決着……だが
お待たせしました
ドパァッッ!!!!!
鳴り響き、辺りに轟く爆音。激突する魔快黎様と来訪者の拳はこの勝負に終幕をもたらす。
互いの拳が相手の拳を捉え、衝突する。その瞬間、
ビギギギギ……!!!!!
来訪者の拳が魔快黎様の腕を砕き、真っ二つに裂いて行く。されど来訪者の拳の勢いも魔快黎様の拳の速度も衰えることはなく、真っ直ぐ相手の顔面目掛けて伸び続けた。
そして、
ズガァンッッ!!!!!!
お互いの拳がお互いの顔面を殴り飛ばす。来訪者の拳はある程度突き進んだところで魔快黎様の腕を引き裂き、突き抜けながらその顔面を捉えた。対して魔快黎様は砕けながらも残っている腕を伸ばし続け、拳を来訪者の顔面目掛けて叩き込む。
そして互いの拳の威力は顔だけでなく体さえも吹き飛ばし、
ドザザザ!!! ズガガガ!!!
地面へ倒れ伏せさせてしまう。だが、
グギギギギギ……!
「ゴボ…! ゴボ…ッ!」
メキメキメキ……!
「ふ……ぐ……ァ」
両者とも体液を吐瀉しながらもすぐさま立ち上がろうと踏ん張り、手足を使って強引に体を起こす。積もり積もったダメージがお互い深刻故、簡単に立ち上がることは出来ず、長い時を掛けてしまっていた。しかしそれでも両者は軋み、これ以上は限界だと訴えている体に鞭打って立ち上がろうとする。
特に腕が真っ二つに裂けてしまっている魔快黎様の御身体に掛かっている負荷は凄まじく、今までのダメージも重なってか、
ビシビシビジ…!!!!
「ぐぅ…!」
ボキン…!!! ボロォ…!!!
拳を繰り出した右腕が砕け、付け根から折れてしまう。片腕を失い、バランスが上手く取れなくなった魔快黎様は体勢を崩し、なかなか起き上がれないでいる。
そうして先に立ち上がったのは、
「ハ……グ…」
来訪者の方であった。最後の一撃によって魔快黎様の腕を打ち砕いた来訪者は、足を引き摺るようにしてゆっくりと近づいて行く。何しろ今の一撃で完全に殺すつもりだったのに、まだその敵は生きているのだから。
「ゼェ……ゼェ……」
死ねない、まだ死ねない。この敵を、⬛︎⬛︎⬛︎を、厄災そのものを、混沌を振り撒く存在を殺すまでは。来訪者はその意思と心だけを持って体を動かし、どんどんと距離を詰めて行く。
それから間も無く来訪者はまだ完全に立ち上がれてない魔快黎様まで後1歩と言う距離まで近づくと、トドメと言わんばかりに拳を振り上げた。
「……死……し……シ……ね…!」
ガシャアン!!!
が、同時に来訪者の体は崩れるように倒れ、衝撃でバラバラに砕けてしまう。そんな光景を目の当たりにしつつ、今度は魔快黎様の方が立ち上がった。
「はぁ…はぁ…」
「ク……くそ…」
されど全身が砕け、頭だけになりながらも来訪者はまだ生きていた…と言うよりも、死ねない体なのだろう。眼球をこれでもかと動かして自分を見つめる魔快黎様のことを睨みつけている。
「俺の負け……と言うことか、クソッタレが……。そんで貴様は俺を喰う…ん…だろう……クソ…クソが…ァ!!」
「……」
そして自分の運命を悟りながら、自分が⬛︎⬛︎⬛︎のことを倒せなかったことをひたすら悔やみ続けた。されど魔快黎様は一切表情を変えることなくゆっくりと膝を折ってしゃがむと、
「なぁ…教えてくれるか。何故、恨む? 何故、君達は俺を殺そうとして来るんだ?」
冷静に呼吸を整えながら、何故君達来訪者は自身のことを恨み、殺そうとして来るのだと問い掛ける。
「……ハァ?」
「俺は君達のことをよく知らない、だが君達は俺のことを知っている。教えてくれ、俺はなんだ? 俺は誰だ?」
予想だにしなかった問いかけ、殺すべき敵からそんなことを聞かれるなど思いもしなかったと、来訪者はキョトンとしてしまう。だが大きくひび割れながらも真剣な面持ちで問い掛ける魔快黎様に来訪者はフンと一呼吸入れると、
ニヤ……
