落とし、小さな体は熱線によって破壊したのだから。と、ふと抉れた地面に目を落とすと、
「…」
そこには千切ったもの残骸か、それとも焼き払った際に残った漢妖歌の肘から先の腕、そして淫夢巫の翼の一部、付け根の部分に当たる小雨覆が焦げたのが地面に転がっていた。来訪者は厄災の子の一部をヒョイと拾い上げるも、すでに死んでいるためピクリとも動かない。
が、
ズンッ!!!!!
この者達は厄災の、⬛︎⬛︎⬛︎の子なのだ、油断は絶対に出来ないと念には念を入れてそれら一部も完全に焼失させる。
「これで生きてたら化物だ」
そう言う来訪者の周りには焼けるような熱気が漂い、空に向かって煙が立ち上がっていた。するとその熱気と煙は吸った空は雲を吐き出し、そして雲はどうどうと雨を降らし始める。雨は焦げ、高熱を帯びた大地をじゅうじゅうと冷やしながら蒸発して行く。
「死んだのならもう用はない」
来訪者は自身にも降り注ぐ雨を浴びつつ、目的が達成されたのならば何時までも此処に留まっている必要はないとしてその場を、この世界を去った。後にはザァザァと勢いが止まらない雨が大地に降り注ぎ続ける。
ーー
そして、
「ほう、■を倒すだと? 貴様が、か? 戯言は存在だけにしておけ」
「めみあは……ほんきだ…! らてすかてゃんは……めみあがまもる!」
同じ頃、水浘愛も別の来訪者と対峙しており、拙くも力を込めて構えていた。すぐ背後には傷つき、全身ボロボロになった欄照華が倒れており、呻き声を上げている。しかし立ち上がれるだけの力はもうなく、自分がズタボロにされた相手と戦おうとする水浘愛を止めることは出来ない。
誰も戦場に向かう自分を止められない、止める者などいない水浘愛は震えながらも勇気を抱いて来訪者の前に立ち塞がる。
「■と戦えばどうなるか、貴様の弱いオツムでも分からないわけがあるまい。それとも、まさかずっと目を閉じてあの光景を見ていなかったのか? なら今度は貴様がそこで這い蹲っている腐草と同じ末路を辿ることになるが」
「らてすかてゃんを…ぉ……ばかにするなァ!」
グワッ!
来訪者の嘲笑混じりの言葉に水浘愛は恐怖を押し殺して怒りながら立ち向かう。自分と比べて遥かに大きい相手、欄照華でさえ歯が立たなかった相手、そんな敵を自分だけで何とか出来るなど到底水浘愛は考えていなかった。しかし今自分がやらねば自分も欄照華も殺されるのは明らか。
ならば策などなくても、考えなどなくても挑まないわけにはいかない。
「どりゃあああ!」
水浘愛は勢いよく来訪者に向かって飛び掛かり、拳をブンと我武者羅に振るって敵の体に叩き付けた。
べちゃんッ
「……ッ」
「…ハッ、何なんだ今のは? まさかその程度で■を倒す気だったのか?」
「う……そ…」
が、炸裂と同時に水浘愛の拳は砕け散り、飛び散る。まさに弾けた水玉、壁に叩き付けられた水風船。当然のことだが、そんなものでは来訪者にまるでダメージを通せない。来訪者はケロリとした表情でそう言いながら、パンチはこうやって放つのだと言わんばかりに、
バンッ!!!
ブシャッ!!!
自分の体に張り付いた水浘愛を殴り飛ばし、引き剥がす。瞬間、水浘愛の全身は吹き飛び、粉砕し、地面にびちゃびちゃと破片となって降り注ぐ。まさに一撃必殺、これで水浘愛は死んだと来訪者は確かな感触と共に確信した。
けれども、
ズリュリュリュンッ
「くぅ!」
「ほう」
「……き、き……きかないもんね…!」
飛び散った破片はすぐさま再集合、融合を果たし、元の水浘愛の姿に再生する。体の構造が液状に近い水浘愛は死んでいたかもしれないパンチの攻撃をいなし、喰らうダメージを最小限に抑えたのだ。だがいくら強がっていても、その拳の威力は水浘愛の頭に確実に恐怖を植え付けており、再生を終えた体はガタガタと震えていた。
来訪者はその姿を見て、ただ自分の打撃がまともに通じないだけの存在だと感じ取ると、
「ならこれならどうだ?」
「ッ!」
ズァ!!!!!
口を開き、勢いよく破壊光線を放つ。それをモロに喰らった水浘愛の全身はジュウッと音を立てて焼け焦げ、蒸発し、消滅する。
ジュウウウウ……!!!
「……ッ!! めみあ!!」
「今度は効いたようだな。他愛もない。所詮はイキがった雑魚か」
その光景を前に、ずっと倒れていた欄照華は思わず叫び、ほぼほぼ動かない体で必死に腕を伸ばす。されどその手は届かず、水浘愛の体は光線によって破壊され、消滅してしまう。
「く……ゥゥ…!」
「さて、次は貴様だ。そう悲観するな、やっと楽になれるんだからな」
「……!!」
欄照華は悲観し、項垂れ、手を付いて突っ伏して絶望していると、そこへ来訪者がやって来て、
「じゃあ、くたばれ」
ズンッ……!!!!!
容赦無くその子目掛けて同じように破壊光線を放ち、その存在を抹消した。
次回の投稿もお楽しみに
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