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自分が自分でいるために

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「…元はと言えば俺の心がまだこの身体と能力(ちから)を完全に使えていないからあの子達を危険に晒してしまうんだろう。あくまでも今は身体が俺の意思に応えてくれるから動けているだけ」

「ああ、しかし」

「分かっている。今のまま能力(ちから)が制御出来ないととんでもない事態を招くってことはな。実際に()()()()()()()がこの世界に来るのも、それの兆しってわけだろう」

「そう…だな。恐らく俺達が考えているよりも遥かに君は能力(ちから)は御し切れていない」


 つい先程起きた事変、それは来訪者と魔快黎(まより)様の判断の過ちによってその子達が危険な目に晒されたと言うものであった。この事態を魔快黎(まより)様と一部達は重く受け止めており、今のまま心が御身体を制御出来ないとかなり不味いことになると話し合う。


 実際に混沌とした体の来訪者達がこの世界を見つけ、敵意と殺意を剥き出しにしながらやって来ているのだ。これは魔快黎(まより)様の能力(ちから)がこの世界を越えて異世界にも影響を及ぼしているためである。来訪者達はそれを追ってこの世界を見つけ出し、魔快黎(まより)様の元へと来るのだ。



「それと…ああ言った連中が誰でもあのように次元を超えて此処まで来れるわけじゃあない。混沌の塊となったまま元いた世界に留まった奴や、途中で止まった連中もいるだろう」

「ッ…」



 そして一部は続けてそう告げる。混沌の塊となった誰しもがこの世界へやって来れるわけではない、全員が必ずそのような能力(ちから)を持ち合わせているわけじゃあないと。即ち、あのような混沌の塊となりながら元の世界に留まった者、もしくは此処に来ることが出来ずにいる者もいると言うことだ。



「身体だけじゃあない。心や精神まで混沌と化した者達もいる。あれだけの激情を君に向けず、他者に向けるような奴がいてもおかしくない」



 加えて、身も心も混沌に染まり、制御不能となった感情を他者に向けるような者が現れたとしてもおかしくない。それこそ理性と言う暴走停止装置が正常に働かず、むしろ加速装置として暴走を促進させてしまうかもしれない。


「その中には俺の子達も含まれている…と」


 魔快黎(まより)様はすでに自分だけの問題じゃあなくなっている、自分のせいで関係のない者達まで巻き込まれようとしている。いや、もうすでにそのような事態は起きているのだと魔快黎(まより)様は気がつく。わざわざ目の能力(ちから)を使って異世界を覗くようなことなどせずとも分かってしまう。



「…でも、結局やることは変わらないか。俺がこの能力(ちから)と体を今よりも使えるようになれば、あの子達が危険な目に()うようなことも簡単には起こらなくなる筈だ」



 しかし自身が能力(ちから)を御し切れるようになれば、この事態も収束する筈。そしてそれは今までして来たことと同じであるため、魔快黎(まより)様はふぅと呼吸を整え、焦ろうとしている心を鎮める。


「まぁそう言うことだ。ただ、うかうかはしてられない」


 その結論に行き着くことは一部達も分かっており、早く魔快黎(まより)様の心が自身らを必要とせずとも御身体を制御出来るようになれば解決すると考えていた。しかし猶予は十分にあるわけではない。焦ればより解決は遠のくとは言え、のんびりしているわけにもいかないのだ。



「…あまり考えたくはないが、もしもこのまま俺が、俺のこの心が身体を制御出来ずにいたらどうなる」



 そうならないことをずっと願っている、今もそうならないように努めている。けれどもそのようなことが起きてしまうかもしれない。万が一それが起きてしまった時、一体どんなことが起きて、どうなってしまうのか、魔快黎(まより)様は一部達に尋ねる。


「……」

「…」


 すると一部達は少し沈黙を挟んだ後、



「きっと、()()()()魔快黎(まより)としての心は消え、再び意思を持たない⬛︎⬛︎⬛︎となるだろう。例え君の心がそれを拒んでも、体が心を見限れば、半ば強制的に消滅する。そしてこうして君と話している俺達の意思も消える」



 このまま進展がなければ、魔快黎(まより)様としての心と存在は消えて無くなり、ありとあらゆる世界に混沌をもたらす厄災そのものである⬛︎⬛︎⬛︎になると答える。例え魔快黎(まより)様がそうなることを拒んだとしても、心がそれを許さなかったとしても、御身体が本来の⬛︎⬛︎⬛︎に戻ろうとするからだ。このまま制御出来てない能力(ちから)が暴走するくらいならば、厄災そのものに戻ろうと御身体は判断する。

 そうなれば御身体が魔快黎(まより)様の元へ遣わした一部達もお役御免。意思など持たぬ厄災を振り撒く存在へと戻るだろう。

いわばそれは一部達にとって自我の消滅を意味する。だが一部達は万が一そうなったとしても別に構わないと言った態度で話しており、そこには恐怖も後悔もないように見える。



 もちろんそれは今すぐに起きることではないが、かと言って遠い未来の話でもない。



「恐らくあの子達は消えないだろうが、あの子達の親である君は、魔快黎(まより)はいなくなる。もしそうなったら…あの子達は…」

「よそう、それ以上考える必要はない」



 そして、例え魔快黎(まより)様が魔快黎(まより)様で無くなったとしても、生まれたあの子達の存在までは消えないだろう。しかしあの子達の親は消えてなくなる。あの子達を守り、育てる存在が。代わりにその子達の側には、親ではない⬛︎⬛︎⬛︎が現れることとなるだろう。そうなった時、⬛︎⬛︎⬛︎がその子達に対して何をするか、どのように接するのだろうか。



 少なくとも魔快黎(まより)様の代わりとして⬛︎⬛︎⬛︎がその子達の親になるようなことはないだろう。



 魔快黎(まより)様は直感的にそう悟り、これ以上自身らの消滅について話し合うのはやめようと言う。



「今は…俺が俺であり続けなくちゃいけない。あの子達ためにも…俺が世界に及ぼしちまってる影響を止めるためにも…」



 自身が魔快黎(まより)でいること、あの子達の親であること。


「ふぅ、心機一転って言うのかな。今まで心に喝が入って無かった、何だかんだこのままでもいい、この体が俺の心に応え続けてくれればいいって、思ってた。いや、甘えてたのか。だが、そうもいかないってんなら、やるしかない」

「…」

「焦ってない。ただ、今よりも成長する必要があるって思ってるだけだ。あの子達の親としても、な」


 成長すること、それが今の自分に最も必要なことだと魔快黎(まより)様は自分自身に言い聞かせるように言う。

次回の投稿もお楽しみに



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