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魔の瘴気

お待たせしました

の「残念ながら、それもパスだ。⬛︎⬛︎⬛︎、俺は貴様を殺しに来たんだからな」


「そうか」


 片方の腕の肘から先を失い、戦力を削られた筈の来訪者。(あまつさ)え、失ったその左腕は目の前の倒すべき敵に喰われてしまった。にも関わらず来訪者の戦意は全くと衰えず、尚も貴様を殺すと言い放ちながら対峙し続ける。


「片腕を失った程度で俺の戦意を削げるとでも思ったのか? 生憎だったな、俺は以前のように痛みを感じることはない。どんなにこの身が削られ、喰われようとも、だ。貴様がそうした」


「…それで君がこの世界から去ってくれるのならよかったんだがな。しかしもう君はその程度では止まらないようだ。それこそ、()()()()


「当然だ。俺は死ねない、貴様を殺すまでは、な」


 自ら腕を切り離し、多量の体液が断面部分から吹き出そうと、何も痛みは感じない。その機能はすでに失った、貴様のせいでそうなったと来訪者は魔快黎(まより)様を睨み付けながら言う。だが痛みを感じないが故に恐怖しない、そうなっているが故に怯むことはないと来訪者は死んだように笑った。そんな来訪者の姿に魔快黎(まより)様はもうこの者は戦意を削がれて元の世界に帰ることはないと悟る。

 

 この来訪者を何とかするには、言葉通り()()()しかない。


 ()()()を。



 グワォ…!!!!!


「俺も君に殺されるわけにはいかない」


「ようやく()る気になったか。そうだ、その雰囲気だ。俺が殺したくて殺したくて(たま)らない奴のは、な」



 瞬間、魔快黎(まより)様の全身から異質なるオーラが放たれ、辺りの空間を侵食し始める。


 まさにそれは『魔』、厄災をもたらし、振り撒く存在そのもの。

 とても言葉では表せないナニカ、強いて言うとするならば魑魅魍魎(ちみもうりょう)か。

 その言葉さえも的を得ているとは言い難いが。



 ヒャ…ッッ!!!!!


「?」



 その時、何か風のようなものが来訪者の周りに吹き、通り過ぎて行く。熱くなければも冷たくもない、吐息のにように生暖かいもの。はたまた空間の揺らぎか、そんな形容し難い何かが来訪者の側を通ったのだ。



 パクッ


「んぁ…ッ?」



 が、一体何だと思いや否や、来訪者の体に突然切り傷が走る。触れられていない、明確に攻撃されたわけでもないのに、唐突に体が切れたのだ。しかも一ヶ所だけでなく、顔や胸、腕や足などに様々な大きさの切り傷が走って行く。


「チッ、今度は近づかせないってか」


 ダッ…!!


 目に見えないがたしかに攻撃されている、このままでは不味いと踏んだ来訪者は更に間合いを取るべく大きく後ろに飛ぶ。



 ストッ


「…く」



 だが着地と同時に魔快黎(まより)様はそのすぐ側へと瞬間移動した。故に間合いを取るどころか更に距離を詰められてしまう。その能力(ちから)に来訪者は今すぐ退避するのは難しいと判断すると、残った腕を握り、殴り飛ばそうと拳を振るう。仮に殴り飛ばせなくとも刃で抉り、怯ませることが出来れば次善だと考えつつ。


 ガギャッ!!!!


「…!」


 その拳は見事に魔快黎(まより)様の左顔面に炸裂した。あいにく吹き飛ばすことは出来なかったが、しかし動きを止め、怯ませることは出来たようだ。

 けれども拳を喰らわせた筈の来訪者の表情は晴れない。たしかに来訪者の拳は敵の顔面を捉え、触れている感触もある筈なのに。次の瞬間、


 バギッ


「このヤロ…!」


 と硬いものがひび割れ、砕ける音が魔快黎(まより)様の口元から響く。来訪者はその音に更に表情を歪ませながら強引に自分の拳を引き戻そうとする。されど拳は万力で固定されているかの如く動かず、むしろメキメキ音を立てながら更にめり込み、引き込まれて行く。


 よく見れば魔快黎(まより)様の大きく裂けた左顔面の口は拳を硬い牙で受け止め、嚙み砕いていた。魔快黎(まより)様は来訪者の拳を喰らい、捕食していたのだ。


 バガッ…!