「……ハッ、バーカ。誰が言うかよ。どうやら貴様は、貴様の心は自分が何なのか分かってないようだな?」
「…」
「ならずっとそのままでいやがれ! 永遠に苦しむがいい!」
ゲタゲタと笑いながらそう返した。自身が何者なのか知らないのなら、自身が自分達からどれ程恨みを買っているのか気が付いていないのなら、永遠にそうなっているがいいと。自分達の来襲に絶えず苛まされていればいい、自身が振り撒いた種に苦しみ続けるがいいと、魔快黎様のことを睨み付けて。
「言っておくが俺達が此処に来たのは貴様を見つけただけじゃあねぇ! 貴様自身が俺達を呼び寄せているんだ! 俺が突然貴様の目の前に現れたんじゃあない、貴様が俺達をそうしているんだ!」
「…ッ」
「断言してやるよ、貴様は絶対に幸せになれない! 貴様が、貴様自身の力がそうするからだ! 見える、見えるぞ! 貴様が無様に苦しむ姿がなぁ!!」
自分は死ぬ、そうでなくとももう何も出来ないと悟っているが故か、来訪者は罵詈雑言を並べながら叫んだ。更に魔快黎様はどれ程手を尽くそうとも幸福にはなれない、持っている自身の力によって永遠にそれは叶わないと続けて言う。
その言葉に対して魔快黎様は大きく動揺することも、怒りを露わにすることもなく、
「そうか。なら君から得るものは何もなさそうだ」
淡々と、無表情のままそう返した。そして、
パキ……パキパキ……
と、残っている左腕で来訪者の頭を掴むと音を立ててヒビ入った顔を動かし、ポロポロと砕けた破片を落としながら、
ガパァ……⬛︎!
裂けている左顔面の口を大きく開く。口内の奥の奥では⬛︎⬛︎⬛︎の片鱗、もしくは一部が獲物を早く喰らおうと、舌を伸ばすように手を伸ばしていた。
(ようやく……ようやく家族の元へ行ける)
バグン…
来訪者の頭を一口で喰らい、バキバキと噛み砕き、飲み込んだ。残っている体も同様に、体の一部を手に取ってはバグバグと喰らって行く。破片1つとて残さぬよう、来訪者の肉体全てを。
そして来訪者の体を全て喰らい尽くした魔快黎様は地面に転がっている自身の右腕を拾い上げると、
「押さえてりゃくっ付くかな…」
ぐいぐい断面同士を押し付けるようにして接着を試みる。されど御身体の方もかなりボロボロであり、再生も一筋縄ではいかないため、砕けて折れた右腕はなかなかくっ付かない。
「早くあの子達の元へ戻ってやらなきゃなのに…。大丈夫か…? まだ大丈夫か…」
更に我が子を遠方に置いて来ている、目の能力によって無事なことは確認出来た。だがだからと言って時を掛け過ぎては駄目だと魔快黎様は逸る気持ちを抑えつつ、懸命に御身体の再生に注力した。
すると、
ギギギギギッ……ギギッ…
せめて表面だけでも負傷が分からないようにしよう、我が子達に心配を掛けさせないようにしようと言う心と御身体の意思が一致したのか、先の戦いで見せたようにヒビ割れた箇所がチャックを閉じるように消えて行く。右腕もようやくくっ付いた。
けれどもあくまでも底が見えない程の深さをした巨大な湖に薄氷が1枚張った程度。それも負傷した体に鞭打って強引に塞いだのだ。時を掛けて回復すればいいものをいち早く我が子達の元へ無事な姿で戻りたいがためにそうしているのだから、負傷はむしろ治らない。少し衝撃を与えるだけで簡単に破け、更に傷口は広がり、大惨事を生み兼ねだろう。くっ付いた右腕も力が通っていないのか感覚がなく、ぶらぁんと垂れ下がったまま動かせない。
「まぁ…今は見た目だけ取り繕えていればいいか……」
しかし今はそれでもいいと魔快黎様は疲れたように口にすると、
ぐぃい…
「笑っておかなきゃ…な。あの子達が安心出来ない…」
両の指で強引に口角を上げ、笑顔を作ってから我が子達の側へ瞬間移動する。
次回の投稿もお楽しみに
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