「クソが…分かっていたことだが…!」


 来訪者は強引に引っ張り、手の皮や肉、骨を引き千切りながら何とか拳を口から引き剝がす。けれどもすでに喰われた指や千切れてしまった指はそのまま魔快黎(まより)様の口内に残り、喰われてしまう。そのため肘先から切り落とした左手程甚大ではないが、右手も指をほとんど失ってしまった。


「貴様相手に無傷で済むとは最初(ハナ)ッから思っていないが、流石に片腕と指のほとんどを持っていかれると参るね。殺すことに変わりはないが…ちょっとばかし態勢を立て直させて貰おうかな」


「君が俺もあの子達も殺すと言うのなら、俺は君を殺す。あの子達を守るためなら、俺は容赦も手加減もしない。君が俺に立ち向かって来る限り、俺は君を本気で殺すつもりだ」


「なるほど…みすみす逃がしてくれるわけはない…と。ならちょびっと作戦変更だ」


 このままでは不味い、されど態勢を立て直せるだけの猶予もない。■■■は本気で自身を殺そうとして来る自分のことを殺す気でいる。間合いを詰めれば喰われ、間合いを取れば瞬間移動で近づかれる。どっちみち近距離戦に持ち込まれ、喰われて終いだ。


 それならば仕方ないと来訪者は覚悟を決めると、



「切り札ってぇのを使う。予定よりもちょっと早いがな」



 本来の想定をいくつか前倒しし、早めの切り札を使うことにしたと告げる。すると来訪者の体内で何かがザワザワと唸り始め、

 

 ギョバッ…!!!


「うぐぁ…はぁ……ハハハ…!」


「また変身か」


 強大な力を持って外へ出て来ようと体表を打ち破り始める。それこそ先程魔快黎(まより)様が切り裂いた傷口を広げ、そこから邪魔になる体そのものをバリバリと割って。


「…皮肉だな…貴様が苦しめるために俺を歪めたことで…今度は貴様が苦しむんだ…。貴様が俺をそうしたから…俺はそれだけの力を手に入れたから……な…。せいぜい苦しむがいいさ……」


「…」

(また力が増している)


 ズブチャ…!!!!


 そして次の瞬間、体の皮を完全に捨て去り、内側にいた強大な力を持った存在がその姿を魔快黎(まより)様の前に現れる。



「さぁて、始めるか、最終ラウンド。安心しな、これ以上はない。これが俺の全力だ」


「傷も消え、腕も新しく生え変わったようだな」


「俺の元いた世界では、手足を()がれても成長に伴って脱皮を繰り返せば元に戻る生命がいたんでね。もっとも、ソイツらも貴様が滅ぼしたんだが。その者達の仇討ちも兼ねて…■■■、貴様を殺す」


「目標は変わらず俺、か」



 肉体の修復だけでない、失った手や指の再生だけではない。来訪者の全身には荒れ狂う強大な力が満ち満ちている。内に秘めていた力を全て開放し、目の前の敵である■■■こと魔快黎(まより)様を殺す。姿形が変わろうとも、来訪者の瞳の奥では最初の時から変わらぬその闘志が轟々(ごうごう)と燃え盛っていた。



 ヒャッ……ッ!!!!!


 ガギィン!!



「ふん、混沌によって空間の揺らぎを生み、攻撃していたのか。だが今の俺にはもう通じん」


「ほう、なかなか硬い。先程までの攻撃はもう通じないか」


「俺が勝つか、共にくたばるか。2つに1つだ。行くぞ!」



 もう先程のような並の攻撃は通じない、それ程までに来訪者の肉体は強化されているのだ。しかしそれは今の自分の限界であるとも来訪者は言い、宣言通りこれが最終ラウンドの戦いだと向かって来る。



「いや、俺は負けない。負けるわけにはいかない」



 絶対に勝つと意気込み、突っ込んで来る来訪者に対して魔快黎(まより)様は我が子達のためにも負けられないと答えた。



 我が子達の命を背負い、その子達のためにも負けるわけにいかないと戦う魔快黎(まより)様。


 背負うものはないが、これ以上厄災による犠牲は出さないと見たことも会ったこともない者達のために戦う来訪者。



 最後の戦いの火蓋が今、切って落とされる。

次回の投稿もお楽しみに



評価、ブクマ、感想、レビュー、待ってますッ!

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